有象無象の救世主
ひねくれているようでなんやかんや優しい河童だったが、ときには冷たいこともあった。特に落伍者に対して譲れないものがあるらしく、そんなときの河童は少し怖かった。
「河童さん! 助けてください!」
「なんだどうした。そんな慌てて」
「この小鳥がそこの道路に落ちてて……今にも死にそうなんです」
「ああ? そんなもん拾ってどうすんだよ。食いたいのか?」
「食べませんよ! こんなに弱ってるのに、見て見ぬふりなんてできないでしょう」
「そのままにしとけ。生き物ってのは死ぬときゃ死ぬんだ。人間が下手に手ぇ出すもんじゃない」
「……冷たいですね」
「自然の摂理に冷てぇも温けぇもねーよ」
「河童さんの心が冷たいって言ったんですよ。鬼です」
「河童なのに鬼とはこれいかに」
「こんなときに茶化さないでください。少しは可哀想だと思わないんですか」
「可哀想だな。でも生き残れなかったもんは仕方ねぇ。そこまでの命だったってことだ」
「仕方なくないです。まだ助けられます」
「自力で生き残れねぇなら意味ないだろ。野生に戻りゃまたすぐ死ぬ」
「きっと運が悪かったんです。今回たまたま地面に落ちてしまっただけで、助けてあげたらまた元の世界に戻れるはずです」
「元の世界に戻ることが幸せたぁ限らねぇだろ? 死んだ方がマシかもしれん」
「弱肉強食なんて、私はそんな世界認めません」
「弱肉強食じゃねぇ。さっき嬢ちゃんが言ったように、この世は運だ。どんな世界でも生き残れるか否かは確率なんだよ」
「だとしたらもっと理不尽じゃないですか」
「理不尽さ。しょせん努力や才能なんてのは、そういう理不尽だらけの世界のなかで死ぬ確率を下げる保険に過ぎん。一度死にかけてる以上、そいつは他のやつより死にやすいってことだ」
「そんなご託はどうでもいいです。私はこの子の立場で考えてるんですから」
「そういう恩着せがましい感情移入はやめたほうが身のためだぜ。つーかなんだよこいつの立場って。鳥なんてせいぜい『ピピピッピッピー』くらいしか考えてないだろ」
「河童さん、このあいだ私のこと助けてくれたじゃないですか。なのにどうしてこの子は助けてくれないんです?」
「嬢ちゃんは飯をくれるからな。鳥は飯をくれん。焼き鳥は作れてもコストのほうが高い」
「……ホントに現金ですね」
「合理性が全てだ。まぁ嬢ちゃんが助けたいなら勝手にしろ」
「しますよ! 勝手にさせていただきますとも! 私は河童さんも小鳥もリーダーもキャプテンも、みんな勝手に助けるんです!」
「嬢ちゃんと一緒にいたら、みんなダメなやつになりそうだな」




