幕間 雨上がりのその後.2
看病の仕方:水姫の場合
「はーい、響八さーん。検温の時間ですよ〜。」
昨夜の火鈴の一件から一夜明け、いまだに熱の下がらない俺の前に、水姫が看病に来た。
「どう?この格好? やっぱ看病イベといえばナースコスが定番ていうか常識じゃん?」
どこの世界の常識なのだろうか。
水姫の格好はコスプレというだけあって、現在の看護師がしてるような格好ではなく。
ナースキャップを被り、制服の色は薄いピンク。
ズボンではなくミニスカにタイツという漫画の中から飛び出してきたのかと思う程の姿だった。
「ちょっと稜ちん? あーしがせっかく気合いの入った格好して看病しにきてあげたのに、一言の感想もなし無視とか酷くなーい?」
看病しにきてくれたのは正直嬉しいのだが、昨日の件もあって大分寝不足気味なので、できれば今はそっとしておいて欲しいのが本音である。
「どれどれ、お熱はどうかなーっと…。って、ヤッバ!?メチャクチャあんじゃーん。」
水姫は自分のおでこを俺の額に当てて熱を測って驚いていた。
俺的にはきた時に片手に持っていた体温計を使わずに熱を測ったことに驚きを隠せないと共に、いきなり近づいてきた水姫の顔に内心ドキドキしていた。
「どうしようかな…。あっ!そうだ!」
熱を下げる方法を考えていた水姫が何かを閃いた様子を見せると、いきなり着ていたナース服を脱ぎ出す。
「ちょっ!?水姫何やってんの!?」
手早くナース服を脱ぎ捨てた水姫はナース服の下にビキニを着込んでいたようで、脱いですぐ、意味もなくグラビアモデルのしていそうなポーズをとっていた。
「なぜに水着?」
あまりに不可解な行動に思わず質問をしてしまった。
「稜ちんをお風呂に入れてあげようかともあって着てたんだけど、結構熱が高くてお風呂はしんどいだろうから熱を冷やしてあげようかと思って。」
だからなんで水着になるんだよ。
結構布地が少ない際ど目のビキニに目のやり場がなくて困る。
「それじゃあ失礼しまーす。」
急に水姫が俺の布団を捲り、自身が布団に入ってこようとする。
「ちょちょちょっ、何ナチュラルに入ってこようとしてんの!?」
「あれっ?何かいけなかった?あ、そっかごめん。気づかなかったよ〜。」
ようやく自分がしていた奇行に気づいてくれたのか一安心していたのも束の間。
水姫は体にゼストを纏うと、肌の色が褐色気味に変化していった。
「何それ!?」
「これはアタシの水を操る能力の応用で、肌の色を変化させる技だよ。」
「だけど、なんで今その技を?」
「えっ?だって、布団に入ってアタシの冷たい体と能力で熱を冷ましてあげようとしたら、あーしが白ビキニなのに黒ギャルちっくな見た目じゃ無いのが許せなくて、あーしが布団入ってくるのが嫌だったんじゃ無いの?」
圧倒的な説明不足と俺のことをとんでもない性癖の持ち主だと思ってる水姫の思考回路に絶句して言葉が出なかった。
「それじゃあ改めて失礼しまーす。」
「あっコラ!?」
するりと布団は忍び込んだ水姫は俺が着ていたTシャツの中に手を潜り込ませ、体を密着させるために俺を抱き寄せた。
「すごい熱いね…。可愛そう…。」
耳元の近くで囁くように話しかけてくる水姫を変に意識してしまう。
「どう?あーしの体ひんやりして気持ちいっしょ?」
確かに気持ちいい。だが熱は冷めるどころかどんどん上がっている気がした。
「あれ?何だか元気にするために冷ましてるのに、逆に熱くなって違う元気が出ちゃったかな…?」
ナニを言っているのだろうかこの姉は…。
そのくだりは昨日火鈴が既にやったよ。
「なになに〜?元気になるお注射して欲しいんじゃなくて、元気になったからお注射したい的な?もうっ、稜ちんのへ・ん・た・い・さんっ。」
もうやだこのノリ。いろんな感情が頭の中でぐるぐるして気持ち悪かなってきた…。
だっ、誰か…。
誰でもいいから助けてくれ…。
ガラッ!
「水姫ちゃん、木陽の看病の番まだ〜。」
看病の仕方:木陽緊急参戦
天に自分の祈りが通じたのか、木陽がこの状況を解決するために神が遣わした天使に見えた。
「あれ〜?もうそんなに経った?ごめんね陽ちん。稜の熱が中々下がらなくてさ。上も下もw」
なんだよ上も下もて…。
熱が下がらないのは姉たちの看病 (主に火鈴と水姫のせい)の仕方に問題があるためだ。
「じゃあ木陽の出番だねぇ。よいしょっと…。」
木陽は看病するためと、着ている自分の服に手をかける。
嫌な予感がした。
嫌な予感は的中し、小春は着ていた白いワンピースを脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になった。
「木陽…お前もか…。」
味方に裏切られた気分にひしがれていると、木陽も布団にに潜り込んでくる。
「もういい加減にしてよ。一人で寝るから二人とも出てってよ。」
「えー、体は熱いのに心は冷たーい。寝るなら一緒にこのまま陽ちんと添い寝してあげるし。」
「木陽の能力で、稜ちんの風邪なんて一瞬で治しちゃうよ〜。大丈夫。木陽失敗しないから〜。」
一人で寝るって言ってんだろ!
そう怒ろうとしたのも束の間。
木陽が抱きついて能力を発動すると体の力が抜け、体の痛みや苦しみが和らいでいくのを感じる。
やり方はアレだが、効果は覿面のようだ。
だんだんと木陽の治療が気持ちよくて眠たくなってくる。
まずい。
このままの状態で寝たら、他の姉妹が帰ってきた時にどう言い訳したら…
バサッ
「何やってんの、あんたたち…。」
あっ…。
二人に気を取られすぎて、金恵が部屋に入ってきたことに全く気づかなかった。
看病?:金恵帰宅
金恵はあまりの光景に両手に持っていたレジ袋を床に落とした。
「貴方達……、そこに正座しなぁさあああぁぁぁい!!!」
「「「はっ、はい。」」」
カンカンに怒った金恵は巻き込まれた被害者の俺も意思が弱いだのなんだのと理由をつけて盛大に叱った。
その後、帰ってきた美月と火鈴を加え、俺の今後の看病をどうするかを話し合う会が開かれた。
議論は各々自分の看病か一番ということを一歩も譲らず話続け、気づけば夕方になっていた。
「うるせぇ…。」
ピンポーン!
地獄のような状況の最中、突然の来客を告げるインターホンが鳴った。
姉妹達は話し合いに夢中でインターホンが鳴ったことに気づいていない様子だった。
仕方なく自分が重い体を引きずって玄関を開けると。
「あっ響八君。ごめんね急に。これ、昨日までに配られたプリントと授業の内容写したノート。
後これ、お見舞いに色々買ってきたんだ。
具合どう?早く良くなって、また学校きてね。」
ドアを開けたら目の前に女神が立っていた…。
「わざわざありがとう瀬川さん。まさかお見舞いに来てくれるなんて…。嬉しいよ。」
プリント等々を受け取り、さりげない気遣いと優しさ。これまでに受けた看病とのあまりの違いに思わず涙が流れた。
「どうしたの!?大丈夫?体調悪い?ごめんね、わざわざ出てきてもらって。」
「いや、違うんだ。嬉しすぎてちょっと涙が…。体調は大丈夫。順調に回復してるから、すぐに学校にも行けるようになるよ。」
「そうなんだ、よかった〜。じゃあ長居しても悪いし、私そろそろ…」
瀬川さんが帰ろうと体の向きを変えようとした瞬間、部屋の奥から複数の足音がこちらに近づいてきた。
「あら〜瀬川さん。わざわざ稜君の為にお見舞いに来てくれたんですか?」
「おっ!瀬川ちゃんやっほー、火鈴お姉さんだよ。」
「あっ、稜ちんの清楚系幼馴染ちゃん。どしたどした〜?」
「木陽だよ〜。覚えてる?」
「ふーん。この子がそうなんだ。」
姉妹達が俺を跳ね除けて瀬川さんに興味津々と言わんばかりに話しかけにきた。
「そうだわ!お見舞いと、日頃稜君がお世話になってるお返しに、これからみんなでご飯行きましょう。」
「「「賛成〜!!!」」」
「べっ別に、美月姉さん達がどうしてもっていうなら私も言ってあげてもいいけど。あっ稜、その袋の中の全部栄養ドリンクだから好きに飲んでいいわよ。」
「えっ、あの、お姉さん達!?」
その後瀬川さんは、姉達に半ば強引にどこかへと連れてかれてしまった。
残された俺は寂しさにさいなまれながら、金恵が買ってきた高級そうな栄養ドリンクを一人飲み、静かに布団で眠りについた。
すまない瀬川さん。瀬川さんの尊い犠牲を無駄にはしません。
俺はこの時決意した。
絶対今日中に体治して、明日学校に行ってやると。
幕間が長くなってしまって申し訳ないです。




