小便小娘
山道の途中、一本松が生えている見晴らしのいい場所までやってきて、ようやく河童は足を止めた。
「ここまでくりゃあ、まぁ大丈夫だろ。あああああ、ガキとはいえ人一人抱えて山道登るのは腰にくるなぁ」
「そ、そろそろ下ろしてもらって大丈夫です。立てますから」
「まぁ別に嬢ちゃんだったらこのまま抱いててやっても構わんが」
「下ろしてください。もういろいろと恥ずかしいので」
「ひゃっひゃ。確かに顔真っ赤だな。さっきの河童さんはヒーローみたいでカッコ良かったか?」
「ヒーローだったらもっと……颯爽と現れて悪党をバッサバッサとなぎ倒してほしかったです」
「助けてもらっといてそれかよ。おれ一人であんな大人数さばけるかっての。いかな河童神拳の力をもってしても、ておい、泣いてんのか?」
「……怖かったんですよぉ。あんな風に声かけられたの、初めてで……」
「迂闊だったなぁ。つーかなんであんなとこでそんなヘイボーイカモンベイベな格好してたんだよ、お前は」
「……リーダーに浴衣を貸してて……」
「あー、だいたい察したわ。アホか。もし河童さんがタバコの匂いに引かれてシケモク拾いにやって来なかったら、今頃フランクフルト食べ放題だぞ」
「はい……?」
「まぁ嬢ちゃんが優しいのはわかるが、人助けってのは後先考えてからするもんだ。たとえ友達だろうが、家族だろうが」
「そんな打算的な人助け、私は嫌です」
「お前がそれならいいが、今回みたいになっても文句言えねぇからな。嬢ちゃんみたいな優しさ発揮して、知り合いの借金の保証人になって身を滅ぼしたやつもいる」
「…………」
「あと、いつまでそのカッコでいる気だよ。さすがに河童さん目のやり場に困るわ」
「す、好きでこうしてるわけじゃありません。早くリーダーと合流しないと」
「嬢ちゃんはケータイ電話なんて……当然持ってねぇよな」
「子供が持てるものじゃないですよ。他の二人も持ってませんし」
「その手に持ってる服は着れんのか?」
「これはリーダーのなので、サイズが合いません。無理に着たら伸びちゃいます」
「んなこと言ってる場合じゃねぇだろ。なんでもいいからあるもの着ろや。それとも河童さんのビニール腰巻き貸すか?」
「……その汚いボロ切れじゃ、人前に出られないことには変わりないです」
「汚い言うな。少なくともいまの嬢ちゃんが履いてるパンツより衛生的だっつーの」
「あ、花火! 花火打ち上がってますよ河童さん!」
「そういや小便小僧はいるのになんで小便小娘はいねぇんだろーな」
「はーなーびー!」




