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紅の御簾とき  作者: 秋華水零
第六章 決断
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相談

 数刻後、樹衣に案内された部屋で寛いでいたわたしのところに、言葉通り菻明(リンメイ)が訪ねてきた。ちなみに、樹徒(ジュト)鈴桜(リンヨウ)は樹衣に預けている。

「菻明、どうしたの?」

わたしが尋ねると、菻明は遠慮がちに切り出した。

「その、雲風(ウンプウ)はただの平民でしょう?でも私は世間的に見れば皇族である立栄(リツエイ)お父様の娘で、身分が釣り合っていないのです。鈴楽団にいた時は何の問題もありませんでしたが、こうして皇宮に戻ってきた以上、その差は無視できないものになってしまいました」

菻明の悩みはなるほどと頷けるような内容だった。その話はわたしにも少し当てはまる。わたしの母・美栄(ミイエイ)は市井の娼館の生まれ。娼婦では無かったけれど、卑しい身分には間違いない。そんな母の血を引くわたしが皇族の妻になるには周囲の反感を買うだろう。そんなことを考えていたわたしに、菻明が言った。

「私たちには黎蘿という大事な娘がいます。今更離縁などできません。私たちは、どうすれば良いのでしょうか……」

菻明は俯く。でも、菻明が気負いすることはないと思う。だって、雲風は菻明にぞっこんで、菻明を手放すくらいなら多分自分から死ぬくらいすると思うから。だけど、いくら雲風が死ぬって言っても世間からしたら「どうぞご自由に」だろう。そうならないための解決法を菻明はわたしに聞いている訳で。どうしよう。困った。

「あっ……」

思いついた。最後の手段だけど。嫌だけど。本当に嫌だけど。あの人なら、解決できるかも。でも、あの人に言うってことは、同時に弊害(リスク)も背負うことになる。だって、あの人に言ってしまったら即離縁になるかもしれないから。

「ねえ、菻明。わたしの本当のお父様……立栄様に相談するのはどうかしら。あなたと立栄様の仲が良好なのであれば、だけれど」

そう。立栄は菻明の実の父だから、立栄が(オッケー)を出しさせすれば解決するのだ。そう考えてわたしは続ける。

「前に一度立栄様に会った時、わたしの思い違いじゃなければわたしへの印象は悪くなかったと思うの。だから、二人で一緒に相談に行かない?」

わたしの提案に、菻明は目を輝かせた。

「素晴らしい提案です!幸いなことに、父との仲は良好です。それもこれも、私の将来を考えて父に愛されるようにしてきたお母様のおかげです!」

菻明の母というと、立栄の愛人で反逆者の娘だ。どういう経緯かは知らないが、反逆者の娘から皇族の愛人にまで上り詰めたのだから、よほど強かな人だったのだろう。

「とりあえず、諸々のことが落ち着いてから樹衣に頼んで面会ができるようにしましょう。だから、安心して良いわ」

わたしがそう伝えると、菻明は花開くように笑った。

「ありがとうございます、お姉様」

菻明はそう言って部屋を去っていった。それと入れ替わりに、樹徒と鈴桜、更には樹衣が部屋に入ってくる。

「樹衣。どうしたのです?」

わたしが尋ねると、樹衣が悪戯っぽく笑った。

「美美とこの子たちに、来て欲しい部屋があってな」

樹衣が子供たちの肩に手を置いて言った言葉に、わたしと子供たちは首を傾げるしかなかった。とりあえず手招きした樹衣に付いていくと、辿り着いたのは大広間だった。樹衣が前に立って扉を両手で開ける。大広間の中を覗くと、懐かしい面々が揃っていた。

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