0.プロローグ
「レイラ・スフォルツァ、貴様をこの国ギルバート王国王太子ルシアンの名の下にそなたとの婚約をこの場で破棄する」
学園生活の終わりを告げる、大切なパーティの日。その人は私を一層強く抱きしめながら、その言葉を吐いた。
ピンクのフリフリがついた真っ白なドレス。いかにも女の子かわいいゆめふわみたいな世界観。
レイラは黙りこんだままだった。あの刺すような夜色の目をまっすぐにこちらに向け、ゆるく微笑む。
「そうだ、未来の宰相としてこの国に巣くう悪魔を黙って見過ごすわけには行かない」
眼鏡をあげながらそんなことを言ったのは、シュレン。私を抱きしめるこの人ルシアンの大親友であり、将来の補佐官としての働きを期待される男だ。
「俺の大事ないやシャーロットにこんなことするやつ、許しておけないんだよな」
この国の第二王子までもが私の見方をする。
「シャル姉さまの幸せのために、死んで」
我が弟に関しては憎しみを隠そうともしない目で彼女を見ていた。
「シャーロット、愛してる。君のためなら国だって亡ぼすよ」
「シャーロット様、お慕いしております。貴方様のためなら私はこの手を汚せる」
「シャルロッテ、出来るなら俺を……、いや実の兄は殺しちゃいけない、よな。でも俺……」
「シャル姉さま、僕と……全て壊しましょう」
より取り見取りの病んだイケメンたち。その男たちから手を差し伸べられるその状況に私は……。
「いや、誰も好みじゃないから、誰か助けて!??」
大絶叫していた。