表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

続きです。

お久しぶりです。

DEATH。



「パパ!!」


私の手をぎゅっと握りしめている可愛い娘。

今日も元気な声で、私を呼んでいる。

その声が日々私に活力を与えてくれる。

まるで、天使の囁き。


「なんだい?イーラ」


「肩車!!」


「またかぁ…?もう5回目だぞ?」


「やってやって!!」


「どうしようかなぁ〜」


「ぶー…」


「…冗談だよ!ほれ!乗りなさい!」


「わぁーーい!」


街の住人が微笑ましい顔をしているのが分かる。

辛い仕事をしているが、そんなものの残滓は綺麗さっぱり浄化された。

私は天に愛されている。今の私自身がそれを証明している。

これからも私は娘と妻を愛し、天を愛すのだ。

まさに、至高。

今日は最高の休日を享受しよう。



「ぁ…ぁ……」


うめき声が聞こえた。


「パパ…あの子…」


「……!!!」


路端には子供がいた。おそらく男の子だろう。髪は伸び切ってバサバサ。ボロボロの服。右足首にタトゥー。痩せこけている。なんということだ…


「パパ…かわいそうだよ…」


「…そうだねイーラ、あの子はパパが寺にでも預けてくるよ。たしか近くに孤児の面倒を見ているところがあった。」


「そう…」


イーラは悲しんでいた。だが休日がふいになったからではない。娘は他人のために悲しむことができるのだ。善悪の区別がこの歳でできている。その辺の大人より立派だ。


「じゃあ、いつものポワポワに乗って先に帰ってなさい。」


「うん…」


いつもはポワポワと聞くととびきりの笑顔を見せてくれたが…それだけショッキングだったのだろう。


「あの子はきっとすぐ良くなるさ。

さあ!今日は予定変更してママとクッキングだ!パパの舌を満足させられたら前に欲しがってたおもちゃを買ってあげよう!」


「…!うん!!わかった!!」


「じゃあ楽しみにしてるよ〜!」


「パパのことニコニコさんにしてやるんだから!」


「はははっ、それならぁー…

頑張ってこぉーい!」


ポワポワに乗せてイーラは帰した。

………


「……………………………」


__________________________________________________




老若男女の大群が襲いかかる。

男連中は遠くから野球ボール大の石を絶え間なく投げつけ、女子供は鍬や包丁を持ってこちらに突進してくる。

これだけの大人数に1人が蹂躙されることなど元の世界ではなかった。

あってたまるかという感じだが。

とにかく、今俺にできることは、


「逃げる!!」


俺の好きな漫画でもこういうときは逃げが鉄則。

というか、ぱっと見で数がわからないような集団に追われていて逃げる以外どうするというのだ。


「逃げたぞ」

「待て」

「卑怯者」

「憎い」

「殺す」


俺は今、最初穴を出た方向に逃げている。そちら以外の方向は敵でいっぱいだったからだ。

よく見渡すと、この辺りは一面が田んぼしかない。地平線だ。

こんな場所であれを撒けるだけの体力はない。

どうする?

どうにかして奴らを倒さねばならない。

なにかないかなにかないか…なにか…


【異世界から来た人間には特殊な異能が備わるらしい。利用して人間側の戦力を増大しようとしているのだ。実際、戦いの際少し厄介な目に遭うこともあったそうだ。腹立たしいことにな……】


「あ!!!!!!!」


アマンがたしかこんな事言っていたぞ。

俺も向こうから来た人間だ。

もしかして何かしらの能力が使えるかもしれない。

……でも何ができるか皆目見当つかない。

とりあえずヤケクソでやってみよう。

俺は振り返ってこう叫んだ。


「ファイヤーボール!!」


ゴッ


「いでぇ!」


俺は再び走った。石が当たって頭から血が…前が見づらい。馬鹿が。

何がファイヤーボールだ。馬鹿。


「待て」

「待て」

「待て」

「待て」

「待て」

「待て」


後ろからの音圧が凄まじい。足音が地震のようだ。俺の1メートルほど後ろには石が常に落ちて

くる。かなり恐ろしい。


「待て」

「待て」

「待て」

「待て」

「待て」

「待て」

「待て」

「待て」


後ろをチラッと振り向く。

最前列からは百メートルほど離れている。

今もどんどん距離は開ひらいている。

どうやらあまり足は速くないようだ。

が、それもどれだけ持つか。

一キロは走ったと思うが相変わらず田んぼしかない。こうなると持久戦か?

ここでヤケになって全力疾走してもバテて追いつかれるだけ。なら奴らと同じスピードで走って体力勝負する方がまだいい気がする。


ヒュー…ガン!


「痛ぇ!」


速度を落としたら石が当たる。かなりのダメージだ。これを食らいながら走るのは実質全力疾走とエネルギー消費は変わらない。どうしたらいい?

逃げるのは不可能。

あの大群じゃあ、戦っても勝ち目がない。

話し合いが通じる相手でもない。

詰みじゃないか!

と、とりあえず石の当たらない速度で走ろう。

いや待て…こっちも石を投げればいいのでは?

名案かもしれない。

もちろん止まったら石が飛んでくるが、集中すれば避けられる筈だ。 

やってみよう。

現在奴らとの距離二百五十メートルと踏んだ。

およそ奴らとの距離五十メートル地点までダッシュし、奴らが投げてきた石を広い返し前列に投げる。

よし!


俺は大群に向かって走った。

予想通り面と向かえば石は当たらない。

向こうも近づいてくるから思ったより早く五十メートルになりそうだ。


まだだ。

まだ…

まだ…


「殺す」

「殺す」

「殺」「殺」「殺」「殺」「殺」「殺」「殺」

「殺」「殺」「殺」「殺」「殺」「殺」「殺」

「すぅ!!」


およそ百メートル。


なんだ?様子が


グサッ


「…え」


俺の足に包丁が、

あいつら手持ちの刃物を


グサッ


俺の腹に鍬が


グサッ


俺の腕にフォークが


グサッ、グサッ、グサッ、グサッ


俺の身体、に


「痛、あ」






__________________________________________________



「………」


路端に避けたソレを私は見つめる。

これは虫だ。見た目は魔族の子供そのものだが。


虫が見ている。その目には何が映っている?

私だ。しょぼくれた中年の顔が映っている。


「……」


虫族の子供は、虫族じゃない方の種族の形質を全て受け継ぐ。だから魔族の見た目の虫族は魔族の子供と同じように成長をする。

普通に育てれば、この虫も普通の元気な子供のように過ごす。

この虫は自分が虫であることにすら気がついていないだろう。だから壊れている。口も聞けないようだ。

それでいい。


「来なさい」


虫を抱きかかえた。

暴れない。


「………」


「今から君を楽にしてあげるからね」


「………」


虫を我が子のように丁重に抱きかかえる。

気遣っているのではない。不審がられないためだ。

私は人気のないところへ向かう。休日の今の時間帯で人がいないところというと私はとびきりベストな場所を知っている。

地元で有名な廃屋だ。ボロすぎて誰も買い手がいなくなった幽霊屋敷。元々人間の住んでいたものらしい。

私は自分の家にでも入るかのように自然になかに入った。

家の構造は把握していた。昔何度もここに来たから。

私は虫を風呂場に連れて行った。

久々だから上手くできるだろうか。


「……」


虫は動かない。既に死んでいるみたいだが生きている。ほっといても問題ない気もするが、奴隷商に拾われたらまずい。処分は確実に行う。


「……」


弱点は魔族と同じ。

即死させることは可能だ。

せめてもの慈悲として。


「すまない」


ゴシャ


頭を破壊した。痛みは感じなかった筈だ。

しかし…気分が悪い。


ピチャ……ピチャ………


手から血が滴る。

殺した、という実感が音を立てるたび強くなる。

だが罪悪感に苛まれている場合ではない。

早急に対処の必要がある。



__________________________________________________


「刺した」

「殺せ」

「死ね」

「ズタズタ」

「ボロぞうきん」

「オラ」


身体中にあらゆる刃物が刺さる感触を味わった。

この世のものとは思えない痛みが身体中を常に駆け巡り、もはや死ぬ前に何を言ってから死のうか考えていた。

腹におもちゃの剣が刺さったときコツンと音を立てた。

骨に当たったのではなかった。

保険。あのガラス球。


「ゔぁ…」


パリン


身体の中でガラス球が割れた。

内臓で破片が踊る。

壮絶な痛みを伴ったが同時に多幸感に満ち溢れた。

まるで神にでもなったかのような。

指先1つで全てが意のままになるかのような。

漠然とした全能感。

俺は命令した。


「息止めろ」


突如、やかましい声がやんだ。

相変わらず身体刺されに刺されていたがだんだん力が弱まっていった。そして周りは動きを止め、倒れた。


「………」


…………………


静寂が訪れた。


「ぁァ…ぁァ…ぁァ…」


喉がやられているから喋れない。

足がやられているから立てない。

目もやられているから見えない。

でも、立たなくてはならない。

1人しかいないのだから。俺1人しか。

生きるんだ。俺は。生きて、幸せになるんだ。


…眠

こいついっつも寝てる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ