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ヒステリー・パニック!  作者: シュガームーン
10/17

護衛の仕事には危機感を持て 伍

 10話目です! なんか嬉しいです!

 読者の皆様も楽しんでいただけると幸いです!


 とっさに渋沢が胴を守るように両腕を体の正面へと持ってくる。


 刀が肉と骨を断ち、両腕を切断する……─────





 ─────ガキン!!!





 ───かと思いきや、





「あぶ、ないなあ、高杉君……。目的は私かい?」



「ちっ」


 スーツが斬られ、その中から腕が覗く。

 その腕の肌は健康的な、一般の肌の色とは違う。


 硬そうに、赤金あかがね色に、鈍く輝いている。



────渋沢しぶさわ栄一えいいち

異能力『またあめざらしにされるのはごめんだね』


 自身の体を銅へと変える能力だ。


 高杉が思わず舌打ちしてしまう程に硬い。


 後ろからの気配。高杉は地を蹴り、宙へと飛ぶ。僅かに白いシャツを掠った。中岡と目が交じる。


 ───第二擊


 高杉は空中を蹴り(・・・・・)方向を転換(・・・・・)してその追撃を避けた。

 そして、渋沢の目の前に居る中岡へと笑いかけた。


「危ねぇなぁ」


────高杉たかすぎ晋作しんさく

異能力『つばさあらば』


 宙を蹴り、駆けることが可能になる能力。つまり、空中戦は彼の独壇場になる。


「渋沢殿、さあ行って下さい」

「…………」


 渋沢は少し顔をしかめて高杉を見る。中岡の腕を疑っている訳ではない、しかし他の3人を逃がしている時間があるのか、とおかしな話だが敵へと目で問いかけた。


 その視線に高杉はニッコリと笑って、どうぞ?とでも言うように手を動かす。その姿と仕草は中岡にしか用など無い、という意思が表れている。


「……悪いね。中岡君と二人きりにしてあげる方に協力しよう」

「そりゃありがてぇ。心置きなく殺れるぜ?中岡」

「貴様の相手なんぞ願い下げだが、話を聞かせろ。答えれば僅かな間だが……


 全力で御相手しよう」


 そう告げ、中岡の鋭い殺気が高杉を定め貫く。

 中岡の申し出とその殺気を全身で受けてなお、彼は引かない。むしろ待ってました、と言わんばかりに頬を吊り上げた。

 ……が、何を聞かれるのかと首を僅かに傾ける。


「……内容次第だ」


 中岡の冷たい殺気と高杉の禍々しい殺気が混じり合っている。


「まさか1人で乗り込んで来たわけでは無いよな?

 貴様のことだ、経験の浅い奴等も混じった大人数ではなく、1人で多大な戦力を持つ少数精鋭……。

 貴様も含め……まあ、5人程度かそれ以下だろう」

「それ以上で来ていたらどうするつもりだ?

 何度も刀を交えているから分かるだろうが、俺は気まぐれだ。

 混乱に応じて大量の部下共が押し寄せてきたら?


 その未来は見えてないのか?」



 本心なのか、それとも惑わす戯れ言なのか、邪悪に笑ったままの高杉から読み取ることは難しく思えたが、


「ああ、見えていないな」


 間髪入れず中岡は答えた。


「……言い方が悪く失礼だが、貴様がわざわざ無能を好き好んで使うとは想像できん。


 では問うが、貴様と共に来た奴等は何が目的だ」


 刀を体の正面に、足は肩幅よりも遙かに広く、答えた瞬間に戦闘が始まるとでも云うように。


 その姿を見て、高杉はふん、と鼻を鳴らして舌なめずりをする。そして答えた。


「2人の目的は俺の目的だ。


 ───気に入らねぇ、面白くもない政治で出来た此処を壊す。


 ただそれだけだ」


 同じく高杉も構えを取った。

 お互いを睨み合い、その間に相手の行動を予測して定め、対策と攻略を立てる。


 思考が終わる、その瞬間に2人は刃を交え、激しく打ち合っていた。













「げほっ…ごほっ…! ……がっは、……うえ、なんか入った……」


 周りがさっきの部屋と違う、背中が異様に痛い、壁などがガラガラと音を立てて瓦礫と化していく。


 さっき、何があった? なんで俺は……?


 何が何だか分からず頭が働いていないことが分かっている。


 落ち着け、俺。一度深呼吸しよう……



「ごっほげほっ!!」


「っ……!」


 近くから誰かの声……男性かな、多分。

 ……が聞こえてきて思わず体を守るように両腕を体の前に持ってきた。

 でも、心配は要らなかった。


 あの黒スーツの護衛の人だったから。


 …………ちょっと安心した、かも。

 ほっと一息して、彼に手を差し出そうと立ち上がった。


「大丈夫ですか?」

「ん? ……ああ、君か。ありがとう」


 手を差し出せば、お礼を言って手を取ってくれた。


 丁度良いからこの人から何が起こったのか聞こうと思った。


 そうすれば何が起こったか、思い出せるかも知れないから。


 ───その心配も彼の洩らした独り言で無用になった。


「くっそが、あの金髪銀髪共が……!」

「………あ…………………!」


 そうだ、思い出した。

 お茶を飲んでいたら突然壁に穴が開いて、


 そこから確か……




「ちっ……。ったくよぉ、高杉さんは人使い荒いんだよ。これだから戦闘狂は……」

「「!」」


 恐らく俺が飛ばされて作ったであろう、壁のいくつもの穴の向こうから小さな瓦礫を踏み壊し、現れたのは目を引く長い銀髪を持つ女。

 白のトップスの上から紺色のカーディガン、少しひらっとしたスーツのズボン。

 白く繊細そうな、きめ細かい肌をしたその手には、藍色の帽子を持っている。そしてそれを深くかぶった。


「まあ、これもあの人の為、か……。なら仕事はしねぇとなぁ」


 帽子の下から見える目は黄金色こがねいろに輝いて、細められた。口元は小さな三日月の形になり、何か呟いている。


 彼女が俺達にも聞こえるように声を張り上げた。


「お初にお目にかかるな護衛共。

 オレは反乱軍 遊撃部隊『山塊さんかい』所属の


 二葉亭ふたばてい四迷しめい


 女はニタリと妖しげに笑って、首を親指で切るような仕草をした。


「じゃあくたばれよ」


「っ!!」


 目を見れば分かった、初めから、今も。


 彼女は強い。


 少なくとも俺よりも。



 俺はすぐに逃げようとした。そして、中岡さんの所に行こうとした。彼ならあの女にも負けないはずだと思ったから。


 そう判断して、俺は傍の男の人を連れて逃げようと……



「なめるなよ、青臭ぇ小娘が!!」

「っ!? ちょっと!!」


 勝ち気な笑みに苛立ったのかなんなのか、懐から拳銃を取り出し、二葉亭と名乗った女に発砲した。


 頭の中で警報が鳴った。すぐに手を伸ばす。


「やめ───」


 俺が止める前に、


「オレが女だから何だよ、なあ? 雑魚」


 目の前の人の頭に、1本のナイフがめり込んで貫通していった。


 彼を受けとめた。

 額に縦に長く大きい穴が空いて、赤いものや、頭の中身が漏れ出ている。


 女を見た。

 彼女にも銃弾が撃たれたはず。

 見てみれば、彼女の目の前に1つの銃弾が止まっていて、カランと音を立て、地に落ちた。


 その顔は笑っている。嘲るように、貶すように。



「さて次は、」


 なんでもっと速く動けなかった、助けてやれなかった。


 どうして、どうして俺は………!!!


「お前だな」


「てめぇっ!!!」



 人が死んだ悲しみやら、殺した相手への怒りやら、救えなかったもどかしさやら、後悔やら……



 俺の心の激情がごちゃごちゃに混ざっている。正直何を考えているのか、自分でもよく分からない。


 ただ俺は、目の前の女に駆けた───



 



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