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神化論 after  作者: ユズリ
旧時代の遺産
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旧時代の遺産 21

「わ、忘れてないよ! 忘れるわけないでしょう、早くリリンを助けないといけないんだから!」

 

 慌ててイリスがそう弁解すると、ウネも神妙な顔つきで頷く。だがアーリィは既にモロの人形を買いに、うさこを腕に抱えたまま近くの店に買いに走ってしまっていた。

 アーリィの自由さはもうどうしようもないレベルなので、取りあえず彼女には今気が済むまでモロの人形を買ってもらうことにする。しかしそれ以外の人については大きな都市で浮かれてはしゃいで目的を忘れないようにと、ローズはしっかりと皆に注意を行った。

 

「そうだ、リリンちゃんの病気を治す為にここに来たんだからな。早く治療法を盗み……いや、治療法を調査しに行くぞ」

 

「はっきり泥棒しに行くって言っちゃえば?」

 

 犯罪しに行くとこを何かに配慮して誤魔化すローズに対して、マヤがずばりと言ってしまう。ローズは「一応そこは濁しておかないと」とマヤに返した。

 

「んで? どこに盗みに入るんだっけ?」

 

「ユーリ、はっきり言うな。……えっと、中央医学研究学会の建物だよな? どこにあるんだろう……」

 

 ローズはそう言うと、辺りをぐるっと見渡す。だが広い都市なので、見渡したくらいで目的の建物が見つかるはずも無い。

 

「誰かに聞いてみたらどうだ?」

 

 ジュラードがそう提案し、ローズは「そうだな」と頷いた。

 

 

 

「あぁ、その建物だったらあっちの大通りを真っ直ぐ行って、途中に大きな聖女像のある広場があるけども、その裏にあるよ」

 

「あぁ、そうなんですか。ありがとうございます」

 

 アーリィがモログッズを買っていた店の店主に中央医学研究学会の施設の場所を聞いたローズは、話を聞いて店主に礼を告げる。

 店主は流暢な共通語でローズの問いに答えた後、モロのぬいぐるみを幸せそうな顔で抱きしめるアーリィと彼女をまじまじ見比べてこう言った。

 

「しかしあんたといいこのお嬢さんといい、聖女様にそっくりだね」

 

「あ、あはは……よく言われます」

 

「姉妹なのかい? 二人してアリア様のいとこか何かとか?」

 

「えーっと……まぁ、そんなものです」

 

 前世の自分は一体どこまで有名人だったんだ、と、店主の男の話を適当に受け流しつつローズは思う。

 アリアは世界各地に出没したらしいが、各地にある聖女像や聖女の話を聞くたびに、こんな広範囲に存在が知れ渡ってる自分ってどんだけ旅好きだったんだろうと、時々本気でそれを考えてしまう時がある。”この姿”になってからは特にだ。それとも旅が好きだったのは、共に旅をしていたマヤの方だろうか。あるいは……。

 

「ローズ? どうした、ボーっとして」

 

「え? あ、なんでもない」

 

 ジュラードに声をかけられ、ローズははっとした様子で彼に返事をする。

 

(……ミルフィーユ)

 

 そういえば、かつての自分はもう一人大切な人がいたのだと思い出す。

 きっと今の自分ならば彼を死なせることもなかったのだろうかと一瞬ローズは考え、それが不毛な思考と気づいてその考えを頭から消した。

 

 

 

 店の店主に教わったとおりに街中を進むと、確かに言われたとおりの聖女像のある広場があり、その裏に大きな灰色の建物を見つける。

 

「あれが学会の建物か?」

 

 ユーリが灰色の建物を見ながらそう問うと、マヤが「おそらく」と答える。

 

「あそこに……モロがいるんだっけ?」

 

「違う違うアーリィ、モロを手に入れに来たんじゃないよ、俺たちは」

 

 ふかふかフワフワのモロのぬいぐるみを抱えたアーリィは、すっかり頭の中をモロに占領されたらしく、真面目な顔でよくわからないことを言う。それにちゃんとユーリが訂正を行い、彼はイリスの方を見た。

 

「で、お前ホントにちゃんと出来んのかよ?」

 

 疑わしい視線を向けながら自分にそう聞いたユーリに、イリスは若干気まずそうな表情を返す。が、彼はプライドがあるのか「出来るよ」と答えた。

 

「へぇ~。あの中の人に片っ端から術かけてくんだっけ? ホントに出来んのかねぇ」

 

「うるさいな、そもそもやらないと進入出来ないんだし、あと成功させないと妖精さんが怖いし……やってやるんだから」

 

 微妙に自信なさげな表情ながらも強気な返事を返したイリスに、ユーリは嫌な笑みを浮かべて「まぁせいぜい頑張れよ」と馬鹿にした態度を見せる。イリスは怖い顔でユーリを睨み、「んなに心配なら、てめぇでリハーサルしてやろうか?」とドス低い声で囁いた。

 

「おまっ、止めろ! 結婚迫ってくる汗だくの男たちはもう沢山だ!」

 

 いつかの実験台でのトラウマを思い出し、ユーリは顔面蒼白となって震える。そんなユーリをイリスは鼻で笑った。

 

「しかし真面目な話……本当に先生、出来るんだろうか」

 

 ジュラードが心配そうな眼差しを向けて聞いてくるので、イリスは小さく笑って「ま、やるだけやってみるよ」と答える。

 

「そうね、やるだけやってみてダメだったら……それはまた、その時に考えましょう」

 

「そうだな」

 

「きゅいいぃ~」

 

 アーリィに人形と一緒に抱きかかえられたうさこが、若干暑苦しそうな様子でローズと共に返事をする。そうして彼らは目的となる建物へと向けて歩き出した。

 

 

 

「さて、ついに目的の場所の目の前まで来たわけだけど……」

 

 『中央医学研究学会』と書かれた立派な建物看板のすぐ近く、建物の入り口付近の物陰に隠れたジュラードたちは、身を潜めながらこれからの侵入作戦についての確認を行っていた。

 

「ここからは便利道具……じゃない、イリスに主に頑張ってもらって堂々と正面からの突破を行います」

 

「ちょっと、便利道具って……」

 

 マヤの正直な一言にイリスが苦い顔をし、マヤは「ちゃんと言い直したじゃない」とさして気にせずに話を進める。

 

「で、思ったんだけど、こんなに大人数でゾロゾロと行くのはやっぱりちょっと目立ちすぎると思うから、ここは数人の厳選なるメンバーを選んで進入しようじゃないかとアタシは思うんだけど」

 

「え、今更それを提案するのか……?」

 

 ジュラードのごもっともな突っ込みをマヤは「うっさい」と一言で却下し、彼女は「そういうわけで不法侵入作戦のメンバーを決めましょう」と言った。

 

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