表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神化論 after  作者: ユズリ
光の裏側
108/494

光の裏側 8

「イリス……あなたが死んだら私も死にます……」

 

「ラプラ、縁起でもない事は言わないほうがいい」

 

 イリスの傍で悲痛な表情となるラプラに、ウネが静かに注意を告げる。しかしラプラは本気なようで、ウネに「そのときは後の事を頼みますよ」と言った。

 

「私の呪術の研究結果などは全てあなたに託しますので」

 

「ラプラ……」

 

「……それじゃ彼の事はラプラに任せて、さっきの話の続きをしましょうか」

 

 妹を助けたい一身で旅立ったジュラードの想いを無駄にしない為、それに今のラプラの覚悟を実現させない為にも、早急に病の原因と治療法を見つけようと、マヤがそう提案を告げる。彼女の言葉にジュラードは「あぁ」と頷いた。

 

 

 

「それで、さっきの話の続きなんだけどね」

 

 広間に戻ったジュラードたちは、早速そう口を開いたマヤの話を聞く。ただし先ほどと若干メンバーが変わり、イリスの傍に残ったラプラの代わりにアーリィがユーリの隣に座っていた。

 

「レイヴン先生の話を聞いて思い出したのよ。旧時代にもね、似たような病気があったってのを。だからアタシはこれが”禍憑き”の正体なんじゃないかって思うんだけど」

 

「何だ、その病気は」

 

 ジュラードが急かすようにそう口を開くと、マヤはこう答える。

 

「LMSっていう病気よ」

 

「LMS?」

 

 言葉を繰り返すユーリに、マヤは「そう」と頷く。

 

「正式な名称はたしかレーヴァ・ミラ症候群。旧時代にもゲシュ特有の病気がいくつかあって、その一つがコレ。症状は頭痛や吐き気や発熱など、だったかな。体に痣が出るかどうかは忘れたけど……」

 

 マヤはうろ覚えの知識を何とか思い出して説明を続ける。

 

「で、この病気の原因はゲシュの持つ免疫細胞の一部がマナに異常な免疫反応を起こすことなのよ」

 

「それってまさに”禍憑き”じゃないか」

 

 マヤの話を聞き、ローズが呟く。レイヴンも興味深そうに「そうですね」と頷いた。

 

「そう、だからアタシもピンときたの。この病気はゲシュなら誰もがなる可能性があるから、アタシの暮らしてた国じゃゲシュは病院での検査が推奨されててね。アタシも肉体はゲシュだったから一応検査を勧められて……」

 

 そこまで言いかけ、マヤはジュラードやユエが怪訝な顔で自分を見ているのに気づく。自分の事情を詳しくは知らない人に対しては、この話は色々な意味で説明が長くなりそうなので、マヤは言いかけた話を途中で止めて説明を続けた。

 

「まぁとにかくそういう病気が昔はあったのよ。マナが減少したことで病気も自然となくなったみたいだからすっかり忘れてたけどね」

 

 ”禍憑き”とマヤの今説明した病気は、かなりの部分が類似する。となると”禍憑き”とは、旧時代にはあったゲシュ特有の病ということで結論付けていいようにジュラードには思える。と、なると次に知りたい事は一つだ。

 

「その病気の治療法は?」

 

 ジュラードがそうマヤに問う。するとマヤは首を横に振り、「だから、何度も言うけどわからないのよ」と答えた。

 

「アタシはその病気にならないタイプだったみたいだから、あまり興味なかったのよ。その病気になる人も稀だったし。知ってるのはそういう病気があったってことくらい」

 

 答え、その後に「多分治療も予防も何か薬があったとは思うんだけど……」とマヤは呟く。

 

「でもそれがどんな薬だったかまでは……原因の一つがマナだから、治療薬は魔法薬系なんだとは思うんだけどね」

 

「やはり旧時代の医術の書かれた本等で調べて見ないと、治療法はわからない病なのでしょうか……?」

 

 レイヴンの呟きに、マヤはなんとも言えずに沈黙する。

 旧時代の情報はごく限られた場所にしか保存されていない。そしてそれは非常に貴重な品として、厳重に保管されている。医術書が保管されている場所まで自分たちが行ったとして、はたしてその中身を見せてもらえるだろうか。

 

「それ以前に、保管場所が遠いしなぁ……」

 

 考えながら独り言を呟くマヤに、ローズは心配そうな眼差しを向ける。あと少しで命が救えるかもしれないのだ。何か自分に出来る事はないのだろうかと、そう考えながらローズはマヤを見つめていた。

 

 

 

 

 ”禍憑き”という病の正体がほぼ判明したが、しかし結局治療法はわからず、そしてどうやって治療法を見つけるかも明確に答えが導き出せぬまま、その日の夜は解散となる。ユエはレイヴンを家まで送り届け、マヤたちは引き続き”禍憑き”の治療法を見つける方法を考えながら孤児院に留まることになった。

 

 子どもたちが就寝した時間、孤児院は夜の静寂に包まれてひっそりと静まり返る。そうして静かになり、ローズたちもそろそろ体を休めることにした。

 ユーリはジュラードやトウマと同じ部屋で寝る事となっていたが、ローズとアーリィは寝る部屋が無いので、二人はマヤも含めて皆が今日集まって話をした広間に布団を敷いて寝ることになっていた。

 

 

「きゅっきゅぅ~」

 

「あれ、うさこ」

 

 寝る準備のために布団を敷いていると、どこからかうさこが現れてローズたちの元にやって来る。

 

「きゅいぃ~」

 

「うさこも一緒にここで寝るか」

 

 ローズがうさこを抱きかかえながらそう聞くと、うさこはぷるぷる震えながら「きゅうぅ」と返事した。

 

「アタシ以外がローズと一緒の布団で寝るなんて……うさぎもどきじゃなかったらぶん殴ってるところよ」

 

「うさこに嫉妬するのは止めてくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ