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107鱗目:退院!龍娘!

「むぅ……」


「どうしたの鈴ちゃん?今日は朝からずっとそんな調子だけど」


 うぐっ……流石ちー姉ちゃん、やっぱり気が付かれてたか…………


 目が覚めてから更に数日が経ち、そろそろ11月も終わるという頃、相変わらず包帯ぐるぐる巻きにされている僕はあっさりとバレていた事にガクッと肩を落とす。


「えーっと実はその…………今朝からなんか全身ムズムズしてて……」


「ムズムズ?昨日包帯変え損ねたとかかなぁ?具体的にはどこら辺?他に何か気になる事とかは?」


「尻尾とか翼ー、後は首筋とか背中が特にかなぁ……なんなら全身ムズムズするけど。他は特にないよ」


「ふぅむ……もしかして…………鈴ちゃんちょっとごめんねー」


「ん?ちー姉ちゃん何か心当たりでもっ!?」


 ぬ、脱がされっ!


「い、いいいいきなり何をっ!?」


 突然ちー姉ちゃんに患者服を脱がされた僕は、直ぐに服の前を閉じると顔を赤くしてキッとちー姉ちゃんを睨む。


「やっぱりねー。ほら鈴ちゃん、これみてご覧」


 なんだろ?薄くて白い所々僕の鱗みたいなのが……


「……あっ、もしかして────」


「随分お久しぶりだけど……どうやら鈴ちゃん、脱皮みたいね」


 ーーーーーーーーーー


「それで、どうしても人手が足り無いからアタシ達を呼んだと?」


「そういう事、わざわざ休みなのにごめんね?」


「いや、それは別にええんですけど、まさかすずやんが脱皮までするとは……」


「アタシも初めて知ったわ」


「うぅ……なんか恥ずかしいから言わないでぇー…………」


 じーっと二人に見つめられながら、服や下着を脱がされうつ伏せにされている僕は怪我のせいで下手に動けない事も相まって耳まで真っ赤にして枕に顔を埋める。


「それじゃあ、取り掛かるでー」


「優しくしてね?」


 確か脱皮の皮剥がされるのって結構刺激あったようなぁぁぁぁあ!?


「あら、思ったよりもペリっと取れたわね。これなら楽に……鈴?」


「び、びりびりってきて……あたまふわって……おなかきゅうって……や、やさしくって言ったのに…………」


「ご、ゴメン……」


「すずやんビクビク痙攣しとる……そんな刺激が……えぇっと先ずはお湯で濡らしたタオルで脱皮の皮を湿らせて、そしたらゆっくり────」


「んっ」


 やばい、声が。


「皮が切れないように────」


「んうっ……!はぅ……」


 あっ、そこ、皮がめくれて……


「慎重に、丁寧に────」


「んあっ!あっ……!」


「集中出来んわ!」


「ひぃうっ!?と、とらちゃんまでぇぇ……」


「あははははは……集中出来無いのは分かるけど優しくしてあげて?」


 そう言うちー姉ちゃんの前で、ベリッと勢いよく翼の付け根辺まで脱皮の皮を剥がされた僕は、気持ち良さと刺激の強さにはぁはぁと息を荒くするのだった。

 そして数時間後────


「はぁ……はぁ……終わっ……た?」


「終わったですずやん、あーもう疲れたわぁー!」


「鈴の声のせいでこっちまで変な気持ちになりそうだったわ」


「二人共ありがとうねー、おかげでこんなに綺麗に脱皮の皮取れたよ」


 無事脱皮は終わり、部屋の隅には何袋もある脱皮の皮の入った大きめのビニール袋がこんもりと積まれていた。


 気持ちよかったけど……すごく疲れた…………


「にしても、このすずやんの皮に数億どころか数千億の価値があるって……恐ろしい話やなぁ」


「確か冗談抜きで万病に効くんですよね」


「そうだよ。部位欠損とか切れたり折れたりした精神やら骨は治んないけど、病気なら重い病気も軽い病気もなんでも治るんだー。

 後、ここだけの話……これをひと舐めすればアレ終わるまで全く辛く無くなるんだよ」


「「……マジですか?」」


「マジよマジ、手伝ってくれたお礼に今度小瓶1本ずつ分けてあげるから、辛い時に使ってみて」


「すずやん!また脱皮の時は手伝うから呼んでな!」


「あ、アタシも、また手伝うわよ」


 うわー現金だなぁ……所でアレってなんなんだろ?ま、いっか。


「次は優しくしてよねー?」


「もちろんや!」


「さ、そうと決まれば早速皮を運ばないと────」


「おーっす、なんか二人だけで見舞いに言ってるって聞いたから来てやったぞー」


 ん?この声は隆継かな?わざわざ今日もお見舞いに来てくれたのかー。


「やっほー隆継ー。ごめんねー、今起き上がるから」


 うつ伏せのまま脱皮の余韻に浸りつつ隆継の声を耳にとらえた僕は、いつも通り出迎える為にいつものように起き上がり────


「ちょっ!隆継!あんたなんでここに────」


「あっ!すずやん今起き上がっちゃ────」


「ん?二人共一体何をそんなに慌て……て…………」


 はらりとタオルケットが落ちた所で、ようやく僕は僕が今一糸まとわぬ姿である事を思い出したのだった。

 そしてさっきまでの脱皮してたからか、はたまた周りの反応に影響されたか、脱皮の余韻に浸ってた自分のせいか、隆継に見られたという事が今の僕にはとても恥ずかしく感じられ……


「────っ!隆継のバカっ!エッチ!変態!さっさと出てけー!」


「うわぁっ!?ちょっ!鈴香ァ!?」


「バカバカバカー!」


 顔を真っ赤にし、隆継を追い出そうと次々と水晶を作り次々と投げつけたのだった。

 この後、思わず自分の口から出たセリフを思い出して頭を抱えたり、隆継と気まずい雰囲気になったりしたが、それはまた別のお話し。

 そしてそうこうしてるうちに月日は流れ────


 バサッバサッバサッバサッ


 やっぱり体を自由に動かせるのっていいなぁ~


「お日様もぽかぽかで風も気持ちいいし、今日は絶好の退院飛行日和だー」


 そう言いながら宙返りしたりきりもみ回転しつつ、12月に入った所でようやく退院出来た僕は、ゆっくりと空を飛んで家へと帰っていた。


 それにしてもせっかく半月くらいで退院できたっていうのに、隆継達も日医会の人もみーんな用事あるからって……何日かくらい退院日ずらせば良かったかなぁ。


「まぁ皆もそれぞれ忙しいだろうから?お迎え来れないって言われても仕方ないけどさー、やっぱりせっかくならおめでとうくらい言われたかったよ」


 そんな風にぷくっと頬を膨らましながら誰も居ないんだしと珍しく愚痴を零しつつ僕が飛んでいると、いつの間にか眼下に見える景色はビルの建ち並ぶ街から木々の立派な山林地帯へと変わっていた。


「ありゃ、もうこんな所まで……やっぱり空を飛べるのって便利だなぁ。欠点という欠点も寒いのと飛びすぎると翼の付け根が痛いくらいだしねー、っと見えた見えた!」


 いやー、たった数週間とはいえ久しぶりに見るとなんかこう帰ってきたーっ!って感じが……っとと、そろそろ高度落とさなきゃ。

 翼を折り畳んで充分地面に近づいてー…………ここっ!


「んーっしょ……っと!無事着地完了!ようやく帰ってきたよ……我が家!」


 バサリバサリと翼を羽ばたかせ僕の家の前に着地してからなんだか不思議な気分に浸りながらそう言い、人気の無い扉を僕が開けると────


 パァン!パパァン!


「「「「「退院おめでとう!姫ちゃん!」」」」」


 うをあっ!?にゃっ、にゃにっごっと!?


「「「「「おかえりなさい!鈴香ちゃん!」」」」」


 沢山のクラッカーの音と共に、部屋から飛び出してきた皆に唐突に祝われた僕は────


「…………」


「えっと……」


「鈴?」


「お、おーい……すずやーん」


「み、三浦さん……姫ちゃん硬直しちったっスけど……」


「あー……えー……っと……」


「────っ!」


「うわわっ!姫ちゃん泣かないで!?」


「お、脅かしたのは謝るから鈴ちゃん!」


「実は鈴香のお祝いの準備してたんだ!だからな!?」


「隠してた事は謝るから!天霧さん、落ち着いて!ね!?」


「ほら!美味しい料理とかプレゼントとか!沢山あるぞ!」


「皆…………ごめんなさーい!」


「「「「「「「「「「なんで!?」」」」」」」」」」


 驚きと、嬉しさと、愚痴を言ってたという罪悪感で泣き出してしまったのだった。


 ーーーーーーーーーー


「みぃ~」


 む、この久しぶりに聞く可愛らしい鳴き声は……


「どしたのこまー?」


「みぃ」


「抱っこ?仕方ないなぁ~。ほらおいでー」


「みゃうー」


 部屋でごろんと寝転がっていた僕は起き上がってそう言うと、こちらへと勢いよく駆けて来るこまをタイミングよく持ち上げてあげる。


「なんだー?僕が居なくて寂しかったのかー?」


「みぃう」


 く~~!!可愛いなぁこいつぅ~!


 あの後、皆と一緒に外が真っ暗になるまでどんちゃん騒ぎで退院祝いを楽しんだ僕は、今は布団で横になりゆっくりと休息を取っていた。

 なお、とらちゃん達はもう子供だけで帰るには危ない時間の為、そして三浦先生達もお酒を飲んだりしてた為、今日は皆家に泊まる事になり僕はワクワクしていた。

 ちなみに今とらちゃん達はお風呂、三浦先生達は大人達だけでお話中である。


「はぁ~、今日は楽しかったなぁ。皆で一瞬に盛り上がって、お泊まりもして……まぁ、皆一緒に寝れないのは残念だけど」


「みゃあ」


「うるさかったって?ごめんよこまー、よーしよしよし」


 ん~ふわもこふわもこ、やっぱりこまは最高の触り心地だー。


「っと、そういや退院祝いにフード付きのタオルケット貰ったっけ。ちょうど少し寒いし、せっかくだから被っとこーっと」


「みゃん!」


「ん?こまもタオルケット一緒に被るー?ほれほれ、暖かいだろー」


「みぃうー」


 あ~お腹見せちゃって可愛いなぁ~……にしても、今日は楽しかったなぁ。


 ゴロゴロと喉を鳴らすこまのお腹を撫でてやりながら、僕はそう思いつつさっきまでの事を思い出していた。


 ほんとこんな姿になっちゃったりしたけど、優しい友達に賑やかな家族が居て、僕は本当に恵まれてるなぁ……


「みぃ?」


「ん?大丈夫だよ。心配してくれたの?」


「みぃー」


「ふふふっ、こまは優しいねー。うりうりー」


「おー、やってんなぁ」


「わっ!隆継!?びっくりした」


「ごめんすずやん、せっかく久しぶりのお泊まりやからお喋りしたくてなー。ウチがついでにってたかくんとりゅーくんも誘ったんよー」


 なるほど。


「にしても、だいぶ可愛いことしてたな鈴香。動画投稿サイトにあげたら凄い再生数が稼げそうだ」


「頼むからそういうのは勘弁して」


 ただでさえ普通にすごしてるだけでも目立ってるんだからこれ以上目立つのは避けたいんだよ!


「いや、案外いい考えかもしれんぞ」


「「「「「わぁぁ!?」」」」」


 三浦先生いつの間に!?


 いつの間にか後ろに居た三浦先生に驚き、思わず僕達は叫びながらガタガタっと音を立て、後ろに勢いよく下がったのだった。

 そしてその時見えた三浦先生は────





 ものすごく悪い顔をしていた。



そろそろ脱皮させようと思ってやりました。

後悔はしてない

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