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襲撃の狼煙


 俺たちは戦闘準備を万全に整え、ポップタウンの関所前に集結していた。


 冒険者ギルド上位ランカー。

 王国正規軍の精鋭部隊。

 警察隊の幹部と街の防衛兵。

 そして、柳一一行と俺たち。


 この街が持ち得るあらゆる戦力が、一本の防衛線として並び立つ光景は、もはや戦争そのものだった。


 槍が林立し、弓が引き絞られ、銃口が闇を睨む。

 誰一人、後ろを振り返らない。


 ――ここが、最後の線だ。


「絶対に、ポップタウンには誰一人敷居を股がせないのにゃ」


 ミレの声は、もはや震えていなかった。

 風妖精の森林で見せた幼さは消え、瞳には鋭い覚悟の光が宿っている。


「ここで、その全員を撃滅する」


 柳一の低い声が、防衛線全体に染み渡る。

 それは鼓舞ではなく、決定事項の宣告だった。


 ――その瞬間。


 空気が、変わった。


「……来るぞ」


 野助が吐き捨てるように言う。


 地鳴り。

 妖気が、波のように押し寄せる。


「全員! 攻撃準備!!」


 柳一の号令が響いた直後、

 闇の奥から――赤い巨影が姿を現した。


 縦に裂けた一つ目。

 膨れ上がった筋肉の塊。

 その全身から、禍々しい妖気が噴き出している。


「ゲケケ……ぜーんぶ食ってやる」


《『上妖』 ワロドン》


 視界に入っただけで分かる。

 ――格が違う。


「よっしゃ! やるぜ!」


 野助が吼え、壬生郎が槍を構える。


「俺たちに任せろ!」


 防衛隊も一斉に踏み出す。

 だが、その直後――


 岩場の陰から、もう一つの影が現れた。


 山童。


「山童は私が相手をする」

 玲が南蛮銃を構え、迷いなく照準を合わせる。


「私も行くにゃ!」

 ミレが短い踏み込みで、山童へと突撃する。


「残りは各個撃破だ、宝」

「了解」


 俺たちは散開し、それぞれの戦場へ走った。


――――

 

――ワロドン戦――


 ワロドンの巨躯を前に、野助が大きく足を踏み込み、斧を構える。

 隣で壬生郎が槍を低く構え、殺気を研ぎ澄ます。


「やるぞ、野助殿」

「あぁ……最初から全力だ!」


 二人は同時に踏み込み、距離を一気に詰めた。


 壬生郎の槍が風を裂き、脇腹を貫かんと突き出される。


「俺たちの街を壊すつもりなら――!」

「ゲケケ! はええなぁ!」


 ワロドンは、それを軽く身を捻るだけでかわした。


 直後、上空から野助の斧が叩き落とされる。


「人間の底力、舐めんなよ!」


 斧に絡みつく土が、急激に肥大化する。

 大地を引き剥がしたかのような、巨大な土塊の刃。


[『土妖術』土塊の斧(つちくれのおの)


 轟音。

 大地が割れ、土煙が天へと噴き上がる。


 ――だが。


「ゲケケ……その程度じゃ、オイラを切れないよぉ」


 ワロドンの左腕が、異様な音を立てて肥大化する。


[『拡大妖術』巨大な腕(ビッグアーム)


「何っ!?」

「五行妖術じゃねぇ……!」


 巨大化した腕が、斧ごと野助を握り潰す。


「がはぁっ!!」


 次の瞬間、野助の身体が地面へと叩きつけられた。

 衝撃で大地が砕け、周囲の兵士たちが吹き飛ぶ。


 踏み潰そうとする巨足。

 野助は転がるように逃れ、辛うじて命を繋ぐ。


 戦場が、一瞬で瓦解しかけた。


 ワロドンが、戦場全体を見下ろして嗤う。


「お前たち人間が使ってるのはなぁ……

 オイラたち妖怪の妖術の――出来損ないだぁ!」


 妖気が爆発的に膨れ上がる。

 空気が歪み、足がすくむ。


 ――これが、上妖。


 数では埋まらない。

 覚悟だけでは届かない。


 万全の布陣で挑んだはずの防衛線は、

 初動で、完全に押し返されつつあった。


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