襲撃の狼煙
俺たちは戦闘準備を万全に整え、ポップタウンの関所前に集結した。
ポップタウンの冒険者ギルドの上位ランカー、王国のエリート兵士、警察隊の幹部、そして柳一一行に俺たち――あらゆる戦力がこの場所に結集している。
まさに万全の布陣で、上妖たちの襲来を待ち構えた。
「絶対に、ポップタウンには誰一人敷居を股がせないのにゃ」
普段は弱気なミレの声が震えることなく、闘気に満ちて遠方を見据える。
その瞳には、風妖精の森林で見せたあどけなさの面影はなく、鋭く頼もしい光が宿っていた。
「ここで、その全員を撃滅する」
柳一の声が響き渡り、防衛隊の士気をさらに高める。
「この妖気、来たみたいだな!」
野助が身構え、柳一が号令を張り上げる。
「全員!攻撃準備!!」
その瞬間、赤い身体に一つ目が縦にねじれたような妖怪が姿を現した。
「ゲケケ、ぜーんぶ食ってやる」
《『上妖』 ワロドン》
「よっしゃ!やるぜ!」
野助の掛け声に応じ、槍を構えた壬生郎も一歩前へ。
「俺たちに任せろ!」
街の防衛隊員たちも、地面を踏みしめながら一斉に前へ出る。
同時に、岩場の方から偵察時に見かけた山童が顔を出す。
「山童は私が相手しよう」
玲が南蛮銃を構え、狙いを定める。
「私もやるのにゃ!」
ミレが短い踏み込みで、山童の至近距離へと突撃する。
「おそらく残り一体ずつだ、手分けして殲滅するぞ、宝」
『了解』
俺たちは別々の方向へ駆け出し、上妖の討伐に動く。
――――ワロドン戦――――
赤い巨躯の前で、野助が大きく足を踏み込み、斧を構える。
隣で壬生郎が槍を突き出し、鋭い目でワロドンを射抜く。
「やるぞ、野助殿」
「分かってるぜ!」
互いに目配せを交わし、同時に前へ飛び出す。
壬生郎の槍が空気を切り裂き、ワロドンの脇腹へと突き刺さる勢いで突撃する。
「俺たちの街を壊すつもりなら、ここで死んでもらうぞ、上妖!!」
「ゲケケ!はええやぁ!」
ワロドンが身体をのけぞらせ、一撃をかわす。
直後、野助が上空から巨大な鉞を振り下ろす。
「人間の底力、舐めんなよ!」
斧に吸い付く土塊が、徐々に巨大な大地の塊のように変化していく。
「ここで終わってもらうぜ!」
[『土妖術』 土塊の斧]
土の塊に押し固められた豪刃が振り下ろされ、ワロドンの巨体に叩きつけられる。
「ゲケケ、その程度じゃオイラを切れないよぉ!」
ワロドンの左腕が数メートルに巨大化し、斧をがっしりと握りしめる。
[『拡大妖術』 巨大な腕]
「何っ!」
「五行妖術じゃねぇ!」
そのまま、ワロドンは巨大化した腕で斧ごと野助を地面に叩きつける。
「がはぁ!!」
地面に叩きつけられた野助は激しく咳き込み、苦悶の表情を浮かべる。
踏み潰しにかかるワロドンの巨大な足――しかし野助は寸前で身を転がし、辛くも回避する。
戦場には轟音と土煙が渦巻き、瓦礫が空中で舞い、戦士たちの動きは止まることを知らない。
ワロドンが嘲笑するように叫ぶ。
「お前たち人間が使ってるのは、オイラたち妖怪の妖術の真似事だぁ!」
その巨体が振動とともに威圧感を放ち、周囲の空気をねじ曲げる。
目の前で抵抗する野助たちを嘲笑う声が、戦場を覆う張りつめた空気をふるわせた。




