クセ者だらけの職場
山田はしばらく固まったままだったが、ようやく現実に戻った。
「よー」
一護は何事もなかったかのように、無表情のままピースサインを作った。
「“よー”じゃねぇよ。お前、何してんだここで?」
山田は驚きから一瞬で冷静に切り替わる。どうやらこの手のバカには慣れているらしい。
「遊びに来ただけ」
一護は子どもみたいな笑顔で答えた。
説教が始まる前に、鈴が苛立ったため息で空気を切り裂く。
「うるさい。ここはオフィス。続きはプロジェクトルームでやりなさい」
全員が叱られた小学生のように背筋を伸ばし、黙ってついていく。
その時点で、ユイはすでに一護の腕にコアラのように張り付いていた。
「いっちー、久しぶり!」
満面の笑み。
「で? どうやってここに就職したの?」
「それは後でまとめて話す……同じ話何回もするの面倒だし……
あと腕にしがみつくな! それじゃ一生彼女できない!」
振りほどこうとするが、ユイはさらに強く抱きつく。
「いいじゃん。初日の後輩を先輩がエスコートしてあげてるだけ♪」
狐みたいな悪戯笑顔。
一護は心底嫌そうな顔。
「エスコート? ただの恋愛市場破壊兵器だろお前」
山田が小声でリョウに言う。
「ユイ、全然変わってないな」
「いや、悪化してる」
リョウは深いため息。
ユイがギロリと睨む。
「なに? 文句ある?」
声が完全に人間の皮を被った悪魔。
リョウと山田は一斉に冷や汗。
「い、いや!? 何も!!」
リョウが必死に手を振る。
チームルームに入ると、デスクに突っ伏して寝ている小柄な女性がいた。
一護が口を開く。
「あ、誰この子――」
全員の目が見開かれる。
リョウが一護を一メートル引きずり、口を塞ぐ。
命を救った人間の息遣いだった。
山田が一護の頭を叩く。
「バカ! 言うな!
この人が最年長だ! 鈴さん28だぞ!
彩花さん、もうすぐ30だ!!」
鈴が一瞬で距離を詰め、一護の肩を掴む。
「聞けバカ。一番地雷踏んだら終わるタイプだ。
初日で殺されたくなかったら覚えとけ」
一護は全力で頷いた。
その時――
“寝てた子”がゆっくり顔を上げる。
可愛くあくび……
次の瞬間、マフィアの親分みたいなオーラで立ち上がった。
「おはよ……鈴ちゃん……新人?」
一護は即座に土下座レベルでお辞儀。
「お、おはようございます彩花さん!!
子供と間違えたとか一切ありません!!」
全員、同時に頭を抱える。
彩花は目を細め――
急にニコッと笑い、一護のネクタイを掴んで顔を近づけた。
「かわいい後輩じゃん♪
私、大城彩花。シニア・システムアーキテクト。
いじめられたら言いな?」
笑顔なのに、何かが怖い。
一護は息を止めたまま高速で頷く。
山田が額を押さえる。
「……何日生き残れると思う?」
「日?」
リョウが大きくため息。
「甘すぎ。時間単位だな」
鈴が手を叩く。
「はい。正式な自己紹介。今からプロ意識」
ユイが元気よく手を挙げる。
「渡辺ユイ! UI/UXとフロントエンド!
アプリを可愛く、使いやすく、中毒にする担当!
あと――」
一護の腕に絡む。
「――この後輩が一生彼女できないよう守ってます」
一護(小声)
「……どうやって駆除すればいい」
リョウが前に出る。
「秋光リョウ。バックエンドとDB。
俺のデータベース壊したら――」
一護を睨む。
「殺す」
「安心感ゼロ」
山田がだるそうに手を挙げる。
「川口山田。AIとアルゴリズム。
俺のコード触るな。
触ったら――死ぬ」
一護
「やっぱ俺狙いじゃねぇか!!」
リョウ&山田
「チッ」
彩花が眠そうに言う。
「QAリード。バグ潰し担当。
アプリと……バグ入れた人も壊す」
にこっ。
一護以外、全員一歩下がる。
鈴が前に出る。
「下月鈴。COO兼プロジェクト責任者。
チーム管理と火消し担当。特にこいつら」
全員、目を逸らす。
沈黙。
全員が一護を見る。
「あ、俺か」
一護は胸を張る。
「一ノ瀬一護。役職は未定だけど――
正直、全員より仕事できます」
凍結。
鈴のこめかみに血管。
(初日でチーム全員に喧嘩売った!?)
だが――
リョウ、ユイ、山田は平然。
「え? 怒らないの!?」
鈴が指差す。
リョウは肩をすくめる。
「性格最悪だが、実力は本物だ」
山田も頷く。
「戦力としては最高レベル」
彩花が顔を上げる。
「……有能」
ユイが誇らしげに一護を抱きしめる。
「天才だから♪ 嬉しいよ」
鈴は頭を押さえる。
「……使えるなら、資産ね」
その時――
コンコン。
ドアが少し開く。
「鈴さん……玲子社長がお呼びです」
鈴は深く息を吐いた。
(初日3時間で、もう限界……)
文法や表現の誤りがあれば、どうかお許しください。
少しでも楽しんでいただけたら、感想をコメントしてもらえると嬉しいです。




