第一話
「っうわ―――! すげーっ!!」
目をらんらんと輝かせているのは約一名。先ほどまではしゃいでいた片割れ……紫は、バス酔いのためダウン。
「……やばい」
うう、と唸る紫に背中をさする岬。
「機械類、本当苦手だよな」
無表情のまま頭をなでる翠によろよろと歩く紫。
「紫、今にも倒れそうじゃん」
立ち止まった紫の目線に合わせる旅院に彼女は無反応。
「……本当にやばそうだな」
何時の間にかやってきたカイトが苦笑する。
「うう……今なら空にのぼれる気がする。I can fly……」
「「「!!?」」」
壊れた、と顔を真っ青にさせる周りに気付かず、彼女はふらふらと力ない足取りで歩き出していた。
(……やばくない?)
(((痛い子……!)))
――――――――――――
ぼふっと紫はふかふかの布団に体を預けた。パタパタと足を上げたり下げたりして、横を向く。先ほどの青白かった顔は大分マシになってきているあたり、それくらいの余裕が出てきたのだろう。
紫を除く班員……岬と翠は、現在散策に行っている。二人は残るといったのだが、紫が有無を言わせぬ圧力をかけ、しぶしぶと外へ出て行った。
流石に生徒を一人にするわけにも行かず、カイトは近くの部屋にいる。何かあったら来いよ、といわれてはーいと気の抜ける返事を返した紫は、体を仰向けにして天井を見た。
―――木製の天井は“あちら”の家に似ている。
そう思う自分に、紫は酷く嫌悪した。寂しいのか、と自分で自分に尋ね、彼女は溜息をついた。
“彼”は死んでしまった。けれど、片割れ……いや、“同志”は今何をしているのだろうか。彼はこんなところで“平和”を感じている自分に、何を感じるのか。
「……はぁ」
紫はもう一度溜息をつき、起き上がった。揺れるのは白い包帯とラベンダー色の髪。忌々しい、と彼女は呟いて包帯をちぎるようにしてとった。大き目のバッグの中から黒い眼帯をとり、パチン、と音を立てて止める。
―――懐かしい。
その、黒い眼帯の感覚。何かに縛られている感覚。その何かは遠く昔の忌まわしい過去なのか、それともあの“キズ”なのか。
「……っああああああ゛!! だから僕にシリアスは似合わないって!!!」
いきなり立ち上がり叫んだ紫。さっさと包帯をしまい、バッグからサングラスを出した。
「僕はギャグに生きるから! ……ってツッコミがいない!」
バタン、とトビラに音を立てて、紫はカイトの元へ走っていった。
“笑って”
―――そんな、彼の声がまだ耳に残っているんだ。
(……愚かな僕)
「ツッコミせんせー!」
「……だれ、それ」
何で空は泣けるのに、大地は泣けないの?
どうして?
そんなの、不平等じゃない……。
けど、大地のかわりに大空が泣いてくれるから……
僕の変わりに、彼が泣いてくれて“いた”から……。
(だから僕は今、こうして生きていられるのでしょう)
(ツッコミ先生、僕をかまって! 一人だとただの痛い子だよ!!)
(大丈夫、お前は初めから痛い子だから)
(……紫的☆あっぱー!)
(ぐぅう!!!?)
(ちょ、強い!! 強すぎる!!!)
(限度、限度を知ってェェェエエエェ!!)
こんにちは、九条です。基、九条隼です。混乱を招いてしまって申し訳ありません。九条だけですと、わかりにくいと思いまして……。
さて、今回のこのお話ですが、ゆかりんの新たな一面が覗かれます。……あ、もう覗いてますね。なんか憎悪満タンですよね。
いや、でもゆかりん、良い子なんですよー!
さてこの後、王道のお話も出てきますが、王道から段々と確信へ近づいて―――……。そんな第五章です。




