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03-01 トリプルS

ジェスタイデル町は低めの山に囲まれた盆地の中に位置していた。土台となる部分が周りに比べて少し盛り上がっていて、その地面が石畳で覆われていた。馬車が町に東口から入るとき、緩やかな傾斜を上がっていくのをグレイスは感じた。カタンカタンと車輪が硬い石の上で回っているのが聞こえた。

三台の馬車が町に入ると、奥までとはいかず入口付近のところで止まった。馬車はこの後、町の外にある小屋に向かわなければならないとのことなので、乗っていけるのはここまでとのことらしい。シスター達と護衛は馬車から降りることになった。皆は御者さん達にお礼を言うと、彼らは馬車を連れてその場を離れていった。


「はいはい、それじゃあ、二列に並んでちょうだい。もう夜になっちゃいますから!

シスターアマンダ、うろちょろしないでください!夕食が遅れるだけですよ!」


マザージャコビンは取り纏めと点呼にいそしんでいた。グレイスは馬車の旅とお別れできたことにほっとしていた。具合が少し悪いが、何分お腹がすいていて、喉も乾いていた。足に感じる石畳は凸凹が少しあって、ひどくなっているところは転びやすい。急いで造られた感じがする。町の他の地面の方を見ると、まだ石畳は全体に行き渡っている訳ではなく、まだ敷いている最中のように見受けられる。町を囲う塀もまだ建設途中だったりと、色々と中途半端な様子が分かる。どうやらここは、発展の最中にある町のようだ。

グレイスが周りを見回していると、隣のケルシーが背を伸ばして深呼吸をした。貯めこんだ息を吐くと、彼女はグレイスに向き直りはにかんだ。

「すごいね、グレイス。ここ。空気がとっても綺麗」

そう言われて、グレイスはハッと気づく。そう。この町は全然「臭く」ないのだ。彼女達が今まで住んでいた王都の路地は糞尿まみれで、悪臭が漂っていたのだ。この町に出発する際、町がいい空気があるといいね、とケルシーと話していた。念願の、息が満足に吸える町にやってこれたことに対して、グレイスは少し微笑んだ。すると、彼女のお腹がくううと鳴った。グレイスは顔を少し赤くしたが、周りのシスター仲間が騒いでいるので、聞かれていないようだった。早く夕食を食べることができないのだろうか。


「マザージャコビン、お腹がすきましたー」

他の仲間がグレイスを代弁するかのような懇願が聞こえた。

「あなたたちがもうちょっと協力的になってくれれば、すぐに食べれるでしょうに!ほら、シスターソフィー?ちょっと、あなたはどこに行こうと言うのですか!?」


グレイスとケルシーは一団から少し距離を取っているものの、離れすぎていない場所でジャコビンが皆をまとめるのを待っていた。さっきまで一緒にいたマーサがどこにも見えなかった。彼女はどこにいったのだろうと、グレイスは後ろの方を見ると、マーサを見つけることができた。

マーサは護衛の二人が狼の死骸を別の荷車に積んでいるのが見えた。荷車は町の入口付近に置いてある、貸出がされている物のようだ。狼を車に積んでいる間、ニールはマーサに話しかけていて、彼女は愛想よく頷くことや相槌をうつなどして、うまくいなしているようだった。どうやら、まだニールは彼女のことをあきらめていなかったらしい。


ようやくジャコビンはうまく一団を纏めることができたらしく、彼女は大きな声でみんなに呼びかけた。

「はい、それでは、『トリプルS』に向かいますわよ!列を乱さないで、はい。ニール様!……ニール様、こちらであっているのですよね?」

「ああ、あそこに大きな建物が見えるだろう」

ニールはダグラスと一緒に台車を押して一行の横に出てきて、北の方であり、町の奥に見える一際大きな建物に指をさした。

「あそこが『トリプルS』だ。この町のギルドと食堂をやっている場所さ」

グレイスは目を凝らすと確かにそこには他のものより大きくて目立つ建物があった。具体的には、三棟のある建物が横に並んでいて、互いに連絡通路で繋がっているように見える。


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