98鱗目:限界実験!龍娘!
「29……30……!だぁぁあー!」
おぉー、やりきりおった。
「お疲れ隆継、今日はお休みなのに相変わらず頑張るねぇ」
今日のノルマを成し遂げ汗だくで20キロのダンベルを持ったまま床に寝そべっている隆継に、僕はそういいながら水晶でコップを作って中に水を入れ隆継に差し出す。
「助かる……ぷはぁっ!まぁ日課だしな。それにほら、続けてるお陰で大分筋肉もついてるだろ?」
「おーほんとだ」
確かに引っ越して来た時よりもごつくなってる気がするし、明らかに腕は筋肉ついてる。
「…………ちょっと触ってもいい?」
「おう、勿論いいぞ。ほれっ」
「ありがとー!それじゃあ…………おぉぉ……」
思っていたよりも硬かった隆継の腕を暫く撫で回していると、ふと隆継がじっと僕を見ている事に気がつく。
「どうかした?」
「いや……鈴香って時々めっちゃ重そうなの運んでるだろ?文化祭の時とかも」
「そう?」
たいして重いものはなかった気がするけどなぁ。
「で、ふと思ったんだが……鈴香、何キロまで持てるんだ?」
「んー……」
何キロまで持てるかって聞かれてもなぁ、実験した事ないし…………あ、そうだ。
「試して……みる?」
僕はそう言ってヒョイッと隆継のダンベルを指1本で持ち上げ、隆継に向かってニヤッと悪い笑みを浮かべたのだった。
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「と、いうわけで!一体僕は何キロまで持つことができるのでしょーかっ!」
「だからこんな準備させた訳か」
「いつもいつもありがとうございます三浦先生」
隆継とあんなやり取りをした翌日、僕はそう言うとぺこりと三浦先生に頭をさげ、実験への協力に改めてお礼を言う。
「まぁいつかは検証してみたかった事だ、いいデータを期待してるぞ。隆継くんは安全の為に俺と一緒に行動する事」
「任せてください!」
「分かりました」
安全第一だけど、多分結構な重さまでは行けるはず!
「さて、それじゃあ説明する。今日の実験は鈴香の持てる限界重量の測定だ、急遽用意したからそこまで用意できなかったがな。それじゃあ全員、速やかに準備を整える事」
「「「「「はい!」」」」」
この雰囲気、好きだなぁ。
そんな事を呑気に思いながら暫く待つこと数十分、いつもの家の裏にある山の実験場には幾つもの重りが並べられていた。
のだが……
「流石にスタートが1tっておかしくないですか三浦先生?!」
『何もおかしい事はないぞ、なんたってお前は前に片手で軽々800kgの荷物持ってたからな』
うぐっ……確かに大きい荷物持ったりしてたけど…………
「それとこれとは別なんじゃ────────」
『なぁに、今までも今も今からも存在から色んな常識をぶち壊しまくって原型を留めさせてないお前が何を今更』
「なんかひどいっ!」
『はっはっはっ、まぁとりあえずやってみてくれ』
軽く流された……
「全くもう……はーい」
流石に無理だと思うけど……まぁやってみるかぁ。
「それじゃあまずは1t、いきまーす」
そう言うと僕は自分の身長より高い台の上に飛び乗り、ぐっぱぐっぱと手を動かして1tと書いてある重りの上にある取っ手に手をかける。
「せーのっ!」
掛け声と共に力いっぱい両手で1tの重りを引き上げると、それは思ってたよりも軽く、僕は逆に勢い余って尻もちをついてしまう。
「…………持てました」
『……持てちゃったな』
「えーっと……次、行きますね」
目の前で起こった余りにも常識外れな状況に、当の本人たる僕自身も呆気に取られながらも、そう言って軽々と次から次へと1tずつ追加される重りを持ち上げていく。
そして─────
「ラスト、重り全部いっぺん……いきまーす」
『お、おう……無理はすんなよ?』
「は、はーい」
全部合わせて20tはあるんだ、流石に無理だろう…………無理だよね?無理じゃないといやだよ?
そんな風に普通とは逆の不安を覚えつつ、僕が重りに手をかけると、僅かながら今迄はなかった抵抗を感じ、改めて手に力を込め直す。
「せーのっ!」
さっきまで軽々持ててたのに……1tでこんなにも変わるもんなんだなぁ…………それ、無理だと思うけどもういっちょ。
「ふぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!ったぁ…………ふふふふふっ……ふはははははははは!無理でした!持てませんでしたーっ!ばんざーい!」
『あー……鈴香?』
20tの重りを持ち上げる事が出来ず、んばっと手を上げて僕が喜んでいると、胸ポケットにある通信機からおずおずとした三浦先生の声が聞こえてくる。
「はい!なんですか三浦先生!」
『喜んでいる所とても申し訳ないが……片手で無理なら両手でやろうな?』
「……………………はい」
20tになるまで片手で持ち上げてきてた僕は、三浦先生にそうつっこまれ、しゅんと尻尾と翼を垂らしながら返事をしたのだった。
その後、両手でちゃんと持って持ち上げてみた所、これまたあっさり持ち上がったのはまた別の話。




