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記憶の追憶

「おはよー」


雅良は母親に挨拶して椅子に座る

いつもと変わらない朝

食卓には、あおさの味噌汁とアジの干物とご飯

鯵の干物から芳ばしい香りが漂う


「父さんはもう出た?」


「10分くらい前に出ちゃったわ」


雅良の父は漁師で朝早くから漁に出掛けていた


「そっか…」


「早起きしたってまだ船には乗せられわよ」


「うん…」


雅良は高校卒業後、都会の大学に行ったが馴染めずに帰って来たばっかりだった


「でももう帰ってから2ヶ月くらい立つし、何時までもニートじゃなぁ…」


雅良は親になるべく迷惑をかけないようにしたかった

その為に父になんども仕事を手伝わせてくれとお願いしたが断られてばかりだった


「駄目よ。お父さんだって、私だって心配なんだから。せめてあと一ヶ月は自宅療養してなさいってお医者さん言ってたじゃない」


「そうだけど…」

(アルバイトしようにも田舎すぎてなんもないしな…)


2年間大学に行ったが、その内の1年は大学にも行かず部屋に籠っていただけだった

学校から親へ連絡が入り、連れ戻されたのだ

病院にも通い、鬱と診断され暫く通院生活が続いた

今では自宅療養で問題無く過ごせている


「じいちゃんは?」


普段なら朝ごはんの最中に今日は何処へ行くんだとか色々聞いてくるのだが、今日は姿が見えない


「なんか大物の猪が罠に掛かったとかで、猟友会に呼ばれて出て行っちゃったわ」


「へぇ、じゃあ今日は久々に肉食えそうじゃん」


じいちゃんは、近隣の村々でも有名な猟師の1人だった

現在は猟友会のトップで基本は若い連中に任せているからとかで、たまにしか仕事はしない


「そうね、毎日魚も飽きるもんね。貰って来て欲しいわ」


「まぁ昨日俺が釣ってきた大物の鯖も悪くないけどな!」


「時期にしてはってだけだし、昨日はあんたが捌いたからぐちゃぐちゃで酷かったわよ…」


「…申し訳ねえ」


昨日はココ最近で1番数が釣れた日だった

いつもは母親に魚の処理を任せているが、昨日は楽しくなり遅くまで釣りをしていたので晩飯の準備で忙しい時に帰ってしまった

なので久しぶりに自分で捌いたのだが…

夏の小さな魚、そして100匹を超える量

少々雑になってしまったようだった


「しかもあんた、サバを生で食べてたけどちゃんと処理して持って帰ってきたんでしょうね?」


「大丈夫大丈夫」


「心配だわ…」


サバは痛むのが早い

本来は釣れた時に下処理を済ませるのがいいのだが

釣れている時にそんな事をしている余裕など無かった

そして帰ってきてから処理をしている最中に、我慢出来ずに何切れかそのまま食べていたのだ

釣りたてを刺身で食べる

これこそが釣り人の特権だ



「まぁまぁ。それより今日も行ってくるよ」


「また?魚はお父さんが持って帰ってくるからいいのに」


「下処理とか海の具合とか色々学べるから、やっときたいんだよね」


「そんなこと言ってただ釣りしたいだけじゃない」


確かに父は漁師なので毎日魚を持って帰ってくる

それも雅良が釣るようなアジやサバなどではなく

鯛やヒラメ、ハマチなどそこそこ値段がつく魚だ


だが雅良も父の跡を継ぎ漁師を目指していた

その為に少しでも海の状況や魚の状況などを理解したかった

…と言う建前で大好きな釣りをしているのだが、バレバレであった



「うっ…、これも療養なの!」


「まぁあんたがいいならいけど、気をつけなさいよ」


「わかってるって!」


ご飯を平らげると雅良は立ち上がる


「んじゃいってきまーす!」


「行ってらっしゃーい」



そうして俺は、近くの釣具屋で餌を買ったあといつもの堤防へと向かった。




そんないつもの朝


いつもの日常…


いつもの日常のはずだったのに、どうしてこんなことになったんだよ…




って、あれ?どこだここ

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