再びの旅立ち 13
「今度は勝手にいなくなるわけじゃないし、イリスも一緒だからそんなに心配はしないけどね」
「す、すみません……」
ユエの言葉に対して気まずそうに野菜を食べながら返事するジュラードの姿を、ローズは横目で見ながら少し可笑しそうに笑う。ユエはそんな彼女に今度は声をかけた。
「皆さん、ジュラードとイリスのこと頼みます」
「あ、はい! 勿論! 任せてください!」
ユエに頼まれ、ローズはちょっと緊張した様子でそう返事をする。そんなローズの様子を微笑みながら見つめ、ユエはもう一度小さく「お願いします」と言った。
「大丈夫よ、任せて。こき使う事は確かだけど、でも大事に扱うから」
「マヤ、そんな人をモノのように扱う発言はどうかと……」
マヤのぶっちゃけた発言にローズは苦い顔をし、イリスも困った笑顔で「出来ればお手柔らかにお願いします」とマヤに言う。そして彼はユエに「それじゃあ私は、リリンのところ行くね」と言った。
「リリンもそろそろ起きてると思うし、今日は調子良いみたいだからきっと夕食食べれると思うからさ」
「それはいいんだけど、あんたもまだ食べてないだろ。あたしがリリンのとこ行くよ」
「ううん、大丈夫。リリンと一緒にあっちで食べてくるから」
「そうかい? 悪いね、食事の準備も全部任せちゃってるのに」
「いいよ、気にしないで。ユエはお仕事してきたんだから、ここでゆっくりご飯食べて休んで」
エプロンを脱ぎながらそう笑顔で返事するイリスに、ユエは申し訳なさそうな笑みを向けながら「ありがとう」と返す。そんな彼女に、イリスはやはり笑みを返した。
そして今まで黙々とご飯を食べていたアーリィが、二人のやり取りを見てふと思ったようにスプーンを加えたままこう呟く。
「二人は……夫婦?」
「なっ!?」
「え?」
アーリィの発言に物凄い驚く反応を返すイリスと、笑って「そう見える?」と穏やかに返事するユエ。二人の反応の差に何かわかりやすいものを感じながら、ジュラードたちはアーリィとユエたちの会話を聞いた。
「うん……恋人同士だとは思ってたけど、もしかして夫婦なのかなって今思った」
「ち、違うよ! 恋人でもないから! 」
物凄く照れた様子でアーリィの勘違いを否定するイリスに、ユエはちょっといたずらっぽい表情で「そんなに力いっぱい否定しないでもいいじゃないか」と言う。
「そんなふうに否定されると傷つくよ。イリスはあたしのこと嫌いなのかい?」
「そ、そんなわけないって! ……あっ! でも、別に……えっと……否定したことは謝る、ごめんね……えっと……」
喋れば喋るほどどんどん墓穴を掘っていく自分の状況に、イリスは僅かに赤面しながら困惑し果てる。そんな彼の様子を、ユーリは心底驚いた様子で眺めていた。
「おぉ、なんだ……あいつも普通に人を好きになれたんか。しかも超照れてるぞ、あいつ……物凄い意外な光景だ」
「はは……でもいいんじゃないか、彼とユエさん。お似合いな気がする」
ローズが笑いながらそう言うと、ジュラードも「俺もそう思う」と自然と呟きを漏らす。それを聞き、イリスは「ジュラードまで人のことからかって」と恨めしそうに呟いた。
「え? いや、からかったつもりなんて……ただ、先生たちが一緒になったらなんていうか……いいなぁって思っただけで」
照れたイリスに睨まれたジュラードが困った表情でそう自分の考えを正直に言うと、フィーナがジュラードに向けて「お姉ちゃんせんせぇ、ユエ先生とけっこんするの?」と無邪気に聞いてくる。どんどんと悪化して広がっていく話に、イリスは病気が治ったというのに頭痛がして頭を抱えた。
「お姉ちゃんせんせぇ、ユエ先生のお嫁さんになるの?」
「フィーナ、違うよ! お嫁さんは ユエの方だから!」
「と言う事は、やっぱり結婚はする気なのね」
「え?! ち、ちが……っ」
マヤの意地悪い突っ込みに、イリスはついに怒って「もういい加減にしてくれない?」とドス低い声で言う。彼のその様子に、ユエは楽しそうに笑って「ごめんごめん」と言った。




