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年寄りは朝が早い!

23時にねても4時にはおきれちゃうぞ!


さて、自信満々にルドルフ滅ぼしてくるわ!宣言をしたは良いものの、私が出来る事は情報をあつめて喋る事だけしか無い。


魔王に頼めば夜な夜な首を狩ってくれるかも知れないが、それをするのは私が責任を取ったと胸を張れなくなるし、単なる虎の威を借る狐でしか無い。

そんなもんが世界の黒魔石を名乗った所で、鼻で笑われて終わりだろう。


なのでまぁ情報を集めた。

情報源は魔王である。

本を読めば良いのは分かるし、読めるけど時間短縮しないと、私は他に沢山やることがあるので⋯てへ。


そしてルドルフ大帝国は予想通り東の北部地方の国が発祥だった。

でもウェスタリアとは違ったのは、永久凍土よりはまだ南側に国が有り、高く険しい山と針葉樹林の生きるに厳しい土地柄だった。

ウェスタリアと似た土壌ではあったけれど、壊滅的に違ったのは知識人が送り込まれる環境が無くて、ひたすら脳筋の国家だった事だ。


生きるのに厳しく、険しい山のせいで畑もろくに作れなかったルドルフ国は、鉄が取れるのを良いことに、剣と腕力に物を言わせて強奪に走った。

強くはあったけれど魔法がある世界だったので、ウェスタリアほどの伝説的な強さは無かったのが災いして、ルドルフ国は使える手は全て使って姑息に国を責め立てた。


それが夜襲だったり、ゲリラ戦法だったりと、盗賊がしてる様な戦い方だったので、攻められる国からはかなり恨みを買うことになる。

そしてやっと1つの国を滅ぼした時、毒を使ってしまったせいで欲しかった田畑は使い物にならなくなっていた。

でも報酬が無ければ国民が納得しない。

金銭は手に入ったけれど、ルドルフ国が欲しかったのは食料だからだ。

なので仕方無くその国の国民を国へ連れて帰り、厳しい労働をさせて殺して行った。

と言うより必然的に死んで行ったのかも知れない。


何せ食料が無くて攻めたから、捕虜にした他国の人間に食べさせる余裕なんか無くて当たり前だよね。

それなら初めから連れて帰らなければ良かったのに、連れて帰るまでその問題に気付いて無かったのでは?と不安になった。

だって人間て運ぶの苦労するよ?

死体の処理も重労働よ?

なら何でそうしたの?ってなると、考えて無かったとしか思えなかったのだ。

脳筋だから。

目先の事しか分からない、バカだったんだと思う。


そしてルドルフ国は次の獲物を探して侵略や強奪を行った。

ルドルフに捕まるとヤバいのが分かった他国は、それに必死で抵抗するが、井戸には毒を撒かれたり、夜間に村を襲われたりと、対策はとても難しかった。

そして日が経つにつれて最初に奪った国も全てに毒をまいた訳では無いので、少しづつ食料が手にはいる様になり。

そこの国民は奴隷としてこき使われて死んでいくので、土地が空くのも当然だった。

なので厳しい土地を捨てて、少しづつ住みやすい環境を目指して行く。


そうしているウチに、ルドルフ国が少しづつ大きくなり、自分で攻めなくても脅せば他国が言う事を聞く様になってきた。

何故ならルドルフ国が攻めて来たら、水が汚染された土地が使い物にならなくなる上に、負ければ奴隷にされてしまうからだ。


圧倒的に強い国ならルドルフ国と戦えたかも知れないが、そんな大きな国で無かった場合、話し合いで属国となり、国民と麦を渡す事で自国を守った所があったのだ。

だからルドルフ国は喜んでその条件を受け入れ、更に狡猾な事に次の国を攻める時に役に立てば、奴隷や渡す麦を減らしてやると交渉に乗せて他国の兵士を使い戦争を行って行く。

そして約束通り勝てたら、奴隷と麦の徴収を減らし、その負債は次に落とされた国がする事になった。

こうしてルドルフ国は家来を増やしてルドルフ帝国になった。

快進撃を続けて段々と南下して行くと、ついに聖地を持つ国を滅ぼした事で、教会がルドルフ大帝国に移ったのである。

恐らく抵抗したとは思う。

でも上手く行かなかったから、中からルドルフ帝国を変えようと思った者が居たかも知れないし、教会の権力者が強い国の方がしのぎが大きいと思ったのかまでは分からない。


自分が攻めなくても、周りの国が攻めて国を増やしてくれていたけれど、やはり侵略で手に入れた国は反発も大きい。

だから皇帝は力のある者を好まれるので、皇帝になるには戦争に勝てる王子が選ばれる様になる。

そうして大帝国と名乗れるまで覇権を増やしたけれど、暑すぎる土地を嫌ったせいで、今のミスドガルド共和国から少し離れた北側に帝都があった。

脳筋はトレーニングするから、寒さには強いけど暑さには弱かったんだろうな。

鎧暑そうだし。


段々と横暴な政治に不満がたまり、1つの国では戦えないからと、いくつかの国が纏まって反旗を翻したのがミスドガルド共和国となった。

帝都から離れていたのと、聖地があるので教会の影響も強く、ルドルフ大帝国は悪だと神敵にして、団結する事が出来たからだと思う。


まぁ怒るよね。

ルドルフ大帝国。

だからドンパチがまだ続いているんだろう。

だってそこを認めたら他も反旗を翻してくるもんね。

滅亡しない為には戦わないと行けないと思ったんだろう。


魔王から話を聞いてたら、私は段々と不安になって来た。

だってガチの脳筋だよ?

過ぎるのは教会に行け!と、言い切ってくれた戦士ギルドのお爺ちゃんの自信満々な顔だ。


下手するとルドルフ大帝国て私の天敵じゃねぇか?

と、何となく気付いたのだ。

今更だよ。

ヤベェ、ちょっと考え方が甘かったかも知れん。

でもなぁ〜、やる事決まってるしなぁ。

なので私は魔王に必要な魔道具を作る様にお願いし、更に教会の本店を調べて貰う事にした。

え?魔王使いすぎ?

ん?龍の知恵を借る鼠???

立ってる者は親でも使ってエエんやで?

てか脳筋て私の天敵だし!

良いじゃん、私2歳だし!

と、タンタンと心の中で足踏みしとく。


流石の魔王もちょっと距離が離れ過ぎてて、教会内部や帝都の情報を調べるのに少し時間がかかってた。

なのでこの日はお家に帰って、また後日話を聞くことにした。


魔王が何故素直に私の相談に乗ってくれてるかと言えば、ルドルフ以外の北部の国は割と環境が悪くて貧乏な国が多く、まぁウェスタリアの敵じゃねぇなと考えたんだと思うし、多分それは当たりだ。

脅威にならないのはそれだけウェスタリアが金持ちで、規模が多く、何ならスタッフもメッチャ強いからだ。

7級を単独で撃破する騎士がゴロゴロいる軍隊とか、敵からすればイジメである。


そりゃ外に良い戦士や騎士が居ないとは言わない。

でも魔法師にしても錬成師にしても、普通の人間より強いんだよ。

お嬢さんがギルバートさんやカルマンさんに大きな顔してたのは世間知らずな箱入りお嬢様だからだけど、自信の元になる魔法の強さや持久力は普通の魔法師なんかと比べ物ならないから自信があったのかも知れない。


私から言わせて貰えば、お母さんが使ってくれてる浄化魔法って、攻撃魔法だと考えてる。

だって汗やら汚れやらを消しちゃうんだよ?!

卵は殻が有るのに中身のバイ菌が消えるんだよ、これ絶対にヤバい光線出てるって!


やたらと魔力の消費量が多いのって一種の消滅魔法だからじゃないかな?と。

つまり私が浄化魔法を使うのはヤバいかも知れない。

綺麗にするとイメージ出来なくて、消えろとイメージしそうで、恐ろしくて自分には使えないんだよ。

アレだよ。

走るとコケるから走らない理論。


魔力充填出来るし銀板で買えるなら、魔道具の浄化魔法使うほうが良いよね!

私は自分が怖いから危ない道は渡らないのよ。

天才じゃなくて凡人だからそうなるよね。


そして真面目な魔王は王様業務を部下に残して単独で潜入捜査をしてくれた。

王様が密偵って⋯まぁ頼んだの私なんだけどね?

他にいい人材居るだろ?とは思った。

魔王は人を信用しなさ過ぎである。

魔王って俺がやったほうが早い理論もってるよね。

しかも優秀なもんだから仕事を抱え込んじゃうんだよ。

1人は居るよね、そんな人。

頼りになるんだけど、性格がアレなんだよ。

そんなのがひょこっと上に上がるとパワハラとかで、仕事が出来ない部下から訴えられちゃうの。

会社あるあるだよね。

私知ってる。

そう言う人って居なくなったら周りが困って後悔するの。

ザマァ作品てそれだよね。


でもウェスタリアは部下も有能だから、魔王が居ないほうが案外上手く回ってしまって切なくなりそう。

魔王がグレないように、私が頑張らなくっちゃ。


そしてヤッパリ優秀だった魔王は、私にせっせと情報を運んで来てくれた。

そして予想通りルドルフ大帝国が脳筋なのが分かった。

魔道具もあるし、ちゃんと魔法師も居るんだけど、武術へのシンパシーが強すぎて、魔法師は軟弱者扱いされてて、鬱憤が溜まってる魔法師は、錬成師を頭デッカチなモヤシ野郎だと蔑んでるもんだから、錬成師になりたがる人があんまり多くなくて、ほぼ魔法薬の製造メーカーになってた。


⋯これ滅ぼさんでもイケるかもと、私と魔王はとても微妙な気持ちになった。

でもまぁルドルフ大帝国がバカでも、属国がそうだとは限らない。

自分の所の兵隊さんや国民を殺されたく無いから、兵器を開発することも考えられちゃう。

だからヤッパリ見せしめは必要なんだよ。

もう過剰防衛になって来た気もするけど、向こうの日頃の行いがそれだけ悪いんだから仕方が無いよね。


なので私は作戦の決行を決断する。

目指したのは本店の大聖堂だ。

晩ごはんも終って、魔力草を庭の外にも出して、あとは寝るだけって所で魔王が迎えに来てくれた。

流石に東の端っこは遠くて自力で飛べないから、黒魔石を使った転移門が有るところに連れて行ってくれた。

魔王はこのために黒魔石を2個使ってくれたらしく、自宅の庭から森の中に転移門で抜けると、ルドルフ大帝国の外にある自然が豊かな所だった。

そこから魔王は自力転移で教会の大聖堂へ向かってくれた。

魔王曰く魔法防御がザルらしく、あっさりと転移で入れちゃったのである。

それで良いのかな?

帝都も大聖堂も。


所変われば品代わるって言うけど、誇りにしてるものが錬成師と剣士とでこんなに違うのかとビックリした。

私はウェスタリアに生まれて心から幸せだなって思ったよ。

農民の環境もこっちの方が大変そうだしね。


あと魔王が言うには魔法防御はザルだけど、実体が侵入するのはやめたほうが良いと言われてしまった。

何故なら姿を魔法で隠しても、勘で見破って来るらしい。

どうやら喧嘩に強いのは伊達では無いらしくて、魔法生物として作った蜘蛛やハエでも侵入させて情報を集めてたら騎士に見つかって切り捨てられたそうだ。

はわわわ⋯脳筋ヤバいよ脳筋。

魔法生物とバレた訳では無くて、どうやらもの凄く綺麗好きらしい。

なんやそれ。


魔法に疎くても、舐めたらヤバいと心を引き締められた。

そりゃ交渉して逃げる国あるよね!

賢いと思います!

なのでもう私の選択は1択しか無い。

姿を見せずに声だけ届けちゃおう作戦だ。

話を聞いて貰えるかも分からないし、下手したら理解して貰えないかも知れないけど、まぁやるだけやってみようかなと。

他に私に出来る事ないしね。

ただ逆恨みされた時。

いや逆恨みとも言えないけど、刺客を送られたら舌先三寸で逃げ切れるかは微妙だ。

刺客なのに武士みたいにバカ正直に名乗られそうだから、ワンちゃんいけるかも知れない事を祈る。


「こんばわ。」


暗闇の中で明かりを灯し、私が挨拶した老人は読んでいた手紙からハッとして顔をあげる。


「大丈夫だよじーさん。

俺はアンタを害しに来たんじゃないのさ。

探しても姿が見えないのは、俺が見せてないだけだ。

俺はまた産まれて2年しか生きて無いから、身を隠して自分を守ってるんだ。

悪さをしに来たわけじゃないから、許してくれよな。


おっと、2歳の子供がペラペラ喋るのがそんなに不思議か?

だが俺は神様でも無ければ、魔物でもねぇ。

ただの人間の子供なのさ。

ただ他の奴らよりちょーっとばかし探し物が得意でよ。

まだ2年しか生きて無いだけあって、知識が足りてなくて、物事を知らなかったのさ。


今日ここに来たのは、アンタに頼みがあったからだ。

明日のこの時間に俺はこの国に住む、全ての人達に真実を知らせるつもりなんだよ。

この国はもうすぐ滅びちまうってさ。」

「っっ?!」


老人はハッと息を呑むと、ゆっくりと誰も居ない空間を見渡しながら、ゴクリとツバを呑み込んだ。


「それは俺のせいでもあり、この国のあり方にも有るんだけどな。

おっと、勘違いすんなよ?

2歳の俺が出来る事なんて、こうやって真実を知らせる事だけなんだよ。

別にこの国を滅ぼしたくて喋る訳じゃねぇんだ。


ただ俺が子供なせいで、無邪気に先の事を何にも考えないで見つけちまった世界の秘密が、先の世代に時代を動ごかしちまうんだよ。


だからこの国は放って置いても自然と滅びる予定だったのが、少し早くなっちまったのさ。

来月末にはこの国が下手すりゃ滅びちまうから、慌てて俺はその事を伝えに来たのさ。

でもいきなり知らないヤツがこんな事を言っても信じられねぇだろ?

だからアンタには明日のこの時間に、真実を知らせる者が現れると、皆に伝えて欲しいのさ。


人間のアンタには国の全ての人達に伝えるのは難しいとは思うから、この街に住んでる人達だけでも、滅びを避ける為に真実を知らせる者が現れると伝えてくれねぇかな?」

「⋯その滅びが真実であると言う証明は、何かございますでしょうか。」

「来月末になれば分かる事なんだけどなぁ〜。

まぁいいや。

滅ぼさない為に俺は来たんだから、滅びをもって証明はできねぇし。

そもそも明日の夜じゃ間に合わねえしよ。


では1つ。

俺が真実を告げる者である証明をしてみせようか。

ここは海に近い街だ。

なら海岸から外を眺めたら海と空の境目が見えるよな?

するとゆっくりと弧を描いてるのが分かるだろう?

それはな、俺たちが住んでるこの大地は、丸い星に有る証拠なのさ。」

「なっっ?!」

「お日様を直接目で見るのは勧められねぇ。目を痛めちまうからよ。

だから錬成師が作る透けた茶色の遮光瓶越しに見てみろよ。

お日様は丸い形をしてるからさ。

星も丸いだろう?

月だって丸い時が有るのを知ってるよな?

月の形が日によって変わるのは、お日様の光が当たる角度でそう見えてるだけで、本当は丸い形をしてんのさ。

だからこの星は丸いから、海と空の境目がゆっくりとまがってるだよ。

恐らく聖地のあるあの辺りに、ほかの大陸から来た人間が、街を最初に作ったから、聖地になってるんじゃないのか?

イスガルド大陸は水たまりの中の小石の1つなんだよ。

だから離れた所にも、小石が有るのさ。

これをもって俺が真実を知らせる者であるとの証明とする。

俺の言葉が偽物かどうかは、教会が答えを知ってるだろう?」

「な⋯なんと⋯」

「ルドルフ大帝国はこのままだと滅びる。

それは紛れも無い事実だ。

でも身勝手な生き方を見直して、誰かの助けになる様な生き方を選べれば、その滅びは遠のくかも知れねぇ。

でもミスドガルド共和国に攻め入ってる様な考え方してると、滅びは必ず訪れる。

それは人間がそう言った作り方をさてれるからだ。

1人で生きてる魔物は身体が大きかったり、武器になる魔法を使ったり、鋭い爪や牙をもってるけど、人間にはそんなもんついてないだろう?

だから人は助け合って、お互いを尊重して生きてるのはそうしないと1人では生きて行けないからさ。

こう言うのって教会で教えてるんじゃねぇのか?

それは真実正しい人間本来の生き方だからだろう?」

「おおお⋯あぁ⋯神よ!

貴方は真に神の御使いであられるか?!」

「だから人間だってば。

神様がいちいち身勝手な人間が自滅して滅びるのに口なんてはさむかよ。

俺はまだ産まれて間もないから、同類の人間を助けたいと思って来ただけなんだぜ?

あんたみたいには生きられねぇけど、自分がやらかした事の責任ぐれぇはとらねぇと、何となく気まずいだろう?

知らせても滅びる道を進むのはそいつらの勝手だけど、知らずに進むのは可哀想だと思わないか?」

「はぁ⋯」


髪もヒゲも真っ白な爺さんは、感激してたのにハシゴを外されて呆然としてる。


「アンタも自分が人間だってのを忘れて無理すんなよ?

俺の頼みを伝えて、街のもんに誤解されて殺されるんじゃねぇぞ?

変な恨みを買わねぇように、滅びを避ける為に真実を伝えに世界の秘宝が訪れる、とでも言っといてくれや。

じゃあな!」

「なんと⋯」


必殺言い逃げ戦法。

魔王が作った魔法生物の蝶がヒラヒラと舞ってお爺さんの鼻先を掠める様に飛び立って窓から出て行く。

だってさ、蜘蛛とかハエとかなら害虫扱いされて殺されちまうんなら、蝶しか無いだろう?

青や黄色の羽根が美しい小さなアゲハ蝶を魔王に使役して貰ってる。

アレが向こうが喋った時に声を拾うスピーカーになってる。

俺の声はラジオみてぇに魔石を使った魔道具から聞こえて来る仕組みらしい。

魔道具はそれなりに大きいから、爺さんがいる部屋の窓の上辺りに今回は置いて有る。

今魔王がひっそりと回収してる所だ。

不安定な場所だったからね。

本当なら広範囲に声を届けられるけど、今の時点なら爺さんだけに声を伝えて欲しかったのでそうなってる。


「黒魔石。」

「デタラメじゃねぇぞ?

でも証明にはならねぇよな。

向こうは何か思い当たる節があったから信じただけだろ?」

「⋯水しか無いぞ。」

「大陸って言うぐらいだから、他にも小さな陸が有るんだろっ?

俺の予想ならこの東の先に進んで行けば別の大陸が有ると睨んでる。大陸がもし無ければ、形は丸い星なのは本当だから、グルリと回ってウェスタリアに辿り着ける筈だ。

どうせ帰りを考えて魔力を使い切れてねぇだろ?

水の上で休憩が出来ねぇもんな。

この星は王様が思ってるより大きいのさ。

なら大陸を見つけるには途中で休憩出来る所を作らなくちゃならねぇ。海しかないなら方向を間違えねぇようにもしなくちゃだよな?

食料は魔法の鞄があるから賄えるが、1日で辿り着けるとは限らねぇから、王様やってる隙間時間で冒険するのは無理じゃね?

引退したらの楽しみにでもとっとけば?」

「⋯なるほど。」


魔王がスカした横顔でワクワクしてるのが伝わってきて、それが何だか面白かった。


てか爺さん早起きし過ぎ。

寝てる所起こすつもりだったのに、起きててビックリしたよ。

時差が有るから、ウェスタリアなら夜の8時でもこっちは夜明け前ぐらいの時間だったからね。

明るいのも困るし、暗い方がいいけど。私はまだ子供だからさぁ。

魔王の都合もあったし、調べて貰ったら時差は8時間過ぎぐらいだったから今朝の4時過ぎだよこの辺りは。

この教会で1番偉い人なのに、スゴいよね。


「出来そう?」

「うむ。」

「そっか。」


明日の仕込みをする為に、石造りの床に座って背中を丸めてる魔王を、石の柱に背もたれて体育座りした私が横目で見た後。


明日行う事を思って反対側に視線を向けて、夜明け前の明るくなっていく藍色の空とまだ黒い陸との境界線ぼんやりと眺める。

ここは教会の鐘がある鐘楼だ。

何もしてなければ強い風に煽られて、こうして景色を眺めてる余裕なんて無かったと思う。


私が今回思いついたのは、教会の鐘の音システムをラジオ放送局の端末として、利用出来ないかと魔王に確認する事だった。

いくらモーブの速度が自動車よりも遅くても、2時間ぐらい掛かる距離を思えば鐘の音が聞こえて来るのが不思議だったからだ。


まぁ案の定と言うか教会の鐘は魔道具で、教会独特の秘匿された技術で作られた物では有るけれど。

開発されたのは随分大昔なので、ウェスタリアはもう鐘の音システムの知識を、暗黙の了解で把握させられていた。

何なら教会に頼まれて作ってる錬成師までいる状態で、え?秘匿って何???

って感じなんだけど、時代の流れとはそんなもんだろう。


ウェスタリアの錬成師が優秀で、開発が進んだ魔道具の方が教会も使い勝手やコストが良かったんだと思われる。

だって数作るのに安くて使いやすい方が良いよね?

錬成師を育てる基盤が教会にないから、昔は魔道技術で錬成師の真似事をして広範囲に鐘の音を響かせていたんだろう。

でも街が大きくなれば、鐘1つだと足らなくなる。

鐘の為に教会を増やす事を思えば、そりゃ出来るヤツに開発を頼もうとなるだろう。

だってウェスタリアの教会が、実質的な本店だからだ。


でもさ秘密だよ?って言われてきてるルールが有るから、それは教えられないよね?

だから良いもん作ってよって、鐘の音を丸投げしたんだと思う。

ほいで秘密で作ってね?

って言われてたら、契約主からの依頼ですし。

音を遠くまで伝える構造の理念は授業で教えても、実際に使ってる鐘の音の魔道具の設計図は秘匿されているのかも知れない。

ラジオの作り方は習うけど、開発したラジオはメーカーしか知らないってヤツだね。

だから今魔王がしてる作業は、鐘の音のハッキングみたいなもんだ。


何故そうするかと言えば、他国になればその土地に合わせた時間を使われるけれど、同じ国の中だと同じ時間に鐘が鳴る様に作られているからだ。

ネットワークだろそれって、と気が付くのは私だけじゃないと思う。

魔王はネットワークシステムを知らなくても、その利便性を考えたら知りたくなるのが魔王なんだよ。

だからハッキングも出来ちゃう。

国で1番の技術屋だからね。

鐘の音が不思議だなって思ってた時点で、私は魔道具説を疑ってたし、だから最初に確認したらそうだった。

使えそうだと感じたから、今ハッキングして貰ってるのだ。


まぁウェスタリアやルドルフみたいな大国なら、他の国と違って同じ国内でも時差は有る。

でも2つの国とも上下に発展した影響で、時差がわりと少ないのだ。

ウェスタリアは西へ西へと伸びているから、今後は時差の問題が出て来るとは思うけど、そうなれば遷都して対応すんじゃね?って事になる。


そしてルドルフは海沿いにある国だけど、侵略して自国の者だと吸収せずに下っ端を増やしてるお陰で、国の形が残ってるもんだから、西に勢力が多少伸びても鐘の音システムは殆ど関係無いのよ。

だって自国扱いにしちゃうと、奴隷として国民を連れて来られないからだ。

だからルドルフは帝国の形になってて、皇帝が家臣を従える為の自国の軍隊に、他国から実力の有る剣士を個人として集めて作ってるの。


国のシステムとしたらウェスタリアに比べると、中央政権としてはルドルフの方が優れているけど、その代わりに治世としてはルドルフの方が反逆され易いから、一長一短では有るかな。


国の頭だけは自分に有利な代官を送って財産を集めさせて、治世はそこの土地の人に投げる形になるから、面倒は避けて美味しい所取りになるけど、反旗を翻す陰謀とかは起こりやすいから、治安として見れば危険性が高いけど。


でも実際にそうしたら軍隊を向かわせて潰せば良い。

何なら反抗した罰として税を挙げて国力を落とさせる。

何なら滅亡させて、国民全員が奴隷として他国への売り物にされるとかさ。

実際にやってるから、そりゃ中々の悪政じゃ無ければ反旗は翻さないのよ。

でもミスドガルドには教会の聖地があった事と、気温が高い南国だったせいで反逆が成功しちゃったんだと思う。

だってルドルフは錬成師を育てる基盤がないから、暑さにはめちゃくちゃ弱いんだよ。

分厚い金属の鎧を来て鉄の棒を振り回して戦うのが、ルドルフの戦争なんだよ?

半袖でも暑い土地で、そんなの続けてられないよね。

とか勝手に予想してるんだけど、調べても良いけど当たってる気がするからスルーしてる。

そんなの知りたければ本人から聞けば済む事だしね。


明日は皇帝と蝶々を使ってお話しようと思ってるからだ。

会う前に何匹きり殺されるか分かんないけど、沢山作って貰ったから数で頑張ろう作戦なのだ。

向こうもハエとか蜘蛛よりかは、見逃してくれるかも知れないしね。

でも蜘蛛って益虫のはずなんだけどなぁ⋯クモの巣を作るから嫌われてるのかな?

綺麗好きらしいしね。


だから庭なら蝶々だと目立たないと考えたんだけど、ミシリャンゼには蝶々ってあんまり居ないから、ちょっと不安。

でもミシリャンゼに虫がいないのは、野菜の葉っぱを守る為にマージンが食べちゃうせいだと思うから、ルドルフなら普通の蝶々とか居るんじゃ無いかと願ってる。


まぁ延々と話が脱線したけど、ルドルフ大帝国の教会はこの国のマザーになるからハッキングしたら、国中に私が声が響き渡る寸法なのだよ。


最初から鐘の音の魔道具を使えるなら、利用する事は考えついてたけど、せいぜい帝都の人達だけにお喋り出来れば良いかなと考えてたのよ?

でも私が思ってたより、魔王がシステムに詳しくて直ぐに私もその利便性に気付いちゃったから、まぁ利用するよね?

その意味が賢い君なら分かるよね。ワトソン君?


まぁこんなの無双でも何でもないさ。只の予定調和だ。



ジャンガリアンて可愛いよね。

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