344.あれって観光客?
シンのからかうような声。
「派手じゃない。
誰も死んでない。
多分だけど」
『もっとやっても良かったのに。
まあパフォーマンスとしては十分だろうけど』
示威行為か。
シンにかかったら聖力での破壊行為もエンタメになってしまいそうだ。
『これからも遠慮なんかしないでいいからね。
反乱分子は徹底的に潰せとグロリア様も言ってるから』
過激だ。
やはり悪の組織なのでは。
首領は部下を粛清するものだ。
「判った」
『それじゃ。
何かあったら連絡して』
電話が切れる。
レイナはスマホをしまってから言った。
「シンは好きにしろって」
「だな。
何せお嬢は台風の目だからな。
本人の周りでは嵐が吹き荒れる。
隔離しておくに越した事は無い」
こいつって何気に失礼なのよね。
変に丁寧だったりするよりはいいけど。
アルバートは運転に集中することにしたらしくて車の速度が上がった。
レスリーはスマホを何やら弄っている。
ガイドでもするつもりなのだろうか。
到着までまだ時間がありそう。
それにしてもこのファントムとかいう車は広々としていて楽だ。
振動も少ないし、ちょっと昼寝したくなってしまった。
「少し寝る」
「判りました」
静かにしてくれるらしい。
レイナは目を閉じた。
「そろそろ着きます」
レスリーの声がした。
一瞬だったような気がするけどスマホを見たら1時間以上たっている。
いくら聖力で自動警戒しているとはいえ、ちょっと無防備過ぎないか。
まあいいけど。
ファントムはいつの間にか街の中を走っていた。
道はかなり広いけど混雑している。
特に大型のバスが多い。
「あれって観光客?」
「多分な。
ツアー用だろう」
やはり観光地か。
街並み自体はロンドンとあまり変わらなかった。
これが英国の標準なのかもしれない。
そろそろ夕方になる。
すぐに暗くなりそう。
「これからどうするの?」
聞いてみたらアルバートがハンドルを切りながら言った。
「とりあえずは目玉のローマ式浴場見学だな。
それからいったん宿に入って飯の予定だ」
もう宿が決まっているらしい。
それはそうか。
「ホテル?」
レイナが泊まったらまた騒ぎになるのでは。
「いや。
関連企業の施設がある。
そこを使う」
さすがは悪の組織。
あらゆる場所に拠点があるらしい。
「残念ですけど単なる保養所です」
レスリーがぶった切った。
「もっとも幹部用なので豪華ではあるみたいですが」
「俺もよく知らんがグロリアの推薦だから期待していい」
そうなの。
まあいいか。




