宴
何でこうなる。わたしは、樹衣の婚約者選びの宴に参加していた。それも、和陽さまの後ろに控える侍女役だ。右に皇帝、左に和陽さま、皇帝の右に樹衣だ。
「ん……。」
「あら?どうしたの?」
「何でもございません。それより和陽さま、なぜ、わたしなどがついているのです?」
ああ、衣装が窮屈極まりない。それに、顔にベールがかかっている。周りを見たところ、ベールを被っているのはわたしだけだ。
「それに、なぜわたしだけベールを被っているのです?」
わたしの言葉に、和陽さまは耳飾りを少し鳴らして笑う。
「あら、自分で分かっていないの?あなたは美しすぎるから、男たちが騒ぐでしょう?」
「ですが、邪魔で仕方ありません。外します」
美美はそう言って和陽が止めるのも聞かずにベールを取る。すると、一気に男たちの視線が集まる。
「おお、美しい女性だ…!!」
「本当だ!傾国の美女がいると聞いたが、あれほどとは」
「いや、あれは化粧をしているから美しいだけではないか?」
「ほらね、言ったでしょう?男たちが騒ぐって。ここでいい人がいないか探しなさい」
「無理です。男は嫌いです」
わたしが少し表情を硬くして言っただけなのに、男たちは気持ち悪い顔をする。まるで、娘のツンツンしたところがかわいいと言いたげな父親の顔だ。
「はあ、この女は私の恋人だ。憧れないでもらいたい」
「はっ!?樹衣さま、いつ誰があなたの恋人になったというのですか!?」
「うっ…。」
樹衣は図星だったようだ。気まずげに視線を泳がせる。
「ですが、わたしに憧れないでもらいたいのは事実でございます。わたしは男嫌いでございますゆえ」
「それはもったいない。せっかく美しいのに」
「わたしの父・安喜は女児しか産めなかった女を子と共に水路に沈めます。わたしのことを逃がそうとした兄も殺しました。母が亡くなってもすぐに新しい女を迎えたのです。ですから、わたしは男嫌いです」
美美はそう言い放つと、宴の間を出た。
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