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侍少女と魔獣(2)

タッタッタッ


揺れる

「うっ…」


(なんだ、どうした?)


タッタッタッ


「あ?え!?」

気がつく雅良

身体が激しく揺れている



「気がついたか!」


タッタッタッ


前の方から女の子の声が聞こえた

(どういう事だ?)

ケレスとはまた違う、幼いようでしっかりとした声

そして今の状況…

おぶさっている

どうやら俺は女の子に担がれているようだった

それもすごいスピードで走りながら


少女は和服のような服装

そして腰には帯刀


「か、かたな!?侍?」


タッタッタッ


「説明している暇はない、大人しくしててくれ」

「え!?」


《ウヴォアアアアアアアア!!!!》


何かのおぞましい鳴き声に雅良は後ろを向く


《ウギュヴォアアアアアアアア!!》


そこには、見たことも無い大きな獣がいた

「おいおい、まじかよ!なんだよあれ!」


「いいから!今は大人しくしててくれ!」

どうやら獣に、少女と雅良は追いかけられているようだ


(なんだなんだ?どういう事だ?)


獣は、豹のような体に猪のような毛

毛は黒く、所々銀色に輝いている

目は赤く口には上下から2本ずつ大きな牙がはえている


化け物だ


雅良は思った


(あぁ、やっぱり元の世界じゃないんだ)

ほんの少しの希望は無くなった

目の前の現実



手が震えた

殺されるかもしれない

いや、確実に殺しにきているだろう

食べられるのだろうか

やはりどこの世界も弱肉強食なんだ

ただの人間がこんな世界にやってきても

餌が増えただけだ

ケレスとかいう自称女神も

自分のペットに餌を与える為に俺をこの世界に連れてきたに違いない

俺は魚を沢山釣ってきた

神も俺と同じように人間を釣ったんだ

俺は神に釣られた人間なんだろう

所詮は食料

生きるために生き物を喰らう

これが自然の掟



なら、仕方ないか…



なんて事は言わねえ!

これも自然なら、精一杯抗うのが

捕食者に対する礼儀だ!!

大人しく喰われるなんて御免だね


とは思ったものの…どうするか…


タッタッタッ


(しかしすげー少女だ、俺よりも歳は下だろうに俺より力があるし足も速い)


(異世界だから、特殊な力か何かあるのか?ただ少女に担がれているという現状は恥ずかしいが…)


「ちっ!くるぞ!」

急に侍少女は叫ぶ


《ウヴォアアアアアアアア!!!》


「え?何何?」

背中に熱を感じる


熱い!!


そう思った瞬間少女は左に避ける


ドンッ!!


激しい衝撃と炎があがる


「嘘だろ…」

どうやら獣から火球が飛んできたみたいだ


振り返る

獣は口を開けてこちらを睨んでいた

脚を緩めることなく

口に黒い光が集まり

光は火の玉に変わっていく


「おいおいおい、またくるぞ!」


「わかってる!!」


火の玉は大きくなり、獣は咆哮をあげる


《ウヴォアアアアアアアア!!!!》


火球が放たれる


「きた!!」

合図をおくる俺


少女は右に避ける


ドンッ!!


ギリギリだ

ほんの少しでも遅れたら当たる

あんなの当たったら間違いなく死ぬ


「ち!しつこい魔獣だ!」


(魔獣?)


「お主あの魔獣に何したんだ」


「何もしてねえよ!魔獣?俺はただ腹痛で気を失ってただけみたいだ」


「なんだそれ、餌の為の狩りにしちゃ魔力も存分に使ってくる。お前に何かあるのは確かだ」


「魔力?」


「なんだお主、何も知らない箱入りぼっちゃんか?」


「そういうわけじゃな……似たようなもんか」


「なんだそれ…」


タッタッタッ


《ウグルヴォアアアアアアアア!!!》


「くるぞ!」


「ち!」


左に避ける


ドンッ!!


「うぁッ!!」

爆発の衝撃で木の破片が少女の右足に刺さる


「おい!大丈夫か!?」

木片は6cmは刺さっている

だが走る速度は緩めない


「くぅ…、大丈夫だ、まだ…、走れる」


「大丈夫じゃない!結構深く刺さってる!!」


「うるさい!精一杯やってるだろ!!」


「うっ…」


(どうしよう、このままじゃ2人とも…)


(うっ!!!)

またあの腹痛がやってきた



ズキッ!!!

気が飛びそうなくらい痛い



ズキッ!!!

我慢…出来ない

「う、うぐああああっくぅ、うああああっ」


「おい!どうした?大丈夫か!?」



ドクンッ!!!ドクンッ!!!ドクンッ!!!

(だめだ腹が…、このまま2人ともやられるくらいなら…)


「悪い!!」ドンッ!!

少女から脱出する雅良


「な!?お主何をしてる!!」

立ち止まり振り返る侍少女


「俺はいい!たぶんもう俺の命も長くなさそうなんだ!逃げてくれ!!」


「何を言っている!これくらいの傷で拙者は遅れなどとらん!」


「そうかもしれねえ!だからあんた1人なら絶対逃げられるさ!」


「馬鹿者が!!ええい、これ以上私の前で魔獣の犠牲者は出させん」

刀を鞘から抜く少女


「おいおいおい、戦うのかよ」

無謀だ

あんな巨大な化け物相手に勝てるわけない



少女は刀を構える

獣を睨みながら叫ぶ

火蝶(かちょう)焔種(ほだね)】!!」


すると刀に炎が宿った

赤い炎が侍少女の身体から湧き上がる


「魔法!?」

いきなりの出来事に驚く


「まほう?なんだそれは、これは霊術。そんなことも知らないのか」

獣を睨みつけながら侍少女は雅良を横目で睨む


「それでアイツをやれるのか?」



「わからん」

侍少女は真剣な眼差しで獣を睨む

汗が垂れる

刀を握る拳が強くなる



《ウヴォアアアアアアアア!!!》


「くるぞ!」

火球が飛んでくる


火蝶(かちょう)炎舞(えんぶ)】!!」

侍少女は叫びながら刀を振り下ろす

振り下ろした刀から炎の斬撃が打ち出された


斬撃が獣目掛けて飛んでいく


火球と炎の斬撃は空中でぶつかる


ドゴォン!!!


耳を裂くような、激しい轟音が鳴り響く

「すごい…」

爆発地点から煙が上がる

そして、煙の向こうから、獣が姿を現した


《グルルルルルル》


獣は雅良を睨みつける

駄目だ、火球を相殺しているだけじゃ負ける

「こいつの狙いは俺だ!今の内に逃げろ!」


「うるさい!お主の命令など聞かん!!」

再び刀を構える少女、そして叫ぶ

「お主こそ、さっさと逃げろ!お主がいたら邪魔で戦えん!!」


(酷い言われようだが、本当にその通りなんだろうな…だが)

「残念だが、さっき降りた時に足を挫いた」


「お主…、仕方ない。ならお主も精一杯戦え」

少女は獣を睨みつける


「ああ、当たり前だ!!生き物として食われる前に抗うのが礼儀だ!」


雅良も獣を睨みつける


《グルルルルルルルルルルル!!!》



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