第101話 遺跡吸収
航海は順調に進んでいる。
夏季以外は航海を行うことが無謀とされている北海、大荒れの吹雪で流氷がぶつかり合う海面でも、水面下は穏やかであることを知った。
数ヶ月かかる北海の航海を2週間で終えて大海原へと出る。
この大海を南東に進めば目的地であるチョウキンのガルベラードにたどり着く。
途中巨大海中魔物をテティスの武装で撃退したり、ガウとのトレーニングに熱が入りすぎてトレーニング室の防壁をぶっ壊しそうになってコウメイから死ぬほど怒られたりもしたけど、順調と言っていい海の旅を送っている。
そんなある日……
「マスター!! 海底都市跡を発見しました!!
調査しましょう調査!!」
コウメイが興奮してメッチャクチャなフォルムになりながら報告してきた。
「設備は生きています!! 生きた遺跡です!!
やっぱり海底にありましたよね、文献にも軽く触れられていて、ああ、運が良ければこの辺りにあるかもと思っていましたが!」
「お、落ち着いてくれコウメイ、俺の朝食が取り込まれている」
興奮してるコウメイはもうめちゃくちゃだ。
「失礼しました。今、水スライムに調査してもらっていますので、安全を確認次第、本格調査に移ります」
「よろしく頼むよ、何か有れば俺たちも出る」
「ああ、そろそろ別の相手ともやり合いたい」
いつぞやの巨大な8本足の魔物はしぶとくて歯ごたえがあったけど、基本海中は暇だ……
ガウもすっかり退屈している。
正直俺もこの所、体力を持て余し気味だ。
なので……
「多数のゴーレムが配置されています。
すべて確保して日常のトレーニングに利用しましょう」
その報告はとても嬉しかった。
遺跡で手に入れた素材や資料、機械などはコウメイの手によってトウエンのファクトリーに組み込まれていく。
そして、魔改造されたゴーレムがトレーニングルーム(船内ではなくトウエン内に移動させられた)に用意され、なかなか骨のある鍛錬が可能になった。
「まてまて、なんだこのゴーレム、魔法が無効化されてるぞ!」
「洒落にならん!! なんだこの速さと重さは!!」
「小さい! 速い!!」
「でかい!! 重い!!」
「ふふふ、スライムとゴーレムコンビは最強であると今こそ証明します……!
マスターご覚悟を!!」
むしろ、俺たちが床に転がされる日々が続いた……
もともと可変性のスライムと、様々な形態を作れるゴーレムの組み合わせがここまで強力になるとは……
海底遺跡は非常に大型の施設で、大量の古の素材も手に入ってしまった。
様々な機械や設備も入手してコウメイはウッキウキで引きこもっている。
新作のゴーレムの稼働試験に俺たちが使われて、毎回ボロ雑巾のようにされるのは勘弁してほしいが、ガウが打倒ゴーレム&スライムに燃えているので俺だけ断るわけにも行かない……辛い……
「少し目立つようになってきたね」
「そうね、でもスライムちゃんが色んな服用意してくれるから、嬉しい」
「ありがとなコウメイ」
「健康管理は精神面も重要ですから」
「ガキどももこの子が生まれたらおじさんになるんだぞ」
「おじさんは嫌だなー……」
「ねー」
「なんにせよ、今は安静に過ごしてもらうのが一番だ」
「あんまり動かないで、ここのおいしい食事ばっかり食べていたら太っちゃいそう……」
「きちんと計算しておりますので、大丈夫です!」
「頼もしい……」
ローザと子供のケアも、バッチリだ。
順調にお腹も大きくなってきている。
このまま行けば、春には子供と会えることになる。
俺も父親になるのか……
少しづつ大きくなるローザのお腹を見ながら、少しづつ父親になるプレッシャーのようなものを感じる。
本当に自分なんかが人の親になれるんだろうか……
確かに、生活に関しては、もう今の時点で何の不自由もない生活を送ることも可能だ。
ただ、世界を見たいというオレ個人のワガママに家族を付き合わせて良いのだろうか……
「またつまんないこと考えてるでしょ」
「え!? どうして……」
「フフン! カゲテルが困った考え事してるときはすぐわかるんだよ」
「かなわないな……」
「大丈夫。カゲテルは良いパパになるよ。
そして、たくさん新しい景色を私達に見せてくれる。
そんなかっこいいパパになってくれるんだよ!」
「そうだな、かっこいいパパにならないとな!」
ズクン……
長いこと忘れていた、あの嫌な記憶が、久しぶりに親になるという事実を前に這いずりだしてきた……血の気が引いていく……あの日々が思い出されて……
「大丈夫」
温かい……誰かが俺を抱きしめてくれている。
ああ、ローザだ。
ローザが俺を抱きしめてくれている。
「大丈夫だよ。カゲテルは、大丈夫。
私も、ガウさんも、弟たちも、お腹の子も、それにコウメイちゃんもいるから。
大丈夫だよ……」
這い上がってきた黒い思い出は、ローザの暖かさで引いていく。
「ごめん」
「謝らなくていいよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
俺はローザを優しく抱きしめ返すのだった。




