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異世界の聖女は何をする?  作者: 笛伊豆
第二十九章 聖女、旅立つ

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369.何で辞めたの?

 レスリーも隣で食べている。

 こっちは真剣だ。

 お腹が減っていたらしい。

「そんなので良かったの?」

 ちょっと心配になってしまった。

 レスリーってお嬢様らしく小食に見えるんだけど、実は大食いなのよね。

「平気です。

 実はお店でちょっと食べて来ました」

 何と。

 一筋縄ではいかないなあ。

 私の周りはこんなのばかりか。

 というよりは、それくらいでないと怪物(レイナ)について行けないのかも。

 アルバートは5分足らずで完食した。

 運転しながら。

 軍人の早飯って本当だったのね。

「まあな。

 海兵隊は特に、いつどこで食えるか判らんところもあるし」

 珍しくアルバートが雑談を始めた。

 人嫌いかと思っていたけど違ったようだ。

「そういえば日本にも住んでいたと言ってたよね」

「トウキョウにな。

 正確に言えば住んでいたというよりは勤務していた」

 そうなの。

「日本に英国軍の基地なんかありましたっけ」

 レスリーが口を挟んだ。

 本当にいい性格している。

 アルバートは全然気にしなかった。

「大使館付きの、まあ、詳しくは言えんが色々とな」

 やっぱり諜報員(スパイ)だった臭い。

 きっと戦闘員というよりは文官だったんだろうな。

 仕事が。

 それでも正規軍の士官だったことは間違いなさそうだ。

「何で辞めたの?」

 堂々と聞いてしまう。

 レイナにデリカシーはない。

「もともと生涯国に尽くすという気はなかった。

 ちょっと断れない筋から斡旋されてな。

 就職だよ。

 それに、うちみたいな郷氏階級の一族は世代ごとに何人か軍人や官僚を出さないと色々言われる。

 たまたま俺に役目が回ってきたというわけだ」

 なるほど。

 ミルガンテの聖女候補だったレイナもそういった「常識」を教えられている。

 権力はどんなものであれ、中枢および周辺を身内で固めようとする。

 ミルガンテの場合は聖力がすべてだが、そういうものを排除しているのが王政府だ。

 国や領地の統治や管理に聖力はあまり役に立たない。

 聖力はあくまで個人的な力であって、自分の周囲だけ現実を改変したからといって政治が上手くいくわけでも領地の問題が解決するわけでもない。

 役人が地道に頑張るしかないわけで、だからこそ周りを信頼出来る者で固めようとする。

 一番信用出来るのは身内だ。

 少なくとも他人よりは。

「英国って民主国家だと聞いたんだけど。

 政治家は選挙で選ばれるって」

「下院議員や首相はな。

 上院は貴族の世襲制だし国王陛下も健在だ。

 我が国の政治が生きた化石と呼ばれる所以だよ」

 自嘲するように言うアルバート。

 葛藤はあるみたい。

「それで上手く行っているのなら」

「行ってない。

 まあそれは世界中みんな同じだが」

 不機嫌になってしまった。

 アルバートが黙ったのでレイナはレスリーと雑談した。

「リンとかと連絡とってる?」

「毎日メッセージが来ますよ。

 レイナ様は何してるとか羨ましいとか」

 そういえば(レイナ)には連絡が来ないな。

「何で私に言ってこないんだろう」

「ナオさんたちから言われたらしいですよ。

 レイナ様は遊びに行ったんじゃないって」

 だからか。

 それでレスリー相手に愚痴ってると。

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