海水浴
<7月19日(土)13時 海>
「海です! 大きいです! 青いです!」
「見ればわかるよ」
「普段あまり見る機会がないものには興奮しちゃうんですよ。これまでの人生でも海に来たことなんて数えるほどしかありませんし、前は夕方の海でしたし」
「高校時代に友達と来たことない……の? あっ、いやごめん」
「愚問中の愚問ですね。はぁ、でもやっぱりそれなりにお客さん多いです」
「これだけ天気良ければ、そりゃあまぁいるでしょ。まだ少ないほうだと思うよ」
「若い衆もたくさんいますね。学生の夏を満喫しているようでなにより」
「発言が年寄りくさいぞ」
「ああ、連中の青春に影を落としてやりたい」
「自分の学生時代と比較して嫉妬するな、見苦しい」
「思えば友達と一緒に海で遊んだことなんて一度もありませんでした……。もう戻ってこないんですね、私の青春は」
「おかしいな、海に来たはずなのにいつの間にか地雷原にいる。なんでわざわざ暗いほうへ暗いほうへ考えるんだ」
「こういう気持ちになるから海水浴客で賑わう海って嫌いです」
「気分の問題じゃんか。今を楽しもうとしなきゃ来た意味ないだろ。水着見せてくれるんじゃないの?」
「そうでしたそうでした。じゃあちょっとそっち向いててください」
「え、まさかここで着替える気?」
「下に着てきたので問題ありません。はいっ、どうぞ」
「…………」
「あの、何か反応していただかないと間が持たないんですが」
「ああ、うん。感想とか考えてなかったから、いざ見てみるとなんだろう。こんなもんか、って」
「頭から砂浜に埋めてあげましょうか。そこはお世辞でも何か言うのがマナーだと思うんですが」
「えっと、可愛いよ」
「ボキャブラリ不足ですか。普段言わないことを言えば女の子が喜ぶだなんて舐めた発想やめてください」
「手厳しいな。確かに自分でもあんまりな感想だとは思ったけども」
「ちゃんと女の子が褒めてほしいと思っている部分があるんです。そこを見極められるかどうかが男子に求められている能力なのです」
「褒めてほしい部分……。いい乳してるね?」
「死んでください」
「痛い。なぜだ、強調してるからにはそこじゃないのか」
「いつもと違うところに注目してほしいんです! あるいはいつもと違う反応がほしいんです!」
「いつもと違う反応って、例えば?」
「股間を押さえて前屈みになったりとか」
「お前も大概だよ」




