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土地神様は吸血鬼  作者: 大介
第1章 シェリル

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閑話 カーリン 天使に出会った日

私は冒険者でした。

4人パーティの後衛です。


男性2人、女性2人のパーティです。

パーティーの男性から将来結婚しようと言われていました。


冒険者は命懸けです。

一攫千金を狙う博打なのです。


結婚できる人は珍しいです。

無傷で引退した人は見た事がありません。


男性とは、結婚した後に生活に困らない資金を溜めてから引退しようと話していました。

冒険者の皆が夢見るような話です。


そして、よくある事故が起きました。

ダンジョンに行く途中の雨でぬかるんだ山道を歩いていたら、落石に遭いました。

パーティーで被害に遭ったのが私だけだったのは、運が良かったのでしょう。


男性2人は落石で潰れた私を見て逃げていきました。

パーティーの自然解散です。


よくある話かもしれません。


でも、私には信じられませんでした。

溜めたお金を使えば神官に頼んで治してもらえると思っていたのです。


神官に払う金額を仲間のクリスタが教えてくれました。

まさか神官に払うお金が最低でも1000万ギルとか…。

もう笑えませんが、笑ってしまいたいです。


「諦めないで、カーリン!ここからならすぐにシェリル街に着く。そこまで耐えて!」

「クいスあがいうなら、そのまいまでがんばうよ」


落石の後、逃げずに助け出してくれたクリスタの言葉を信じて耐えました。

クリスタに背負われてどれくらいの時間が経ったのでしょうか?

意識が朦朧としているので時間の感覚がありません。


「生きてるよね?」

「うん」


「お願いします!シャーロット様を呼んで下さい」


クリスタは何をお願いしているのでしょうか?


男性の兵士が私を見てすぐに声を上げました。

「急患だ!シャーロット様を急いで呼んでくれ!」

「かしこまりました!」


若い男性の声が聞こえたと思ったら…。

突然目の前に、深紅な髪と瞳に絹のような肌の女の子が現れました。


冒険者は吸血鬼だと思うはずです。


ですが、私は天使だと思いました。

天使が迎えに来たと思ったのです。


高位回復魔法(ハイヒール)。間に合った、危なかったー。兵士の皆もお疲れ様」

「シャーロット様、ありがとうございます!」

「とんでもございません」


クリスタがお礼を言っています。

兵士の男性は恐縮しているみたいです。


女の子はシャーロット様と呼ばれていました。


痛みは消えましたが、体の状態が分かりません。

現実感がなくてぼんやりとしていました…。


突然クリスタに頭を叩かれました。

「こらー、お礼くらい言いなさいよ!全て元通り、綺麗に治して下さったのよ!」

「えっ、嘘でしょ?1000万ギルも払えません…」


酷い絶望感に包まれました…。

奴隷として娼館で働かされると思ったりもしました。


不幸な未来予想で頭の中がいっぱいです。


「私は無料だよ。ここに来れば治療は無料だから安心してね」

「では、何をお返しすればよいのでしょうか…?」


涙ながらに話していると、クリスタにまた頭を叩かれました。

「何を絶望しているのよ。シャーロット様の話を聞いていたの?無料って言ってるでしょ!」

「治療は無料でも何かあるのでしょ?」


私の言葉を聞いていたシャーロット様が笑いました。

とても可愛い笑顔です。


「面白い子だね。じゃあ、街で働いてもらおうかな。孤児院で働いてくれる?」

「孤児院でいいのですか?一生懸命に頑張ります!」


何故かクリスタが驚いています。

この街の孤児院は酷い環境なのでしょうか?


「嘘でしょ?カーリンが街の住人になるの?私は申請して待ってるんだよ!」


全然違いました。

街に住む私に文句があったみたいです。


私たちの話を聞いていたシャーロット様がまた笑いました。

本当に可愛いです。


天使です。


「面白い2人だね。君もこの街で働く?」

「はい、働きます!私はクリスタです。よろしくお願いします!」


「2人とも街長に任せちゃおう。転移魔法(テレポート)


突然居場所が室内に変わりました。

隣にクリスタがいるので安心ですが、目の前にいる女性はマリアンネさんでしょうか?


「マリアンネ、面白い2人を見つけたから仕事をあげて。カーリンは孤児院で決定、クリスタは未定だよ」

「かしこまりました」


やはりマリアンネさんです。

新人冒険者のときに様々なことを教えてもらいました。


ですが、いつの間にか冒険者組合で見なくなりました。

心配していたのですが、この街にいたのですね。


この街で何をしているのでしょうか?


「じゃあ、またねー。転移魔法(テレポート)

シャーロット様はそう言って去っていきました。


「懐かしい2人だね。何があった?」

「カーリンが岩で潰れたので助けてもらいました」


「運が良かったね。この街の近くでなかったら死んでいたんだろ?」

「はい。本当に運が良かったです。パーティの男たちが逃げたのは最悪ですけどね」


マリアンネさんは声を出して笑いました。

「あははは。それも含めて運が良かったのさ。見極められたじゃないか」

「それもそうですね。絶体絶命のときに逃げられるよりはいいです」


「そういう事だ。カーリンは孤児院でいいんだね?」

「はい。シャーロット様と約束しましたから」


「あまり給料はよくないけど本当にいいのか?」

「はい。生活できれば大丈夫です」


「クリスタはどうする?」

「私は討伐隊に入ろうと思います」


「分かった。クリスタは当面宿舎で生活だね。カーリンは今日から孤児院に行くか?」

「はい。すぐに行きます」


マリアンネさんは街の仕事の管理をしているのでしょうか?


私は夢見心地な気分でした。

余りにも現実感が無さ過ぎたのです。


呆けているように見えたでしょう。


「カーリンを孤児院に連れていって仕事を教えてあげて」

「かしこまりました」


マリアンネさんが若い女性に指示を出しています。

部下までいるのですね。


クリスタが笑顔で手を振っています。

私も笑顔で手を振って別れました。


若い女性はディアナさんといって、街長の秘書をしているようです。

街長のマリアンネさんはとても偉いのですね。


ディアナさんは孤児院にある設備の使い方と仕事の内容を教えてくれました。

仕事の内容は分かりましたが、設備は意味が分かりません。


孤児院の仕事は確かに給料に見合ってはいませんでした。

10人の子供の面倒を見るのはとても忙しいのです。

襁褓の子がいないのは助かりました。


でも、子供たちは可愛いし辞めるつもりはありません。

すぐに私に懐いてくれましたから良かったです。


子供たちは昼過ぎまで勉強に行っているので、偶に昼寝ができます。

この街の子供は皆、勉強しているのです。

とても凄いです。


それに、生活は全く困りませんでした。

給料以上の生活環境だからです。


夢のような生活環境です。

だから給料が安いのかもしれません。


トイレ掃除は便器の汚れを水で綺麗に流して終わりです。

下水道という汚物を流す為の管が街の地下を通っているそうです。


毎日お風呂にも入れます。


お風呂釜に栓をして水が出る器具を下げるだけで水が溜まります。

上げれば水が止まります。


上水道という飲める水を流す為の管が地下を通っているそうです。


栓を外せばお風呂釜から水が抜けます。

捨てる水は下水道に流れるそうです。


しかも、お風呂には希少な火の魔石が何個も置いてあります。

水を温めるときは魔石を置くだけです。


料理をするときも魔石を置くだけです。


外でお肉を焼くときだけは薪を使います。

天使様が「鉄板焼きに魔石は似合わない」と言った為です。


食材を腐らせないように氷の魔石まであります。

木箱の中は常に冷えています。


暑い日は氷の魔石で部屋を涼しくできます。

寒い日は火の魔石で部屋を暖かくできます。


孤児院は夜でも明るいです。

光の魔石が天井付近に2個置いてあるからです。


眠るときは魔石を布で隠すだけです。

部屋の隅に紐が2本あり明るさを調整出来ます。


魔石はダンジョンの奥深くでしか見つからないと言われている、貴重な物です。

冒険者組合の組合長の部屋でしか見た事がありませんでした。


シャーロット様に話を聞きました。

「何故こんなにも魔石があるのですか?」と。


()()()()()に魔石の原石を見つけてきて加工したそうです。

そして、加工した魔石に魔法を入れたそうです。


孤児院は間違いなく重要な施設ですね…。


怪我も一瞬で綺麗に治してくださいました。

同じことができる神官はいないでしょう…。


私は考えるのを止めました。

この街には天使様がいるからです!


孤児院は子供たちも可愛いし、大好きな天使様も遊びに来るので辞めません!

カーリンは男性不信もありますが、シャーロットに夢中です。

その為、男性が気にならないのです。

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