第9話 対決スタート!
「だらああああっ!! どけどけどけぇ!!」
ダゴ助は腕を振り回しながら、行く手を塞ぐモンスターたちをなぎ倒す。
現れるモンスターは蜥蜴人や空飛ぶ魚など、水系のモンスターが多い。中には水の中から攻撃してくるものもいるが、魚人であるダゴ助からしたら水の中はむしろ『庭』。
爆速で泳ぎ次々とモンスターを倒していく。
「よっしゃあ! 大物ゲットォ! ちょろいもんだぜ!」
巨大なマグロ型モンスター、アトランティス本マグロを倒し、その身をゲットしたダゴ助はそれを天高く掲げる。
アトランティス本マグロはそれほど強くないが、魚雷のごとき速度で泳ぐため、討伐するのは困難だ。その身は赤身とトロのいいとこどりをしたような味がして、一度食べるとやみつきになってしまう。
"ダゴ助やるやん"
"大漁だな"
"マグロうまそう"
"まあまだ中層だし"
"こりゃ三上くん厳しいか"
"まだあんまり倒してないからね"
一方ダゴ助と戦っている三上は、戦いを避けているようだった。
立ち塞がったモンスターのみを倒し、無用な戦いは回避しているように見える。それに気づいたダゴ助は、彼の側を並走しながら話しかける。
「どうしたメガネ野郎、俺様の強さに怖気ついたか?」
「ふん、考えなしに戦う君と一緒にしないでほしいな。この勝負が一番の大物を比べるものである以上、ここでいくら雑魚を狩っても勝負に影響はない。つまり君の行動はただの示威行為……そんなことも分からないんじゃ、僕には到底勝てない」
三上が眼鏡をくいっと持ち上げながらそう言うと、ダゴ助は「うっせえわけ分かんないこと言いやがって!」とキレる。
"草"
"一理ある"
"三上くん相変わらず嫌味うまいね"
"データキャラに戻っちゃってるじゃん"
"せっかくこの前データ捨てたのに"
"水と油って感じだなw"
"一周回って仲良く見えてきたw"
"強ければ勝てるってわけでもないから、意外とどっち勝つか分からないな"
"移動速度だけ見たら三上が上っぽいからな"
魔法を駆使して地上を滑るように移動する三上と、ドタドタ走ることしかできないダゴ助。地上での機動力は三上の方が優勢であった。
しかしこと水中であればダゴ助の方が圧倒的に速く、そして強い。
どちらも有利なフィールドがあり、勝負の行方は視聴者も読めなかった。
"いくらダゴ助の体が鈍ってるからって、三上くんよりは強いと思うけど……この勝負方法だと読めないな"
"ダゴ助結構間抜けなところあるしな"
"三上くんもうっかりキャラではあるけどね"
"とはいえ三上くんはダンジョンたくさん潜ってるし、ダゴ助より経験値はあるよな"
"分からん。どっちが勝つんだ"
視聴者たちが悩んでいる中、余裕を見せているはずの三上もまた、悩んでいた。
(ビーチ型ダンジョンではやはり魚人であるダゴ助の方が有利……普通に戦っていては勝率は低いですね)
彼は自身が不利なことを理解していた。
しかしそれを口にしてしまえばダゴ助が調子に乗ってしまう。三上は平静を装い、ゲームを進める。
「さて、そろそろ僕は下層に向かうとしましょう。馬鹿の相手はできませんからね」
「んだとゴラア! 誰が馬鹿だ!」
海で狩りをしていたダゴ助を置き去りに、三上はどんどんダンジョンの下を目指す。
ダンジョンは奥に行けば行くほど強力なモンスターが出現する。そして当然ながらモンスターは強ければ強いほど良い物をドロップする。
ダゴ助に勝つためにはダンジョンの奥に行く必要がある。
三上はダンジョンを爆走し下に下に進んでいく。
「この勝負、絶対に僕が勝ってみせる……!」
"三上くん頑張るやん"
"もうここは下層か?"
"Aランクのモンスターもいるしそうじゃない?"
"三上くん、下層くらいなら行けるんやな"
"なんだかんだ本当にエリートだな"
"かませ感が拭えないけどねw"
"まあシャチケンと比べたらかませなのは違いないwww"
三上はなるべくモンスターと出会わないように行動し、最低限の労力でダンジョンを駆け抜ける。
田中であればモンスターの中を突っ切って移動できる。しかし三上にそれほどの実力はない。彼はなるべく気配を消し、モンスターの視界から外れながら移動する。
それでも時たまモンスターに見つかるが、相手が強ければ煙幕で逃げ、勝てる相手であれば全力で仕留める。
そうやって彼は効率的にダンジョンの奥にやって来た。
「はあ、はあ……着いた」
周囲の魔素濃度が、ぐんと上昇する。
肌がピリピリし、全身の毛が逆立つ。心臓の鼓動が速くなり、自然と呼吸が速くなる。
ダンジョンの最深部、『深層』。
強力なモンスターが跋扈するその魔境に、三上は足を踏み入れる。




