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第二十二話 使い方の変更

チグサ 16歳 この世界に転移して来た普通の女子高生。

       転移特典で得た「反射」の呪文を使う。

マイラ 16歳 ダルーガ教と対立する、フーラ教徒が住むヤルケノ村の少女。

ボルク 23歳 マイラの兄 ヤルケノ村・防備隊長


ズバルト  56歳 聖都ゴンゴザ大教会の特別矯正官。最高指導者。

ガルビエス 37歳 ズバルト直属の矯正官補佐。呪術を使う。

         『冷徹な死刑執行人』の異名を持つ。

バシュラム 41歳 東方辺境部連隊長。ズバルトを恐れる野心家。

         ガルビエスには対抗心を持つ。

 土木作業用の新商品を手に入れたボルクたちは、タウリンの商人が推奨したように裏山で黒い箱を使い、村の防備を固めるための木材や土砂を一挙に山裾まで落とす気でいた。


 私は慌ててそれを止めた。


 確かに、さっき見せてもらった限りでは、この世界の火薬は花火を強力にした程度の威力しかない。


 でも――。


 山の斜面で使ったら、土砂崩れが起きる可能性がある……。


 だったら、逆にこう使えばいいのでは?


「その黒い箱が木や石を落とせるなら、なんで攻撃に使わないの?」

 と言ってみた。


(そういう使い道は誰も思いつかなかったみたい。そりゃまあ、火薬なんて初めて見たんだもんね)


「そんなことが……いや待てよ。これは面白いかもしれん」

 と言ったのはボルクだった。


「つまりこういうことだろう? 敵が攻め込んで来た街道沿いの道に向けて、切り立った崖の上から土砂を落とすということだな」

(さすがはボルク・マイラの兄さんだけあって呑み込みが早い)


 だが、その場にいた義勇軍のひとりで、土木作業に詳しいというガンガゼと名乗る男が、強く反対した。


「いや、それは無理だ。敵はそういった場所を通る時には、必ず高台を視察する。そんな場所で工作をしていれば、すぐに見つかる。材料も没収されるだけだ」


 妙に断定的な口調だった。


(なんか、この人だけ事情を知りすぎてる気がする)


「やはりここは――」

 と、その男が言いかけた時、マイラが手を上げて遮った。


「この箱、ものすごい音がするからビックリ箱にすればいいよ」

 即座にボルクが眉をひそめた。


「いくらしたと思ってるんだ?」


(でも、その考え、いいかも……)


 私はマイラの案を発展させて提案した。


「敵が集まりそうな地面に埋めて、その上に砂を敷いておけばどうかしら。爆発の音と砂埃で目くらましになるはずよ。その隙に一斉に矢を放てば、混乱して勝てるかも」


 ボルクが腕を組んでうなった。


「なるほど。こちらには前の戦いで敵から分捕って修理した投石機もある。目くらましで足を止めさせれば、相当な効果を期待できるな。それなら高い買い物をしたかいがある」


 場の空気が「それで行こう」という方向に傾いた。


 ただ一人、ガンガゼとかいう男だけが、チッと舌打ちしたことを私は見逃さなかった。


 その男は不服そうに会議の場を出て行った。


(やっぱり、この人だけ反応が違う)


「よし、ではこの案で――」

 ボルクがまとめようとしたその時だった。


「兄さん! 裏山の方を見て!」

 マイラが窓の外を指さした。


 黒い煙が、細く、しかしはっきりと空へ伸びていた。


「狼煙だと……?」


「誰が上げたんだ? そんな予定は――」


 ボルクの顔色が変わった。


「まさか、敵の工作員が紛れ込んでいたのか」

 会議場にざわめきが走る。


(やっぱり……あのガンガゼという人が怪しかったんだ)


 狼煙を確認したボルクは、すぐに警戒態勢を指示した。


「戦いは……明後日にも始まる。だが少し早まるかもしれない。全員、持ち場に戻れ。くれぐれも油断するな!」


 村人たちが慌ただしく散っていく中、マイラは私の手をぎゅっと握った。


「チグサ、今日からは絶対に一人でいちゃダメ。敵はきっとあなたを狙ってる。今夜からはずっと一緒にいよう」


チグサを一人にしちゃいけない。

マイラの心配はとんでもない方向に・・・。

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