選別
こうして、婚約とまではいかなくとも、恋仲になったわたしたちは、夜に逢瀬を重ねた。昼間に恋人らしきことをしてしまうと、周りの人間…特に皇帝がうるさいからだ。樹衣さまはわたしの気持ちを知るまで恋仲のままでいようと言ってくれているので、ここで樹衣さまが婚約してしまうと何か気持ち悪い。すっきり終わらないからだ。
「はあ…」
「どうした、美美。何かあったのか?」
後ろから樹衣さまが話しかけてくる。
「はあ…」
おや。あちらもため息を。
「樹衣さまこそ、何かございましたか」
「実はだな…今度、俺が帰ったら都で美女選びを開催することになってな。宮都の美女100人を央都に集めて俺に美女を選ばせて、最後まで残った美女を俺の妻にするとかなんとか?」
「それ、発案者誰ですか?今から武術でひねり潰してきてもよろしいでしょうか?」
美美はニコニコ笑顔で物騒すぎることを言う。それになれた樹衣は苦笑する。
「駄目に決まってるだろ。発案者は皇帝だぞ?」
「あら!そうだったのですか。確かに、樹衣さまに結婚を迫っていたような覚えがありますね!」
「おいおいおい。何で嬉しそうなんだ。俺のこ、こ、恋人という立場から下ろされるかもしれないんだぞ?」
「あ!すみません!今まで散々樹衣さまに色々勝手なことをされていましたので、癖が直らず!」
美美が相変わらずニコニコ笑顔で言うと、樹衣が不意に抱き締めてきた。
「…今はもう色々勝手なことをしていないだろう」
「あらら。今絶賛勝手なことをしていらっしゃいますよ?」
「これくらい許してくれ。恋人だろう?」
樹衣さまはわたしの肩に顎を乗せる。なんだかかわいい。
「年下のくせして、勝手なことをしないで下さい。勝手なことをするのを許されるのは、わたしです」
そう言ったわたしは、樹衣さまの背に腕を回し、抱き締める。
「東宮の寵愛、しかと承りました」
でも…樹衣さまの恋人じゃなくなるのは、ちょっと寂しいかもしれない。それでも、続く限り、この、人の愛を一身に受ける、幸せな日々を過ごしたい。
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