第1話 文化祭まであと一か月①
季節は九月。
夏休みが終わり、学校にもようやく日常が戻ってきた。
だが、県立登計高校は、いつも以上の熱気に包まれていた。
来月――十月三十日、三十一日に開催される文化祭があるからだ。
1ヶ月後に控えたその文化祭で行うクラスの出し物を決めるホームルームが各クラスで行われていた。
「それじゃあ、多数決の結果を発表しまーす!」
2年D組。クラス委員が教卓の前に立ち、教室を見渡す。
「文化祭のクラスの出し物は――アイドルカフェに決定しました!」
「よっしゃー!」
「マジ!? 最高じゃん!」
「絶対映える!」
教室の前方では、クラスの中心グループが一斉に歓声を上げる。
スマホで流行りのアイドルグループを研究している女子たちと、ノリのいい男子たち。
すでに「誰がセンターやる?」などと盛り上がり始めていた。
一方、教室の後ろの窓際。
歓声とはまるで別世界のような静かな空間があった。
先生が黒板に「六人一組・六グループ」と書き、好きな人同士で班分けを進めていく。
結果、同じ班になったのは六人。
クラスではスクールカースト底辺と陰で言われているメンバーだった。
女子は三人。
ドルヲタで推しぬい作りが趣味で、服の縫製や小物作りが得意な伊藤一花。
あだ名は「イッチ」。
お菓子作りが趣味で、家でもよくケーキやクッキーを焼いている小林愛理。
あだ名は「コバ」。
そして、アニメやゲームのコスプレが趣味で、自分で衣装まで作ってしまう渡辺穂乃香。
あだ名は「ワッちゃん」。
男子は三人。
百八十五センチ近い長身で、少し猫背の大竹護。
あだ名は「タケちゃん」。
寝ぐせなのかセットなのか分からないボサボサ頭がトレードマークの石井陽輔。
みんなからはそのまま「イシイ」と呼ばれている。
そして、小柄な体格ながら動きだけはやたら素早い大森太陽。
あだ名は「モリ」。
六人は互いに顔くらいは知っている。
だが、放課後に遊ぶほど仲がいいわけではない。
共通していることがあるとすれば、教室の中心で騒ぐタイプではないということくらいだった。
「じゃあ、班ごとに担当を決めてくださーい!」
先生の一声で教室中の机が動き始める。
人気者グループは、もう笑い声を上げながら作戦会議を始めていた。
そんな中、窓際の六人だけは、しばらく誰も口を開かなかった。
「……えっと。」
最初に沈黙を破ったのはコバだった。
「私たち、何を担当する?」
その一言をきっかけに、六人はようやく顔を見合わせる。
この時はまだ誰も知らなかった。
文化祭まで残り一か月。
この"ハズレ班"と陰で呼ばれた六人が、二年D組の運命を大きく変えることになるとは。




