伝説の勇者の真実
翌日から、輪ゴムでクレーターを作ったコウは勇者教習所でちょっとした有名人になっていた。
「ほら…… あの人よ…… 輪ゴムでクレーター作った勇者科の……」
「マジかよ!? 輪ゴムってそんな凶悪な武器だったか!?」
「神具で…… 輪ゴム…… 神は何て物を与えたんだ?」
等々、噂は絶えなかった。
(くっ…… 神具が輪ゴムってだけでも、恥ずかしいのに…… あんな威力があるなんて…… 余計に恥ずかしいぞ……)
コウは顔を真っ赤にして、噂話をしている連中の間を歩く。
「コウ君! 昨日のスゴかったね!! コウ君はまだ教習所通い始めたばかりであの威力!! 卒業したらどれだけの威力になるんだろうね?」
アクアだけは、変わらずコウに接する。
「いや…… 威力があっても…… 武器が輪ゴムじゃ……」
「そんな事ないよ!! あれだけの威力なら、どんな敵も倒せるよ!」
そこに、教官が入ってくる。
「はい! 静かにしろ!! コウとか言ったな? 昨日の1件で所長がお前に話があるらしいから、大至急所長の所へ行け!」
「はい……」
コウは所長室に行く。
コン! コン!
ドアをノックすると、
「開いてますよ!」
「失礼します! 教官から所長がお呼びだって聞いたのですが……」
そこには、背の小さい人の良さそうなおじいちゃんが椅子に座っていた。
「君が…… コウ君かね?」
「……はい……」
「昨日の話は聞いているよ! 何でも神具が輪ゴムだと言うじゃないか?」
「……はい…… 輪ゴムです……」
「君は、伝説の勇者の話は知っているかね?」
「もちろんです!! 100年前に魔王を倒した伝説の勇者様の話ですよね!!」
「ウム…… 何とその伝説の勇者が神から頂いた加護が他ならぬ輪ゴムだったのじゃ!」
「…… はい?」
コウは鳩が豆鉄砲を食らったかの顔をする。
「ま、まさか〰️ 伝説の勇者様は剣だったじゃないですか?」
「それなんじゃが、伝説の勇者の武器が輪ゴムじゃカッコ悪いって事で剣に修正されたのじゃ!」
「…… マジですか?」
「マジじゃ! 君は神からの加護を貰う時何を考えて祈ったか覚えているか?」
「えぇ…… 伝説の勇者様みたいな勇者になりたいって……」
「じゃろうな! 神は君の願いを叶えて下さっていたのだ!!」
(う、嘘だろ!? オレが伝説の勇者様と同じ神具を授かっていたなんて……)
「そこでじゃ、君には本来3ヶ月先の仮免の試験を飛び級で受けてもらおうかと思っている!」
「仮免の試験をですか?」
「勿論、忖度するつもりはない! どうじゃ? 受けてみるかね?」
「も、勿論です! やります! やらせてください!!」
「ウム! よい返事だ! 筆記試験と実地試験だから3日後に行うとしよう! その間は家で勉強しなさい!」
「はい!! ありがといございます!!」
コウは、そのまま家路に向かう。
(マジかよ!! 伝説の勇者様も輪ゴムを使っていたなんて……)
コウの心は軽やかになっていた。