美辞麗句
君は、どんな人だっけ。
紙の上で踊っていたペンが止まる
白い便箋の上には、ありきたりな言葉が並んでいた。
「やさしくて」「笑顔が素敵で」「みんなをまとめられる力があって」
どれも、君を示す言葉なのに、
どこかで見た言葉を借りてきただけのように見えた。
俺は小さくため息をついて、机にうつ伏せる。
「俺の気持ちはこんな薄っぺらいものなのか…」
好きだと思っている。
それは、たぶん嘘じゃない。
でも、どこか好きなのか、なんで好きなのかを言葉にしようとすると、どこか引っかかる。
本当に見てきたはずなのに。
一番近くにいたはずなのに。
俺は君の何を知っていたんだろう。
知っている気になっていただけなのだろうか。
ふと、窓の外が揺れた気がした。
いや、揺れたのは外じゃない。
次の瞬間、床が動き始めた。
「何が起きているんだ」
遅れて、激しい揺れが部屋を襲った。
本棚が軋み、何かが崩れる音がする。
立ち上がろうとして、足元がもつれて――
そのとき。
ガン、と鈍い音がして、視界が白く弾けた。
「っ……!」
頭に、強い衝撃。
遅れてやってきた痛みに、息が詰まる。
本が落ちてきたのかもしれない。
意識が、ゆっくり朦朧としてくる。
最後に見たのは、机の上の君への便箋だった。
何回も消した後が見える紙。
そこには、
「本当の君を、俺はまだ知らない気がする」
その文字だけが、やけにはっきりと浮かんでいた。
まるで最初からあったように。
そして視界が暗くなった。
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