ぐるぐる
「おいアン、数日の後に辺境に出没する魔族の討伐に向かうので一緒に来てくれ」
「はい」
「憑依された者達が多くいるそうだ、気をつけて、対策はおばあさまから聞いておいてくれ」
王子は要件を言い終えるとすぐに部屋から出ようとしたが・・・
「あ、いやいや、まあお年頃なんだろうがこれは」
王子はアンの机のすみに置いてあった本「仮面の告白」を見て言った。
「これが何か?」
「何かって、そういうことに興味を持つ歳なんだろうが。ベッドの下とかに隠しておくとかあるだろ」
「へ、これがですか?」
アンが驚いていると王子は本をとってベッドの下に押し込んだ。
「鍵のかかる衣装ケースを誰かに持たせるからその底に入れておきなさい」
アンは指摘されていることに何か恥ずかしさを覚えたが、それ自体にはそれほど恥ずかしい本とは思わなかった。
納得行かないアンはレイのもとに愚痴りに行った。
「って、ことがあったんだよ」
「あー、あの本ね、直前なんだよなあれは、寸止め、ある意味寸止めか、むしろそれを文学的に、と言うか、うん・・・文学作品だよあれは」
レイの部屋には普通に置いてあるので『この違いは何だろう』と思っていたが、レイが言うには。
「腐女子はけしからん、って感じだよ、うん。
特にアンは聖職者に近いから」
アンは自分が聖職者だと思っていなかった。どちらかと言うと回復術士だと考えていた。
レイの本棚を見ると前見たときよりも本が増えていた。
「あれ、国境の長い・・・買ったんだ」
「あぁ、これね。
私は気になると何も手に付かなくなるんだよなぁ、だから買って読んだ。
イヤイヤイヤ、そんな大したこと無いって、ご想像の範囲内」
「へー『想像の範囲って個人によって変わるよな・・・』」
「もってく?今度遠征に行くんでしょ」
「いや、いらん」
「必要になるかもよ」
借りることにした。
診療所の地下室ではサイラとりゅうがヒソヒソと話していた。
「7本の聖剣が蓮の形にまとまったけど、何かたりないような気がする。
筒の両端が開いているから・・・どっちに向かって撃つのかな」
「両方?いや、何かたりないのか。
ボクのは折り紙とかも混ぜたかな」
「それだ!
なぜ黙っていた?
それだよ」
「今言ったじゃないか」
「それはあの川で拾ったのか、なら取りに行くぞ」
サイラはりゅうの腕を引っ張って地下室を出た。すると、ふにゃの後ろに人型をした見知らぬドラゴンがいた。
「サイラにりゅうどこ行ってたの?
この子、私たちの兄弟・・・らしいのよ」
ライザが言うとその見知らぬドラゴンはサイラとりゅうに向かって挨拶をした。
「お初にお目にかかります、我が名は、ぐるぐる、最強のドラゴンであるドラの子です」
『結構生き延びてるんだな』とりゅうは思いながらぐるぐるに自己紹介をした。
「我が名は、りゅう、兄弟の中で一番はじめにうまれた長女にして最強」
サイラはりゅうの挨拶を『しょうがないな』と言いたげな苦笑いをしながら、胸をはって自己紹介した。
「我が名は、サイラ、我こそは兄弟の中で一番最初に生まれた長男にして最強」
ライザは先に自己紹介した二人を苦笑いしながら見て
「私は、ライザ、長女でもなんでもいい、強さもそこそこ」
全員が自己紹介をすますとサイラは目を細めながら言った。
「私に新しい妹が出来たか」
ぐるぐるは兄弟の上下関係には興味が無かったので話を流してアシャ達に言った。
「ところでお母様ですか?
完全にドラゴンとしての気配を消しておられるが」
アシャとレイラは顔の前で手を振って『違うよ』と、否定した。
総長である、ふにゃの前で直立不動で立っているミュー達のなかから声がした。
「ドラはんは今出てます、すぐ帰ってきますわ」
タマが言うとほどなくしてドラは帰ってきた。
「あなたは二番目に生まれた・・・名前は何とつけたのです?」
「ぐるぐると名乗っております。お初にお目にかかりますお母様」
サイラは目を細めてドラに言った。
「じゃあボク達は何番目なの?
ボクは1番目だよね?」
「ことばの弾みです、生まれた順番は分かりませんよ」
そうかわしてドラはぐるぐるに向かいあって抱き上げた。
「よく生きていましたね」
「お母様、皆の前で恥ずかしいです」
ドラはお構いなしにしばらく抱き締めていると、アシャは「ここで暮らせばいい」と言った。ぐるぐるは
「ではお言葉に甘えて、ですが待っている村の民がいるのでしばらくしたら帰ります」
そう言うと、皆が「おまえ眷族がいるのか?」と言った。
特にサイラは「どうやって眷族を作ったんだ、教えろ」とぐるぐるに迫った。
ぐるぐるは「山で山賊や魔物から守ってやると、結果的にだけど、自然に集まってきた」
それを聞くとサイラは
「おい、山賊のいる山に行くぞ」
りゅうは
「川に行くんじゃないのか?」
「川は、お前が行って紙をとってこい」
「なに無茶なこと言ってるんだ」
ドラが落ち着くように言うとサイラは諦めて、ぐるぐるの本を地下室に入れて歓迎の食事をした。




