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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第四章 楽団
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空洞

 樹衣サイドです。

 俺、宮都の東宮である樹衣は全てにおいて完璧だと言われている。だが、そんなことは一切ない。あの旅の行きの途中からこの瞬間まで、そしておそらくこの先も、心に空いた空洞のせいで仕事の質や回転率が落ち続けるだろう。

美美(ミイミイ)……」

俺が執務室で呟くと、乳母であり侍女の舞雪(ブセツ)が哀れむような目でこちらを見てきた。自分も寂しいだろうに、人の心配をできる舞雪はやはり俺よりも経験を積んでいると実感する。一年と少し前、恋人・美美、その妹と従者が失踪した。自分のどこがいけなかったのか考えた俺は、すぐに思い付いた。美美が記憶を失う前の俺の態度だ。ひどく冷たい態度を取り、振り払って突き飛ばしたこともある。あの怯えたような透き通る深紅の目は、記憶を取り戻して俺を視界に映さなくなったのだ。記憶を失ったことを良いことに、謝りもせず調子に乗って恋人になんてなったのが悪かった。最初からしっかり説明して謝っていれば、彼女は今もこの部屋にいて、俺が話しかければ答えてくれたはずだ。これは完全に自業自得というものだろう。人を遣って美美を捜索させたが見つからなかったそうだ。その報告を何度も聞くうちに仕事の質が落ち、回転率も落ちた。夜、寝台の上であの細い体を抱けないのが辛い。当然、睡眠の質も悪くなり、目の下には濃い隈ができていて、毎朝舞雪に化粧で隠してもらっているという有り様だ。こんな俺の元には、美美も帰ってきたくないだろう。もしも、もう一度彼女に会えたら、誠心誠意謝ろう。俺はそんな決意をしながら、また書類を読み始めた。

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