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03-02 トリプルS

一行はやっとかという想いで町の中心をゆっくり通るようにして、「トリプルS」を目指した。石畳の上でカツカツと多くの足音と台車の車輪が響く。

もう既に暗くなっていたので、町にあったであろう人気も感じられなくなってきた。周りにある家の建物の窓は明るく光っていて、みんなはもう帰宅しているように見える。まだ外にいる人も、家路についている途中らしくて、横で通るシスター一行を興味深そうにチラチラと覗いてくる。一方で家にまだ帰らない人は、シスター達が向かっている「トリプルS」の方へと吸い込まれるように集まっていた。あそこには酒場もあるらしいというので、みんなはそこで一夜を過ごそうという考えかもしれない。


グレイスは本を抱えたまま、ケルシーと並んで一団の行進に付いていった。歩いている横に、荷台を押しているニールが少し顔を曇らせているに彼女は気づいた。

「どうした、ニール。浮かない顔じゃないか。久しぶりの故郷なのだろう?」と横についていたダグラスが話しかける。

「ん?ああ…なんでもねえよ」とニールは適当に答える。

「そういや、お前はあまりここに帰りたくなかったらしいな。…何か理由があったのだっけ」

「ああ…なんでもねえさ。いつまでもここを避けていったしょうがねえ」

あまり褒められることではないのだが、グレイスは思わず護衛の二人の会話を盗み聞きしていた。ニールがあまり浮かない顔をしているのは、マーサへのアタックがうまくいかないからなのだと思っていたが、どうやらまた何か別の事情があるらしい。一体なんなのだろうと思っていると、ケルシーが彼女に話しかけてきた。


「『トリプルS』…ね。ご大層な名前だよね」と彼女は口に手を当てて笑った。

「提携者に対してその言いぐさはなんですか、シスターケルシー」

ジャコビンの地獄耳はそれを聞き逃さなかった。いきなり横にマザーが近づいていたことにケルシーはびっくりしてしまった。

「『トリプルS』のおかげで、今回の夕食を無償で頂けるのですからね。揶揄するよりも、感謝を述べた方が筋ではないのでして?」

「でも、その代わりに私達はボランティア活動としてギルドのお手伝いをするのですよね」

ケルシーはジャコビンの機嫌を取るために適当に相槌を入れた。

「その通りです。ギルドは小さな依頼が多く貯めこんでいまして、それらを消化するために私達がこの町に呼ばれました」

ギルドは冒険者に対して、主に魔獣の退治の依頼などを頼んでいるけれど、他にも雑草の処理、ご老体の介護、掃除及び洗濯などといった雑用も頼んでいる。しかし、そういった依頼は冒険者には人気がなくて、未解決のまま放置されがちなのだ。そこで、ボランティアとなるシスター達が手伝うことになった。ジャコビンは隣で台車を押していたニールとダグラスに振り向く。

「冒険者の男達が、こういったことにも手伝うようにしてくれたら、話は別だったでしょう」

「年寄の介護なんて俺たちに似合わねえぜ。そこんとこはあんた達シスターに任せるよ」

ニールはごめんだと笑ってやった。

マザージャコビンはわざとらしいため息をつき、マーサは苦笑いをした。そんな話をしているうちに連中は目的の「トリプルS」の目の前と迫っていた。


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