某王
なんとなく診療してみたくなったアンは本を置いて聞いてみた。
「私達が診ましょうか、もしよければですが」
「あぁ、頼もうかな」
アンはジーッとおじいちゃんを見て言った。
「盲腸がない、そして・・・」
「盲腸は虫垂炎で切った」
レイが「切る?」と聞き返したが、二人は聞きながした。
レイは歯に金属がはめ込んでいるのを見つけたが、格闘戦で相手を噛むためのものかと思って置いておいた。
アンの目は左足を見てとまった。レイも気付いて指差した。
「金属が入ってる、以前骨折して鍛冶屋で治したんですか?」
「分かるのかね、これは優秀だ」
「いえいえ、これは誰でも気づきますよ」
レイは「刃物で肉を切って骨を削ってネジで止めるとは原始的な村にいたんだな」と思ったが、アンは気にもとめないで少し考えてから・・・
「切って再生させると綺麗にもとにもどる、と思います」
「そうかそうか、じゃあ切るか」
レイ肉を切って骨を削るのかと思って見ているとおじいさんは大刀を抜いて自分の脚を切り落とした。
「ひゃあ!」
レイが叫び声をあげるとアンは脚を再生した。そして再生後の脚の状態を見ると、困った顔になって、元気の無い声で言った。
「綺麗には戻りませんでした、もともと弱いので補強してたのですか?」
「そうだよ、我が友が器用なんでやってもらった、だがこれで数年はボルト無しで歩き回れる。
お嬢さんすごいね、ここまで出来るヒーラーは数人しか知らない。
知り合いに頼んだときは、死にはしない、と一言いって帰っていった」
ぶつくさとそのヒーラーの悪口を言っていると。
「♪カランコロン、カランコロン」
急にあたりが明るくなって天から金色の光の粒が舞い降りて鐘の音が響いた・・・ような気がした。
二人はベルの鳴る上を見上げたが何もなかった。
おじいさんは上を向かずに「ホーリーベルか、これは久しぶりだ」と言った。
脇で見ていた店主は音に気づいてないようで、脚を拾い上げて紙で包んでおじいさんに手渡した。
「もって帰りますよね?」
店主は自分が何をしているのか分かって無いようだが、置いて帰っても困るだろうし、どうやらもって帰るより方法は無いようだ。おじいさんは脚を自分の荷物の中に入れた。
「私の目的は果たせた、ありがとう。
さて二人にはお礼に本をあげよう、サイン入りだよ」
二人は急いで本を選ぶと手渡した。
「どんな本を選んだのかな『国境の長いトンネルをぬけるとそこはサキュバスの国だった』これはダメだな、君にはまだ早い。
こっちがいい」
と言って「猫が三毛の一族」をわたした。
同じ本を持っていたアンはその本を置いて、奥の方から引っ張り出し「仮面の告白」を渡してサインをもらった。
帰り道にサインを見ていたアンが、
「あれ、夏目先生じゃなかったっけ?
サインが横溝になってる」
「私の三島だわ」
ちょっと前
「乗って行くのにゃ」
ぐるぐるは王様からもらったぐるぐる巻きに梱包した重い本と軽いはずの、ふにゃを乗せて飛び立った。
それを見送った王様とたかしはぐるぐるの頼りない飛びかたを見てながら・・・
「運動不足だな。
ずっと洞窟でゴロゴロしていたから体がなまっているんだろう」
二人はヨロヨロとドラのいる診療所に向けて飛んでいた。
「角には触るなよ。
隷属とかごめんだ。
勇者と共に戦う気は全くないから」
「すきを見て触ってやれ、と、こん棒様はおっしゃっているが触らないにゃ。
それに触るとホーリーベルが鳴るにゃ、もしマッチングが良ければなんだけど、にゃ」
「そうかそれならいいが、それと吐くなよ」
「それは安心していいにゃ。
今朝は何も食べてないから酸っぱい液しか出ないにゃ」
ぐるぐるは「吐きそうになったら振り落としてやる」と考えていた。
なかなかスピードが出ないし、ぐるぐるは疲れてきたので休むことにした。
川のある草原に降り立つと、ぐるぐるは荷物とふにゃを下ろすと大の字になって横になった。
「どあー、疲れた。
こんなに重いのははじめてだ、欲張って本をもらいすぎた、いやもらえる物はなんでももらわないとだな・・・」
「ゆっくり休むといいにゃ。
こん棒様と川に魚をとりに行って来るにゃ」
もともと短パンに裸足のふにゃは、膝まで川にはいると身動きを止めて魚が集まって来るのを待った、そして。
「ふにゃ!ふにゃ!ふにゃ!」
ふにゃの頭ほどある川の魚を捕まえては陸に放り投げ、食べ、そして放り投げた。
「焼いて食べるにゃ」
ぐるぐるが寝ている場所まで魚を運んで火をつけて焼いて食べた。
お腹がすいていたぐるぐるは起き上がると・・・
「うむ、いただくぞ」
ふにゃはぜんぶ食べてしまっていた。
「・・・ぐるぐるは太りぎみで飛びづらそうだから食べない方がいいだろ、と、こん棒様がおっしゃっているにゃ。
いゃ、まあ、またとって来るにゃ」
ふにゃは魚を沢山とってくると焼いてぐるぐるに振る舞った。
「運動した後の焼き魚は美味」
正座をして食べたぐるぐるは、立ち上がると力を取り戻して診療所にむけて飛んだ。
「今度は力に満ちている、さっきまでとは違う、軽く感じる。魚を食べたのが良かったんだ」
ふにゃはすまなさそうな顔で
「こん棒様の重量は変化できるにゃ、さっきは軽くするのを忘れていた、すまん、とのことにゃ」




