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ハイハルトさんの行動
ナイフは常に手元に置く事にした。
悪役令嬢を殺す役目はこの私のみ。
他の者には絶対に譲れない、私だけの役目。
今回の劇の終わらせる条件は、リリアンローズが19歳となりマリアを殺そうとする場面までに、マリアが主役としての基準に達していない事。
この主役としての基準というのは、クラスでの人気であったり、成績であったり、彼女への支持の高さなどが一番重要になるらしい。
それならば、私が秘密裏に近づこう。
そうして私だけに気持ちを集中させてクラスの人気を落とし、裏で噂でも流させようか。成績はどのようにしたら下げられるだろうか。
せめて、裏で何を考えているのか位は知っておいた方がいい。おそらくイメージ通りの素晴らしい女というのは間違いだ。
リリアンローズの事を考えると心が痛んだが、責任感の強い彼女の事だ。途中でやめる事はあり得ないはず。
本当は近くで支えてあげたいが。それが出来ないだけにとても歯がゆい。
早く解放させてあげられたらいいけれど、時間は早まってはくれないものだ。待つしか無い。
しかし、それまでにマリアを自分に向かせ、周りからの支持を落とさねばならないのだから案外時間もないのかもしれない。
「リリアンローズ……リリィ……」
私に殺される事を、彼女はどう思っているのだろうか。
私に嫌われているというのをどう感じているのだろうか。
そこまで考えて思考を止めた。
今考えても仕方ない。
彼女を想っても自分には助ける使命が与えられていないのだ。自分の役割は『悪役令嬢』の役を殺すこと。
ナイフを手の中で握り直した。
もし失敗した場合、私は神の人形になるのだろう。
そして、恐らく、マリアを愛おしむ人間に成り下がる。
最早、死よりも残酷。
哀れな人形。
いや、失敗しなければいい話、逆に分かりやすい。
失敗は許されないだけ。
ただ、それだけ。
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