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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第1章 シェリル
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お祭り

「シャーロット様、お祭りの日です。よろしくお願いします」


街長のマリアンネに声を掛けられた。

半年に1度のお祭りの日だ。


社から飛び出し話し掛ける。


「マリアンネ、何かお願いはある?」

「いいえ、報告ですから。いつもの様に自由にして頂いて構いません」


マリアンネは元冒険者の女性。

結構強くて魔獣討伐の指揮もしたりしてたんだ。


住民からの人気も高くて、街長に抜擢されたんだよ。


「いつもの屋台はあるかな?」

「勿論です。街の決まり事に組み込みました」


「ありがとう。お祭りの日は利益をあまり出さないようにして、子供が楽しめるようにしてあげてね」

「はい。出店するお店は事前申請を必要にしましたので問題ありません」


「分かったよ。じゃあ、私も適当に過ごすね。報告ありがとう」

「いいえ。いつもお世話になっておりますので」


マリアンネは一礼して街に戻っていった。

仕事をきっちりする人なんだ。

心配事は大概解決してくれているからね。


お祭りの日は、皆が楽しまないと駄目だよね。


私は中央区の噴水の上に転移魔法(テレポート)して、念話(テレパシー)で住民に呼びかける。

「今日はお祭りだよ。皆、楽しまないと駄目だよ。範囲高位回復魔法(エリアハイヒール)。元気になったかな?全力で楽しもうね!」


「シャーロット様、ありがとうございます」

「シャーロット様、大好きです!」

「私の肩こりが消えたわー」

「儂の腰痛も、この日だけは関係無いわい」


喜ぶ声が聞こえてきたから大丈夫だね。

治療院の人もお祭りを楽しまないと駄目だし、病人も怪我人もお祭りを楽しまないと駄目だからね。


私の回復魔法なら部位欠損も古傷も治るから、冒険者の間でお祭りが有名になっているみたい。

冒険者が言うには、部位欠損や古傷、病気が治るのは不思議なんだって。


いい事だから問題無いよね。


今まで沢山の怪我人や病人を治療して来たから、回復魔法が改良されているのかも。

詳しくは分かんないや。


お祭り目当てに街に来る人もいるけど、悪い事をしなければ気にしないよ。


街を気に入って住民になる人もいるからね。

街が有名になる事を悪い事だとは思っていないんだ。


街長や区長から止めて欲しいと言われた時には、街全体への回復魔法は中止だけどね。


さて、お祭り恒例のボア狩りに行こう。

ボアは猪に似た魔獣で、大きくて美味しいみたいなんだ。


ボアの位置は把握しているから、転移魔法(テレポート)で移動して、氷魔法(アイススピア)を心臓に突き刺すだけ。


川まで移動して、皮を剥ぎ、内臓を取り出す。

そして本当は焼くんだけど…。


何十匹と丸焦げにして、お母さんに怒られたのを思い出すよ。

その為、私は考えたんだ。


焼くのは食べる人にしてもらおうと。


川で綺麗に洗ったボアを手に、転移魔法(テレポート)で中央区にある孤児院に向かう。

身寄りのない子供が10人いるんだ。


子供の人数により、街からお金が出る様になっている。

あとは、孤児院を卒業した子供が大人になって寄付もしたりするんだよ。


勉強は無料で出来るから様々な職業に就く事ができる。

稼げる職業に就いた子が寄付する事が多いかな。


食べ物に困る様な事はないけど贅沢はしていないんだ。

街の子供も贅沢はしていないから一緒なんだけど、親がいないのは寂しいよね。


だから、お肉をお祭りの度に持ってきているの。

お祭りの日はお腹いっぱい食べて欲しいからね。


私は念話(テレパシー)で孤児院長に語りかける。

「カーリン、お肉持ってきたよ。準備をしてね」


孤児院長のカーリンも元冒険者の女性なんだ。


若くて綺麗な女性なんだけど男性に興味は無いんだって。

普通では治らない大怪我をして街に運び込まれてきたんだ。

怪我をした時に男性と何かあったのかもね。


駄目だね。

過去の詮索は良く無い。


私の希望で孤児院の外には、鉄板と木材を置けばお肉が焼けるように、焜炉を用意してもらっている。


慌ててカーリンと子供たちが外に飛び出してきた。

カーリンが鉄板を持ってきて、子供たちは木材を持ってきた。


「シャーロット様、ありがとうございます。お待たせしました」

「お姉ちゃん、持ってきたよ」


全然待っていないけど、毎回同じ言葉を言われている気がするよ。

この後、子供が怒られるんだよね。


「こら!シャーロット様でしょ」

「いいよ、お姉ちゃんでも。だけど、馬鹿にしたらお肉なしだからね」


やっぱり怒られてるよ。

男の子が慌ててる。


ほんと可愛いね。


「ごめんなさい、シャーロット様」

「馬鹿にしなければいいだけだよ」


私は何て呼ばれても別にいいんだよ。

でも、皆から崇められているから、私の事を馬鹿にしちゃうと、周りの大人に怒られちゃうから、本人にも良くないよね。


「カーリン、どれくらい食べれそうかな?」

「1割くらいでお腹いっぱいになると思います」


鉄板とは別の大きなお皿に一口サイズに爪で斬ったお肉を乗せて行く。

そして、鉄板の下に子供たちが置いた木材に火魔法(ファイア)で火を点ける。


「さあ、皆。お腹いっぱい食べてね」

「さあ、いただきましょう!」

「はーい。いただきます!」


皆が鉄板にお肉を乗せて焼いた後、美味しそうに食べている。

私はその姿を見るだけで満足だよ。


残りのお肉は燻製にしちゃおう。

皆が食べている横で燻製の準備を始める。


カーリンが慌てて立ち上がる。

「私がやりますので、シャーロット様は自由にしていて下さい」

「暇だから自由にしているよ。私が燻製にするのも自由でしょ?カーリンは子供たちとお肉食べてて」


「分かりました。ありがとうございます」

「気にしなくていいよー」


このやり取りも毎回の様な気がする。

ちゃんと考えて、食べる分と、保存する分を持って来ればいいだけだね。


ちょっと反省します。


皆がお腹いっぱいになる頃には昼過ぎになっているから、子供たちと一緒に昼寝する。

夕方になると一緒に起きて屋台に出かけるんだ。

「皆、カーリンの言う事をちゃんと聞ける?」


子供たちがそれぞれ言う事を聞けると言葉にする。

毎回だからね。


子供たちも私が何をするのか分かっているから、元気いっぱいだよ。


「皆、並んで。屋台でお買い物できるように、お小遣いをあげる」

「シャーロット様、いつもありがとうございます」


いつもカーリンがお礼を言うんだよね。

子供にお金をあげているのに、自分の子供みたいに可愛がっているからかな?


「私はお金を使う事がほとんどないけど、街から貰っているから気にしないで」

「はい。ありがとうございます」


私は子供たちに1000ギルを手渡していく。

屋台の出し物は50ギルから200ギルまでと値段が決まっている。

夜になると大人用にお酒などが出るから値段帯が変わるけどね。


「好きに使っていいからお祭りを楽しんでね。ただし、カーリンの言う事は絶対だよ」

「「はい!」」


子供たちが元気よく返事をするのもいつも通り。


「カーリンにもお小遣い。偶には服を買ったり装飾品を買ったり、おしゃれしなきゃ駄目だよ。まだまだ若いんだから」

「はい。大切に使わさせて頂きます」


カーリンには街から月に5万ギルの給料が出ている。

子供は1人、月に5000ギル。(カーリンが管理している)

決して高額じゃないんだ。


それに、カーリンは自分の給料を子供たちに使っているんだよ。

服を買ってあげたり、玩具を買ってあげたりしているんだ。


本当に優しいよね。

お母さんみたい。


私もカーリン好きだよ。


私は街から月に10万ギル。

あと、社に賽銭箱があって年に大体100万ギル入ってるんだ。

5人家族が一月暮らしていくのに10万ギルあれば十分だから、貰い過ぎだよね。


どれだけ言っても、これ以上減る事は無かったよ。


カーリンにお祭りの度に30万ギル手渡しているんだ。

大人が一月働いた給料の平均になるようにね。

渡し過ぎても周りから嫌な目で見られるからさ。


「さあ、カーリン。屋台に行こう!」

「はい。皆、行くわよー」

「「はーい!」」


私たちはぞろぞろと屋台に向かって歩いて行く。

色々とあるけど、私が欲しいのは1つだけ。


「おじさん、リンゴ飴1つ下さい」

「シャーロット様のお陰で大人気ですよ。どうぞ」


私はおじさんに200ギルを手渡してリンゴ飴を受け取る。

お祭りの時にお母さんに買ってもらっていたんだ。


食事は必要ないけど、お祭りの時はリンゴ飴だけ欲しがったらしい。

だから、今も忘れずにリンゴ飴を買うんだ。


リンゴ飴も変わらない味で美味しいよね。


そして、噴水の縁に座り街の監視をしながら飴を舐める。

お祭りの日に事件は起きて欲しくないからね。


多くの子供が私の真似をして、噴水の縁に座ってリンゴ飴を舐める。

一周子供で埋まると、席の奪い合いみたいになるのが面白いよ。

お祭り恒例の景色みたいになってるね。


そろそろ暗くなってきたね。


私は念話(テレパシー)で住民に呼びかける。

「子供は家に帰る時間だよ。大人は引き続き楽しんでもいいけど、激しい喧嘩は駄目だからね」


私は街全体に魔法陣を展開する。

光魔法(ライトレイン)で街を光の雨で包む。


光り輝いて綺麗なだけの魔法。

昔やってみたら評判が良かったから続けているんだ。


子供はこれを見終わったら帰るのが、暗黙の了解になってるよ。

大人は逆にここからが本番かな。


お酒が入ると喧嘩になる事が多いんだ。

お酒の喧嘩は基本的に事件にならない限りは放置する事にした。


お祭りの度に喧嘩している人たちがいるからね。

逆に仲がいいのではないかと思っているんだけど、違うのかな?


「カーリンはまだ楽しんでて。私は子供たちと孤児院に帰るから」

「ありがとうございます。久しぶりにお酒を飲みます!」


カーリンは美人だから男性に囲まれるんだよね。

冒険者だった女性の友達も多いから、特に問題は起きないけどね。


「皆、帰るよー」

「「はーい!」」


孤児院でカーリンが戻って来るまで、子供たちと一緒に遊んでから寝かしつける。

皆、お祭りではしゃいで疲れているから、少し遊んだらすぐに寝ちゃうんだ。


「シャーロット様ー。ただいま戻りましたー!」


酔っぱらったカーリンはいつも敬礼するんだけど、大人はお酒飲むとこうなるのかな?

可愛いし、面白いから別にいいけどね。


「お帰りー。さあ、子供も寝ているからカーリンもおやすみ」


カーリンをベッドまで促して横にすると、すぐに寝てしまった。

これも毎回だね。


私も社に転移魔法(テレポート)で移動して寝転がる。


寝ていても街の監視はしているから大丈夫。

流石に500年以上も続けていたら自然とできるよ。


今回のお祭りも皆が楽しんでくれたみたいだよ、お母さん。

リンゴ飴美味しいですよね。

カーリンは怪我をした時に子供を産むのを諦めました。

まだ立ち直っていませんが、その内に良い出会いがあるかもしれませんね。

でも孤児院の子供たちを可愛がっていますから、一緒に孤児院で働くのが最低条件ですね。

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