373.空中に浮いているわけでもないしね
「そうなんですか?」
レスリーが乗り出してきた。
知らなかったらしい。
「あー、確かに雰囲気はありそうですね」
「似ても似つかない気がするけど」
「モン・サン・ミッシェルには大きな木は生えてませんからね」
それか。
あとラ○ュタは下半分がドームだった気がする。
「全然違うんだけど」
「でも確かに上半分は似ている気がします。
あんな山形のお城ってあんまりなさそうですし」
確かに。
ていうかお城じゃないし。
「空中に浮いているわけでもないしね」
「その代わりに海の上に浮いているように見えます。
モチーフとしては十分かと」
それはそうだ。
アニメに出てくる舞台や風景が現実そっくりである必要はない。
最近のアニメって露骨に実際の風景をそのまま映像化しているけど。
聖地狙いか?
「それより問題はモン・サン・ミッシェルの状況ですよ」
レスリーがスマホを見ながら言った。
「状況?」
「画像で観ると海の上に浮いているみたいですが、実際には陸地と橋で繋がっていると書いてあります。
バスや車で普通に行けるそうで」
「そうなの!」
てっきり船か何かで行くものだと。
「満潮時にはその橋が水没して完全に島になるらしいですが、そんなのは年に数回だけだそうです。
でも」
「でも?」
「普通に観たら単なるお城ですね。
もちろん周りは海ですが」
さいですか。
確かにロマンは薄れるけど、レイナとしてはどうでもいい。
そもそもどうしても観たいというわけでもない。
暇つぶしだ。
「別にいいけど」
「ラピュ○ごっこも難しいと思います。
多分ですが内部がツタで充満していたりはしません」
「そんなの当たり前でしょ」
このヲタクは何を期待しているのか。
この観光旅行、ひょっとしたらレイナより楽しみにしているのかも。
侍女じゃなかったのか。
ラノベやアニメに時々出てくる、主人の力を利用して好き勝手やる召使いだったりして。
「失礼な。
私はそんなのではありません!」
レイナの心を読んだレスリーが反発した。
何こいつ怖い。
「人の心を読んで反応しない!」
「レイナ様は露骨に顔に出るんですよ。
貴族のお嬢様としてどうかと思います」
「いや貴族じゃないし」
言いながらちょっとショックだった。
これでも外面は取り繕えている方だと思っていたのに。
レスリーには通用しなかったと。
アルバートが吹き出した。
こいつもか。
「とにかく私はラピュ○にもモン・サン・ミッシェルにも特別な興味はないです。
レイナ様の侍女だから調べただけで」
調べたらしい。
それはそうかもしれないけど邪心が透けている気もする。
聖力は無敵だが万能ではないのでレスリーの心までは判らないからなあ。
まあいい。
「それで観光は出来るのよね」
「コースがあります。
どこかのツアー客についていけば無料でガイドの説明も聞けますよ」
結構セコいレスリーだった。




