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第40話



 私達は、自分が何者なのか、知らない。


 自分の名前さえ、知らなかった。


 ただ、物心ついた時にはすでに『殺し』をしていた。


 それしか知らなかった。



 友達と追いかけっこをするかわりに人を殺し、絵本を読んでもらうかわりに暗殺術を叩き込まれた。


 幼い頃は力がなかったので、目標の飲食物に毒を盛るのがメインの殺しだったが、そのうちにナイフを持てるようになると、殺しの幅も広がった。


 私達は、いつも大体3人1組だった。でも、言葉は一切交わさなかった。お互いに、何処にいてもついてくる影のようなものだと思っていた。


 作戦以外は、何処かの地下室のような場所に監禁され、ひたすら暗殺術の訓練をさせられた。そこでの記憶といえば、寝る前に見た真っ黒な天井だけだ。


 そんな、黒い海の真ん中に浮かんでただ漂っているだけのような日々を送っていた。


 私達は、黒い海に浮かんでいる流木だ。


 人間と呼べたものではなかった。





 ある日、いつものように、殺しの任務を与えられた。この日は、ナイフを持たされた。見ているだけで肌が切れそうな、恐ろしい刃だった。


 地下室を出る前に、ひとりの老人の顔を覚えさせられた。私達は、その老人の画像をただのデータとして頭の中に保存する。



 スーツを着た男性に、黒い高級セダンに乗せられ、大きな洋館に連れて行かれた。


 そこでは、広い庭に人が沢山集まっていた。皆、ドレスやスーツを着て、グラスを手にして、何やら話し合っている。庭に面した広い居間では、弦楽四重奏団がクラシック音楽を奏でている。


 私達は、沢山いる人の中から、目標を確認する。目標は、庭で白い椅子に座って数人に囲まれ話しをしている。


 そのうち、目標が庭から洋館の方に移動した。それを確認すると、スーツの男は私達に合図した。



 ——行け。



 私達は、目標の後を追う。


 目標は老婆に付き添われ、階段を上り、2階のいちばん奥の部屋に入って行った。暫くして、老婆がひとりでその部屋から出てくるのを確認すると、私達は素早く目標の部屋に入った。目標は、ロッキングチェアに腰を掛けていた。そして、部屋に入ってきた私達を見ると、微笑んだ。



「おや。お嬢ちゃん達、わしの部屋に遊びに来たのかい? ほれ、そこにお菓子があるじゃろ。好きなだけ食べていいよ、ゆっくりしていきな」



 私達は、囲むようにして目標に近づいた。そして、飛びかかった。1人は目標の口を塞ぎ、1人は目標の身体を抑え動きを封じ、私がナイフで、刺す。


 刃が肉を割いて食い込む、確かな感触。


 しかし、私は失敗した。


 急所を外したのだ。


 目標は腹をおさえてその場にうずくまり、私たち3人はその場に立ち尽くした。すぐさまナイフを抜き、もう一度急所を狙って刺すべきだった。しかし、何故か身体が動かなかった。



「ああ! 一体どうしたの!」



 後ろから声がした。振り向くと、扉を開けて、老婆が立っていた。幼心に、私達はここで終わりなのだと理解した。


 老婆が人を呼ぼうと通信端末を取り出したところで、目標の老人がそれを制した。老人は、ナイフが刺さったままの身体で、私達3人を、包み込むように抱きしめた。



「こんな幼い子供に刃を持たせるとは、なんと酷い……」



 そう言って、老人は涙を流した。老人の、私達を包む、大きな腕と大きな身体の感触。この時初めて、私達は人の暖かさというものを知った。



「ばぁさんや、この子達の事は秘密にしといてくれ」



 扉の前でその光景を見ていた老婆は、呆れたように両手を腰に回した。



「何言ってんだい! ……まったく、医者には診てもらいますからね! アンタがリンゴの皮を剥こうとして間違えて刺しちゃったって言っとくよ」



 そう言うと、老婆は通信端末で医者に連絡を取った。それから、私達に隠れているようにと、隣の部屋に案内してくれた。



 部屋の外からは慌ただしい人の声が聞こえたが、私達はただその場に立ち尽くしているだけだった。




 日が暮れて、屋敷が静かになった頃、老婆が部屋に入ってきた。



「お腹空いただろう、おいで」



 私達が黙っていると、ほれほれ、と言って老婆は3人の背中を押して部屋から連れ出した。


 階段を下り、1階の居間に入る。


 すると、ベッドに横になっている老人が寝転びながら手を振った。ベッドのそばにはガートル台が置かれ、点滴の袋が吊るされてあった。



「やぁ、来たかい。あんなところに閉じ込めて悪かったね。そこに座ってご飯を食べな」



 そう言って、老人は居間の真ん中に置かれたテーブルを指差した。老婆が背中を押し、私達はそれぞれ席についた。



「こんなものしか用意出来なくてごめんね。パーティーに来た輩を追い帰すのに精一杯でね」



 そう言いながら老婆が出してくれたのは、どんぶりに盛られたチキンラーメンだった。溶き卵とネギだけの、シンプルなものだった。



「ほれ、食べな」



 老婆に促され、私達は、ラーメンを一口、すする。



「美味しい……」



 老婆は、嬉しそうに微笑んだ。老人も、笑顔で頷いた。私達は、ただひたすら、黙ってラーメンを食べた。



 笑顔の老人と老婆、明るい居間、ラーメン。



 全てが暖かかった。



 あの時のチキンラーメンの味は、一生忘れられない。








 この老人と老婆が何者なのか、最後まで分からなかった。ただ、表の世界でも、また裏の世界でも力を持っていた事は確かだった。


 爺やと婆や(いつからか私達は老人と老婆のことをそう呼ぶようになっていた)は、私達に名前と、戸籍を与えてくれた。そして、愛を与えてくれた。本当の子供のように、私達を育ててくれた。


 爺やと婆やには深い教養があり、基本的な学問はもちろん、私達が興味を持った事は何でも教えてくれた。そして、沢山の本を与えてくれた。


 また、勉強だけでなく、遊び、というものを教えてくれた。


 爺やも婆やも老人とは思えぬほど身体が丈夫で、鬼ごっこやボール遊びなどの身体を動かす遊びにも付き合ってくれた。屋敷のボディーガードや使用人を巻き込んでのかくれんぼもしたことがあった。


 家には立派なオーディオセットがあった為、様々な音楽を最上級の音質で聴かせてくれた。


 私は、老人が好んで観ていた『北の国より』というテレビドラマが好きで、ロッキングチェアに座る老人の側で床にクッションを敷いて一緒にテレビを見たものだった。その何気ない時間は、今思えば、かけがえのない大切な時間だった。






 爺やと婆やは、私達を守る為に、常に厳戒態勢の警備を敷いていた。優秀なボディーガードを何人も雇い、洋館を守らせていた。高度なセキュリティーシステムで監視していた。それがあったから、あの穏やかで幸せな3年間を過ごせたのだと思う。私達は、爺やと婆やの大きな愛に守られていた。



 しかし、その幸せの中で生きることも、私達には許されなかった。






 その日、月が大きく輝く夜。異様な気配で目が覚めた。それが何なのか、私達はすぐに理解した。


 殺し屋の殺気。


 それは、動物が本能的に自然災害の予兆を察知するように、私達はその不吉な気配をありありと身体で感じ取っていた。


 爺やと婆やはすぐさま私達を寝室から連れ出すと、地下にある隠し部屋に連れて行った。



「いいかい、お前達。その奥の通路をずっと真直ぐ進めば、屋敷の外に出られる。婆や達が扉を閉めたら、振り向かずにその通路を走って抜けるんだよ」



 それが何を意味するのか、私達は理解していた。



「嫌だよ、マキナ達も戦う!」



 食い下がる私達を、爺やは優しく抱きしめてくれた。



「お前達は、何があっても生きるんだ。お前達は、わしらの最後の希望だから」



 そう言って、爺やは3つのエボルヴァーをそれぞれ3人に手渡した。そして、爺やと婆やは、優しい笑顔で、隠し部屋の扉を閉めた。






 10分ほど経過した。


 隠し部屋はシェルターになっているようで、厚い壁に囲まれている為、外の音は全く聞こえない。私達3人は、顔を見合わせて頷いた。そして、扉を開けた。



 洋館の中は、真っ暗だった。


 足音を立てないように、気配を殺して地下の階段を上り、身を屈めて廊下を進む。


 静かだった。


 どこに敵が潜んでいるのか分からない。私達はエボルヴァーを手に、警戒しながら進んだ。


 1階の居間までたどり着き、ゆっくり扉を開けると、スキンヘッドの大男がうつ伏せで倒れていた。


 ボディーガード長のタマルだった。


 タマルは優秀で、爺やと婆やから絶大な信頼を得ていた。


 そのタマルが殺された。


 私達は、目の前の景色が真っ暗な闇に飲み込まれていくような感覚に陥った。


 しかし、まだ諦めてはいけない。必死に、心が崩れないように勤めた。私達が、爺やと婆やを助けるのだ。


 居間を出て、階段を上り、2階に向かう。


 端から、1つ1つ部屋の様子を伺った。


 それらの部屋には、誰もいなかった。


 そして、いちばん奥の部屋、爺やの部屋までたどり着き、その扉に手をかけた。


 ドアノブに手を触れた瞬間、静電気が走ったみたいに、恐ろしいほどの殺気が全身に伝わってきた。


 私達は、少しだけ扉を開け、中の様子を覗き見る。


 そこには、血の海に伏している婆やと、大きな黒い爪に胸を貫かれ、力なく身体をだらりと宙に浮かせている爺や。その爺やを大きな爪で突き刺している、シルクハットを被った仮面の男。返り血を浴びたその姿が、月の光に照らされて不気味に輝いている。


 瞬時に、私達は飛び出そうとした。


 しかし、その刹那、先ほどの爺やの言葉が胸の奥から響いて来た。




 お前達は、何があっても生きるんだ——




 今すぐ飛び出して爺やと婆やを助けたかった。しかし、子供の私達ではあの大きな黒い爪に勝てないのは明白だった。小さな身体で、その力の差を痛いほど感じていた。


 今飛び出したら、私達は殺され、今夜起こったことは誰にも知られることなく、永遠に闇の中に葬られてしまう。


 そこで、全てが終わってしまうのだ。




 叫びたかった。




 しかし、その叫びを心に押し込んだ。かわりに、涙が溢れてきた。


 私達は、身を翻し、走った。


 廊下を走り、階段を下り、地下の隠し部屋に入ると、扉を閉め、ロックをかけ、その奥にある暗い通路をまっすぐに走った。


 どこまでも続く、冷たい無機質な細い通路。


 その先に、光など全く見えなかった。



 それでも、私達は出口を求めて走った。










 夜空を突き刺すように、天高く聳える灰色のビル群。輝くネオン。やたら眩しい照明と鼓膜を激しく揺らす排気音を立てて走る大きな車。騒ぎながら行き交う大人達。私達は、人目を避けるように、暗い路地裏を3人で身を寄せ合いながらあてもなく進んだ。


 どれくらい歩いたのだろう、気がつくと、大きな公園にたどり着いていた。


 2日間、この公園で過ごした。


 遊具のトンネルの中に入り、身を寄せ合って寒さを凌いだ。




 空腹と疲れで意識が遠のいて来た3日目、1人の若い男が私達に話しかけてきた。家に来ないかと言う。私達は言われるまま、男の車に乗り、家についていった。


 小さなワンルームのアパートだった。男はコンビニ弁当を出してくれた。それを見て、空になった胃袋が盛んに動き、口の中に唾液が溢れた。しかし、私達は手をつけなかった。


 弁当に手をつけずにいると、男は私の手を引き、風呂に入ろうと言って、私1人をバスルームに連れていった。



 2人っきりになると、男の様子が変わった。男の身体から、真っ黒なオーラがゆらゆらと揺れていた。


 男が私の洋服に手をかけようとした瞬間、男の首に青色のヒモが巻きつき、ピンク色の弾丸が男の額を貫き、私の黄金色の刃が男の心臓を貫いた。


 私達は男を殺すと、エボルヴァーで細かく解体し、トイレに流した。


 その作業が終わると、私達は男の財布から現金を奪い、部屋を後にした。


 そして近くのコンビニに行き、おにぎりを買って、公園のトンネルに隠れておにぎりを頬張った。



 私達の目にはもう、涙はなかった。






 犯罪者というものは、その姿と罪を隠しているだけで、狭い世界にも沢山潜んでいた。


 取り分け、私達のような小さな子供を狙う犯罪者は多かった。私達は、近づいてくる犯罪者を殺し、金を奪い、その金で飢えを凌いだ。


 そんな生活を続けているうちに、私達がたどり着いたのが、きさらぎ街だった。



「なんだお前ら……最年少記録だぞ」



 私達を見たおやっさんは、自由に使えと廃マンションの一室を与えてくれた。フランス料理店のマッツさんの飯だけは食うな。あとは自由にしていい。そう言って、私達をきさらぎ街の住人として迎え入れてくれた。


 それから私達はコツコツと仕事をし、お金を貯め、今の廃旅館を買った。



 私は、まだカビのにおいが残っている畳の居間で寝転びながら、旧世代のCDコンポで、中古レコード店で購入したロックバンドのアルバムを聴いていた。


 暗い色合いのジャケットに、アルバムのタイトルは、『SCUMS』と記されている。



「スカムズ……おい、スカムズってどういう意味だべ?」


「えー、知らにゃい」


「浮きかす、あく。または、人間のクズ」



 私はアルバムのジャケットを見つめた。



「人間のクズか……。なんか、マキナ達みたいだな!」


「にゃはは、確かに!」


「ふっ、そうだな」



 私はコタツの上に立ち上がった。



「よーす! 今日からマキナ達のグループ名はスカムズだ!」


「えー! もっと可愛い名前がいいにゃ」


「そもそもグループ名など必要ない」


「なんだとー!」



 こうして、私達は自らをSCUMSと名乗る事になった。



 そして、心に決めた。



 必ず、爺やと婆やの仇を見つけ出し、この手で殺す。















「それで、偶然に37階のコンパルで郡上燻を発見した訳ですね」


「はい」



 警視庁17階、捜査一課。その大部屋を出て廊下を突き当たりまで進み、左に入った奥にある資料室。


 荘子は辺りを見回した。


 そこには、窓に黒いカーテンがかけられ、部屋の角にはトーテムポールのような謎の民族彫刻が置かれ、目の前の事務机の上にはくすんだ金色の皿の上に極太の蝋燭が置かれている。


 その蝋燭やら髑髏やら決して趣味が良いとは言えないコーヒーカップやらが乗った事務机を挟んだ向こうに、警視庁捜査一課の管理官、栄生が座っていた。


 寝癖と言う名のウェーブがかかったロングの黒髪が、ブラウスの上からでも分かる小ぶりな胸の上に垂れている。この女性も、管理官という立場にありながら無邪気で幼い表情を見せる年齢不詳であり、かつ謎の多い人物だ。


 荘子と柴田に挟まれている事務机のそばの、壁際に置かれたくたびれたソファには納屋橋がタバコを咥えて座っている。



「納屋橋捜査一課長、ここは禁煙ですよ!」



 栄生が注意する。



「お前こそ、資料室を私物化してんじゃねぇ」



 納屋橋はタバコに火をつけ、気怠そうに煙を吐いた。栄生は納屋橋を睨み、そしてまた荘子の方に視線を移した。



「しかし、それは恐ろしいほどの偶然ですね。まるで仕組まれていたような」


「栄生管理官はわたしを疑っているのですか?」


「いえ、白川警部補がこの事件に関わっているというケースも可能性の1つとして考えられなくはないですが、偶然でしょう。しかし、先の心愛命の事件と、人斬り抜刀菜、そして郡上燻。何かしら関連性がありそうですね。ワクワクしてきます」


「お前、そんな嬉しそうに事件の話しをするんじゃない」



 目を輝かせて事件について話す栄生に、納屋橋が横槍を入れた。栄生は無視して続ける。



「今回、郡上燻に殺された被害者は、ロシアの諜報機関の関係者でした」



 ロシアの諜報員とは、また突飛な事実だな。



「おかけで、公安が動いてしまっています。恐らく、私達ではもう自由に捜査出来ないでしょう。興味深い事件だったのに」



 栄生は残念そうな表情で肩をすくめた。


 郡上燻によるロシアの諜報員殺害、マキナ達が属していたとされる謎の組織、ミミック、それらが示す答えは——



「郡上燻は、何者かに依頼されて諜報員を殺害したのではないでしょうか? または、郡上燻がロシアの諜報機関と敵対する組織に属しており、任務として諜報員を殺害したか」



 栄生の瞳が怪しく光った。



「なるほど。郡上燻はもともと、やり手の暗殺者であったと。スカムズのような」



 郡上燻と、スカムズ——



「はい。あのような鮮やかな手口で人を殺せるのは、一般人で、しかも14歳の女子ではありえません。特別な訓練を受けているはずです」


「それなら、心愛命が異常な体制で郡上燻を監禁していたのも頷けますね。そうなるとまた心愛命も怪しくなってきますが」



 納屋橋はため息のようにタバコの煙を吐いた。



「やはり、とても興味深い事件です。ふふふ、エクセレント……」



 栄生はひとりでニヤニヤと笑った。そして、思い出したように、突然立ち上がった。



「白川警部補、ケーキがあるのですが食べますか?」



 ケーキなど余計なカロリーを摂るだけで食べたくなかったが、ここは付き合いだと思い頂くことにした。



「はい、いただきます」


「やめておけ、腐ってるぞ」



 納屋橋が俯きながら言った。



「え……」



 栄生はナウシカの王蟲のテーマを鼻歌で歌いながら、資料棚の間に置かれてある小さな冷蔵庫からコンビニのケーキとバナナを一本取り出した。


 栄生は、バナナを納屋橋に差し出した。



「なんだ、これは?」


「バナナです。栄養がありますよ」



 納屋橋は栄生の頭をはたき、ケーキを1つ奪った。



「ひどい!」


「お前は上司への礼儀がなってない! もう1つのケーキはちゃんと白川警部補にあげろよ」


「はぁい」


「いえ、わたしは……」


「いいんです、白川警部補はお客様ですから」



 そう言って、荘子の前にプラスチックの容器に入ったショートケーキと白いプラスチックのフォークが置かれた。納屋橋は手づかみでケーキを頬張った。



「いえ、わたしはあまり糖質は摂取しない主義ですので。栄生管理官、どうぞ」


「それなら仕方ないですね。では交換しましょう」



 荘子と栄生はケーキとバナナを交換した。バナナは良い程度に熟れており、美味しかった。栄生も、満足そうにケーキを口に運んだ。



「どうですか? それは大阪から取り寄せた高級バナナなんですよ」



 なるほど、いつも食べているバナナより味い深かった。



「美味しいです、ありがとうございます」


「よかった。こちらのケーキも美味しいですよ。消費期限が半月ほど切れてますが、充分食べられます。うーんジューシー」




 納屋橋は思いっきり口からケーキを吹き出した。






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