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257/2024

忘却

「すごく面白いネタを思い付いた気がするんです」


<ふーん、どんなの? っていうか、そんな大見得きって面白くなかったらどうするんだ>


「いえ、思い付いたはずなんですけど、忘れちゃいました。とっても面白くなりそうだったことだけは覚えてます」


<意味ないなぁ。っていうか忘れるなよ。慢性的ネタ不足なんだから>


「何かとっかかりがあれば思い出せるかもしれません。私もせっかくのネタをみすみす逃したくないので、適当にヒントになりそうなことを言ってみてくれませんか?」


<わかった。まず可能性が高いものとして……下ネタ?>


「いえ、違います。馬鹿にしないでください。年がら年中エッチなことばっかり考えてるわけじゃありません」


<どの口が言うんだ。あと君のはエッチじゃなくてただの下品>


「どっちにしろそういう方向じゃなかった気がします」


<じゃあ、行事ネタ?>


「行事……? ううーん、なんか少しキテる気がします。でもあんまり大した行事でもなかったような……」


<行事に近いのか。なんだろ。6月の行事と言えば……父の日?>


「それじゃないですね。父の日は特に意識してもいなかったので」


<日頃からお父さんにはお世話になってるんだから、何かしてやれよ>


「ん? 何かしてやる……その言葉、引っ掛かりますね。そう、何かしなきゃいけなかった気がします」


<面白いネタじゃなかったのか>


「いえ、ネタだったはずです。ネタ自体は面白くないんですけど、そのネタを生かして面白い話ができる、みたいな」


<でももう思い出してもやらないほうが良さそうだな。あまりにも面白い面白い言い過ぎてハードルの高さが半端ないことになってる>


「それを飛び越えられるくらい面白いネタでした」


<マジか。そういうの忘れるなよ>


「なんとしても思い出さねば。他に何かヒントありませんか?」


<他にねぇ……。いくつかあるネタのパターンから挙げてくとすれば、下ネタ以外にメタネタ、料理ネタ、言葉ネタ、君の会社ネタ、僕を貶すネタ、記念日ネタ――>


「んっ? なんか今きましたよ? あなたを貶すってところで」


<よりによってそこかよ! 他人貶めて面白がってんじゃねぇよ!>


「記念日っていうのも……あっ! 思い出しました!」


<もう言わなくていいよ。ろくでもないこと請け合いだから>


「あなたの誕生日、昨日ですよね!? それです!」


<おい、面白いネタって>


「ハッピーバースデーツーユー! 梅雨だけに! ブププーっ!」


<……いろいろ文句言いたいんだけどいいかな?>





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