表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/47

第三十八話 外伝・逃亡者

チグサ 16歳 この世界に転移して来た普通の女子高生。「白衣の天使」。

       転移特典で得た「反射」の呪文を使う。

マイラ 16歳 ダルーガ教と対立する、フーラ教徒が住むヤルケノ村の少女。

ボルク 23歳 マイラの兄 ヤルケノ村・防備隊長。


ノーラ 13歳 ナラヤから逃げて来た少女。

バウマン 30歳 元ナラヤ宗教警察・隊長。 

 思わぬ訪問者に、観光案内所はヒリヒリした雰囲気になっていた。


「まずはそのオークの衣を脱いでもらわないと……」

 ボルクが眉をひそめて言った。


 衣の中の人物は震えているようだったが、声は出さない。


 これではオークの衣は中に誰が入っていても分からない。


 もしかしたら、ヤルケノを憎む小柄なダルーガ兵が潜んでいるかもしれない。


 いずれにしてもダルーガのオリジナル版・オークの衣は、拘束具でもあるため、本人が自分では脱げないのだ。


 マイラが「別室で脱がせる」と名乗り出たが、それなら私が付いていたほうが良いだろう。


 私には悪意がある攻撃が「反射」の力で防がれるからだ。


 そうやって別室に連れて行き、オークの衣を脱がせてみると……。


 出てきたのは兵士ではなく、十三歳ほどの少女だった。


 痩せた肩……。


 何も身に着けておらず、背中には幾筋もの鞭の跡が残っていた。


 その姿に私たちは言葉を失った。


 私はそっと声をかける。


「ねえ……あなた、喋れる?」


 彼女は小さく頷くとかすれるような声で「たすけて……」と言った。


 そして怯えた目で私たちを見上げた。


 その瞬間、私の胸の奥がぎゅっと痛んだ。


「帰りたくない……」


 マイラはすぐにフーラの衣を持ってきて、少女に着せた。


「大丈夫。ここでは誰もあなたを傷つけないわ。ここに来た理由を話してくれる?」




 少女は村長やボルクも見ている前で、逃げてきた理由を語った。


「私の名前はノーラ。十三歳です。先の戦争でお父様が負傷して、家は貧しくなりました。それでお父様は……、私をお金持ちのダルーガの人の元に嫁がせると言うんです。でもその人はもうお爺さんで、お嫁さんも六人いるんです」


「それで嫌だと言ったら鞭で打たれたのね」


 マイラが怒りを抑えて言った。


(そんなことがダルーガでは行われているんだ)


「村長、この子をヤルケノでかくまいましょう!」


 マイラは村長にそう言ったが、村長の表情は押し黙っていた。


 その村長に変わってボルクが妹に説明をした。


「マイラ、それはできない……。ダルーガの慣習を否定することになるからだ」


 村長もようやく口を開いた。


「ダルーガとの間でようやく講和条約が結べた。これは奇跡といってもいいことだ」


 彼はしばらく間をおいて話を続けた。


「我々があのダルーガ最強と呼ばれた聖都の救済隊を破るなんてのう。これは勿論そこにおられるチグサ様のお力添えもあっての話だ」


 そう言って村長は自分の話にうんうんと頷いた。


「だが、勝ったとはいえ多くの犠牲者が出た。それ以上にダルーガ側では多くの死者が出た。我々を憎むものも多いだろう」

 村長はギュッと唇をかんだ。


「だが今は耐えておるはずだ。しかし、ここで我々がダルーガの生活に干渉するようなことをすれば、また再び戦乱の危険性が増すやもしれん」


「マイラ、俺だってその子を助けてやりたい。だが……」


 その話を聞いていたノーラがこの場を逃げ出した。


 私たちの誰もが彼女を強引に止めることができない。


「いやだ。私は帰りたくない。ここでも私を助けてくれないんだ!」


 観光案内所を飛び出たノーラを抱きとめた者がいた。


 療養中で、現在防備隊見習いとして働いている、元ナラヤの宗教警察隊長、バウマンだった。


「話は聞かせてもらいました。この子は私に任せてもらえませんか?」


「パックマンだったかの? いったいどうやって丸く収めるつもりじゃね」


「バウマンです村長。私はダルーガの人間ですが、このヤルケノと『白衣の天使』様に助けられました。

この子を何とか助けたい。けれどまた戦争になっては困るという皆さんのお気持ち。大変うれしく思っております。そこで私はこのような方法を考え付いたのですが……」


 バウマンはかなり奇抜な方法を私たちに語った。


「どうでしょう。任せて頂けませんか?」


 それは長年、ナラヤで宗教警察を率いて来たバウマンならではの策で、ノーラの行動をダルーガ内部の問題で、ヤルケノは関与していない形にするための妙案だった。


「なるほど。面白い」 

 とボルクも賛同した。


 マイラも私も、そしてノーラ本人も、バウマンの策にかけてみることにした。






バウマンの妙案とは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ