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ヒステリー・パニック!  作者: シュガームーン
9/17

護衛の仕事には危機感を持て 肆

少し速めの投稿です


「自警団なんか、所詮は素人を寄せ集めただけの集団じゃないか」


 その言葉に苦笑いしていた直哉の表情が固まった。隣で紅茶を口にしていた小野も、彼のいつもと違う雰囲気に気付いたのか直哉に目を向けた。


「そっちの方が安上がりするからじゃないか?」

「まあ、確かにな」


 面白そうに2人が見下しているかのように笑い合った。

 

 苦笑いから一転。

 直哉の笑みが危険な黒い笑みに変わり、黒かった目は紅く。


 小野は少し心配そうに隣の直哉を見て、次に目の前の2人を一瞥した後、紅茶へと目を移した。


 雰囲気の変わった直哉に気づいていないのか、黒スーツの2人の罵倒は止まらない。


「渋沢様も使い捨ての駒程度にしか考えていないんじゃないか?」

「こんな若い素人のやつらばかりなんだろうよ」

「ふっ、自警団の質が知れるさ」



 ガチャン!!


「「!」」


 乱暴に直哉がティーカップをテーブルの上に置いた。


 それに男2人は肩をビクリと動かして驚き、目の前の少年を睨む。そこでようやく彼の状態に気づいたようだ。

 先程のおどおどした雰囲気がなくなり、自分達に敵意を溢れさせている。

 その変わりように2人は目を見開き、恐怖を抱いた。


「すいません。自分は新人なもので護衛の細かい仕事は、正直全く慣れていません」


 少年が笑顔で穏やかに話してはいるものの、その不穏なオーラが醸し出ているため、全く意味が無い。

 逆に笑っているせいで、2人は汗を流し、僅かに震えて押し黙っている。


「ですが、俺以外の自警団の皆さんを馬鹿にするのは止めてください。

 いい加減にしないと無理矢理その口を閉ざすぞ先輩方」


 ギラリと紅眼が怒気に包まれれば、2人は自分の身を守るように彼から目を逸らし、まだ部屋にいたメイドに紅茶のお代わりを頼んだ。


「あ、すいません。自分にも頂けませんか?」


 つい数秒前の雰囲気が嘘のように消え、先程までの苦笑いを浮かべた直哉に2人の男とメイド1人が呆気にとられた。


「それとお手ふきか何か、零れたものが拭けるものを貰っても……」

「………あっ、はい! 少々お待ちくださいっ」


 コンマ数秒後、直哉の言葉に反応して動き出すメイドだが、それよりも早く、スッと小野が持っていたハンカチで、荒く置いたせいで零れた紅茶を拭いた。


「えっ、わっ、小野さんいいですよ! ハンカチが汚れますし!」

「すっすいません! すぐにお手拭きをっ…うやあっ!?」

「えっちょっ……メイドさんっ!?」


「((なんなんだ これは))」


 先程まで怒っていた少年はあたふたと慌て、メイドは自分で自分の足に引っかかり転んで、無表情で何も喋らない少女はこんな事態にも顔色一つ変えない。


 思わず元凶らしい少年を睨みたくなる2人だが抑えた。

 どうやら少年の牽制が効いているようだった。












 一方でその隣の部屋では─────


「ははは、貴方の連れてきた護衛の方々は賑やかそうで良いですなぁ」

「そうでしょう? 実は贔屓にしている所に新人が入って来ておりましてねぇ」


 ははは、ふふふ、……と笑い合う2人。

 その間に穏やかさはない。ここでもある意味、戦闘が行われようとしていたからだ。

 片方の傍には黒いスーツを着込み、黒いサングラスを掛けた男が2人。もう片方の傍には灰色の着物と紺色の袴の和装姿の男性。

 腰には長刀を提げている。顔は平然としているが、内心は静かに荒れていた。


「(もっと声と物音を抑えろと伝えろ、小町……!)」


 心の中では毒づくも、決して顔には出さない中岡。素晴らしい。


「────それで、私の企業に是非とも投資して頂きたいのですよ」

「ええ、存じておりますよ。しかし私は将来を見据えた上で投資相手を決めなければならないので、成功確率の低い事業に投資する訳にはいかない……。

 まずは案をお聞かせ願います」

「勿論ですとも。ではお手元の資料をご覧ください」


 目の前で始まる商談に中岡は直立不動で見守る。


 その時───


 ─────────────“警戒!!”


「「「「「!?」」」」」


 頭の中で響く(・・・・・・)小野の声。

 中岡は顔を険しくさせて、突然頭に響いた声に驚く渋沢達を守れるように腰の刀に手を掛け、少し前に出る。


「中岡君、これは……」

「ええ、敵襲のようです」


 顔を険しくさせて中岡へと目を向けた渋沢に答える彼は、気配を探るように視線を兎に角動かしている。


 すると



 ドカアァァアン!!!



 すぐ外へと続く壁が壊された。


 そこから躍り出る黒と白の混じった影と禍々しい殺気。手にはギラリと光る刀。それはまるで宙を舞う獣の如く、


 中岡はその獣に見覚えがあった。


 だから止めるべく、それの前へと駆けた。


「中岡ぁぁああ!!」

「ちいっ!」



  ギィィイン!!


 獣…高杉晋作と中岡の刀が交わり、高く共鳴音を鳴らす。


「やっぱりお付きの護衛はテメェかよ中岡ぁ……! 龍馬はいねぇのか? あ?」


 ギラギラと、血に飢えた獣のような黒の入った紅い目とつり上がっていく頬。


 高杉は強者と殺し合える(闘える)この状況に心の底から歓喜していたのだ。


「目的は何だ…、高杉」


 そんな、目の前の男の狂気を全てはねのけるように冷たく問う中岡。

 ギキキ、と鍔迫り合いは続き、刀は震える。

 一歩も引かない2人、押しつ押されつの殺気。


「無視とは酷ぇなぁ、中岡」

「貴様の話など聞く意味も暇も無いのでな」

「言ったなぁ、おい。刀で語り合おうや」

「中岡君!」


 殺気が充満する中で、いち早く我を取り戻した渋沢が声を上げた。

 まだ3人はガクガクと震えて動かない。


 それに気付いた中岡は渋沢へと指示を飛ばした。


「渋沢殿は3人を連れて離れて下さい! この馬鹿は私が食い止めます!!」

「面白ぇ」

「っ!!」


 刀に入っていた力が空回りして、高杉が地を蹴り、中岡の隣を通過。体制をより低く、地を這うように渋沢へと近づくと



「渋沢殿!!」


「っ!」


「遅ぇよ」



────刀を振り上げた













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