虫の日
「今日は6月4日。虫の日でもあり、7月4日まで続く虫無し月間の初日でもあります」
<うわぁ、なんかすごい倒錯というか、ジレンマを感じる>
「まぁ、虫の日における『虫』はカブトムシやクワガタムシなどのことであって、ゴキブリとかハエは虫としてすら扱われないってことなんでしょうけど」
<彼らにとっては理不尽極まりない話だろうね>
「ちょっとかわいそうですよね。無視されちゃうなんて」
<寒い>
「ゴキブリだって、もう少し繁殖力が弱くて数が少なかったら気持ち悪がられることもないんじゃないですか? 形状はカブトムシと大差ないですから、稀少な生き物として大切にされたり」
<あいつら繁殖力以外にも高速移動とか飛行能力とか嫌われギミック満載だからな。絶滅が危惧されるようなレベルならさすがに嫌われはしないだろうけど、そんなことなさそうだし>
「では動きが遅くて飛行能力がなければ」
<それはたぶん保護される前に絶滅する>
「ダンゴムシみたいに目立たなければ絶滅しませんよ。人間関係においても同じですね。人畜無害かつ、空気のような人間であれば、理由なく嫌われたりしません」
<さらっと世の中の闇に言及しないで>
「そしてダンゴムシが空気のような人間であれば、ゴキブリはコソコソしつつちゃっかり美味しいとこだけ持ってって、自分と似たような人間とうわべだけのコミュニティを築いてるような人」
<さっきから人間に例えるのやめろ。あとそれ君のことじゃね?>
「……それにしても、あれだけの能力を持っていてなおゴキブリが地球上に溢れかえってないのは不思議ですね」
<おい、無視するな>
「一体何が彼らの繁栄を妨げてるんでしょう? やはり人間による駆除?」
<他の昆虫と同じで幼体がすぐ他の生き物に食べられちゃうんじゃない? だから多産なんだよ。人間の影響もなくはないだろうけど>
「害があるからって殺すのは人間のエゴですよ。みんなみんな生きているのに。友達なのに。……まぁあの歌もあの歌でちょっと思うところがありますけどね。ミミズだのオケラだのアメンボだのって、無害な生き物ばっかりじゃないですか。ゴキブリとかスズメバチとかボツリヌス菌とかも生きてるのに」
<そいつらとはさすがに友達になりたくない>
「危ないからって、それじゃ都合良すぎますよ。偽善です。私は彼らとだって友達になってみせます」
<死ぬぞ>
「信念を貫き通せないなら死んだほうがマシです」
<カッコいいこと言ってるけど……じゃあ蚊は?>
「蚊は絶滅するべきです」
<おい信念>




