108鱗目:新たな試み!龍娘!
ううぅぅぅ……恥ずかしい……!
「ほ、本当にやるんですか?冗談とかじゃなくて……」
「今更何を、本当にやるに決まってるだろ?」
「うぅぅう……でもぉ……」
「でももなにも無い、男なら覚悟を決めろ」
確かに中身は男だけど体は女の子ですー!
ある日のお昼過ぎ、僕は三浦先生と家の座敷でそんなやり取りをしていた。
一体何をしているのかと言うと────
「なぁに、1発で決めればいいだけさ。それじゃあ行くぞー」
えぇい!男も女も度胸じゃい!1発で決めてやるー!
「はいどうもー!ドラゴンガール、龍娘の天霧鈴香でーちゅ!」
「…………」
「…………」
「……でーちゅ」
「うわぁぁぁぁぁ!」
かんだぁぁぁぁぁぁあ!
「はーいやり直しやり直し」
「あうぅぅぅ……」
「ほらほら、早く終わらせたいなら悶絶してないでさっさと成功させろー」
「だってぇ~」
「だってじゃない、それにこれでお前も何とかしたかった問題も少しは解消できるんだ。ほら、さっさと某チューブに投稿する自己紹介動画を撮るぞー」
「はーい」
最大手動画投稿サイト「BouTube」に作った僕のチャンネルへ投稿する為の自己紹介動画を撮影していた。
ーーーーーーーーーー
「……よし、OK」
「はひゃあ~」
やーっと終わった……疲れたぁ。
「後は俺がなんかいい感じに編集しとくから、鈴香はゆっくり休んでくれ」
「はぁい」
もうそろそろおやつの時間になろうかという時間になってようやくOKの出た僕は、三浦先生にそう返事を返すとふにゃふにゃと畳の上に倒れ込む。
「にしても本当にそんなので上手くいくんですか?」
殆どその場の思いつきみたいだった気がするけど。
「あぁ確かに思いつきに近いが、これは間違いなく上手く行くさ」
本当かなぁ……
数日前僕の退院祝いを行っていたあの日、廊下で隆継のあのセリフを聞いた三浦先生は、日医会を出た頃から僕達を悩ませている問題の解決策としてそれを起用した。
その問題とは────
「隠し撮りで撮られた僕の動画とかSNSに居る僕の偽物、これで消えるのかなぁ」
「全部が全部って訳じゃないが、それでも当の本人が動画とかを上げ始めてネット活動を始めたとなれば、それだけでお前を騙る偽物は格段に減ると思うぞ」
ネットに蔓延る僕の偽物への対応である。
「今までも俺達が見つけ次第対応してきたが……まぁ次から次へと息を着く暇も無いくらい出て来てるからなぁ」
「はぁ……でもそんなに大事な事なんですか?確かにいい気はしないけど、それでも別に悪い事しなきゃ僕は放っといていい気がするんですけど」
「そりゃあ悪い事しなきゃいいさ。だが鈴香、お前は良くも悪くも凄く目立つ。偽物が下手に悪事やらとんでもない嘘発言をしない為にもなんとかしなきゃならんかったのさ」
実感とかは無いけど、やっぱり三浦先生がそこまで言うって事は、それだけ対策しとかないと危ないって事なんだろうなぁ。
いやー、ネットは怖いなぁ。
「……お前が今の生活の前どんな生活をしてたのかは知ってるが、現役の高校生なんだからもう少しそんな爺婆な感想を持ってないで携帯を使えるようになってくれ」
「ぜ、善処します……」
苦笑いを浮かべながらそう言う三浦先生に、未だ連絡用アプリで返信するまでに時間のかかる僕は、歯切れ悪くそう返事を返すしかなかった。
その後無事に撮影した僕の自己紹介動画は投稿され、その動画は一日で500万再生という数字を勝ち取り大きな話題となったのは言うまでもあるまい。




