97鱗目:冬眠?龍娘!
「鈴ー、もう朝よ。起きなさーい」
「んんぅ〜……もう後すうじゅっぷ……にゅぅ〜…………すー……」
なんか喋ってるわね……寝言かしら?
「鈴ー?入るわよー?…………ってまだ寝てる……すーず、鈴ってば、起きなさーい!」
「やぁー……」
「くっ……寝ててもあいっ変わらず馬鹿力…………というかいつもなら1番に起きてるくらいなのに……今日は調子が悪いのかしら?」
もうそろそろ着替え始めないと学校に間に合わない時間、隆継と違い珍しく起きてこない鈴を起こしに来たアタシはモゾモゾと動く布団を前にそんな事を呟いていた。
「あったかもふもふ……」
「もう。ほら鈴、もふもふしてないで起きなさい。遅刻するわよー」
「さむいのやぁー」
まぁ確かに寒いけど…………寒い……?そういや今日から一気に冷え込むって昨日テレビで言ってたような…………原因がそれならもしかして────────
「冬眠?」
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「──ちゃん─きて、鈴───起き───」
もうちょっと……後1時間……いや半年……なんなら暖かくなるまでぇ………………
「起きなさーい!」
んぅんっ?!
「なっ、なにっ?!ってあっ、ちょっ!んんっ!ちーねっ!尻尾の先は……んんっ!」
「あ、起きた起きた。おはよう鈴ちゃん」
「はぁ……はぁ…………お、おはようじゃないよ何するのちー姉ちゃん?!尻尾の先は変な感じがするから触らないでって言ってたじゃん!」
お陰でなんか身体がむずむずゾワゾワするー!
「ごめんごめん、だからそんな怒んないで鈴ちゃん」
ちっとも悪いと思っていなさそうなちー姉ちゃんを前に、いきなりとんでもない方法で起こされた僕は布団を跳ね除け、息を荒くして尻尾や翼をピンと伸ばしていた。
「それはともかく鈴ちゃん」
「なに!?」
まだ変な事するならいくらちー姉ちゃんでも部屋から放り出すよ?!
「今の時間、見てご覧?」
「時間ー?」
時間ならえーっと、9時54分だけ……ど…………
「……寝坊してるぅー!?」
「大丈夫よ鈴ちゃん、今日は鈴ちゃんおやすみするって私が学校に電話入れといたから」
「それならよかった……いや良くないよ!何勝手にやってるのさ!?あーもう!今からでも遅くない、早く着替えて学校に─────」
「そんなちょっと隆継くんの前には出せないような感じなのに?」
「……?えっ、あっ!……はぁうぅぅ…………」
慌てて準備しようとフラフラする足で何とか立ち上がった所でちー姉ちゃんにそう言われ、僕はどういうことかと姿見の方へ目をやる。
するとそこには頬を上気させた、この時の僕には何となくしか分かんなかったが、見る人によっては襲ってくれと言ってるように乱れた僕が映り込んでいた。
そしてそんな自分の姿を見た僕はかくんと女の子座りで座り込むと、なんだかとても恥ずかしさから翼で自分を覆い隠す。
「幾ら冬眠仕掛けてたとはいえ、無理矢理起こす為に人間でいう性感帯を思いっきり刺激したんだから、そういった気分にもなっちゃうかもね」
そういった気分?
「え、えと、このなんかよくわかんない感じのこと?ちー姉ちゃん?」
「そうそう、そんなあーるでじゅうはちな……もしかして鈴ちゃん……自分でした事とか…………ない?」
あーるでじゅうはち?自分でした事?
「ご飯なら作ったことあるよ?それともお風呂洗い?」
「えーっと……あー…………うちの妹のそっち方面が純粋無知過ぎて辛い……」
「えーっと……ちー姉ちゃん?」
「鈴ちゃん、貴女はまだそういう事知らなくていいのよ」
「あ、はい」
そんなやり取りの後、軽く運動してくるといいとちー姉ちゃんに教えてもらい、バトミントンをやったりして気を紛らわす事に成功した。
が、しかしその日の夕方─────
「ただいまー」
「あ、おかえり隆つ─────」
「お、何とか冬眠から起きれたみたいだな鈴香……ん?どうした鈴香?おーい」
「はっ!ごめんごめん!ついぼーっとしちゃって!」
「大丈夫か?辛いならちゃんと休めよ?んじゃ俺は部屋に戻るから」
「うん、ありがとう隆継…………はぁー……」
なんだろう、なんか隆継見た時に思わずこう、気分が上がったというか、お腹がキュッとしたというか、心做しかまたなんか変な気分に…………とと、いかんいかん!
さっ、晩御飯作んないと!美味しいの作るぞー!
隆継を見てなんだかまた変な気分になりかけていた僕は、ふるふると顔を振り料理へと取り掛かり始めたのだった。




