#25〔死戦を前に〕
邪竜戦を前に俺は早速ログインする。
ふと声が聞こえた。
「ドゴゴルさん……本当に行くの?」
言ったのは石巨人の中では小さい恐らく少年だ。
「あぁ、行くさ。それにな、死ぬと決まった訳ではないんだ」
「え?」
「邪竜を倒すなんて言ってるバカを連れて行くからな」
「誰!?誰がそんなことを言ったの!?邪竜は僕ら石巨人に勝てる相手じゃない!」
「石巨人じゃないさ。一昨日たまたま通りかかったバカさ」
「よ。バカが来たぞ」
「来たか、こいつが世界一のバカ、カジだ」
「うげ。なんだこの気持ち悪いのは」
「カジという。邪竜を倒す者だ」
「無理だよ……」
静かに少年は言う。
「大丈夫だ。俺は強いからな!」
「まぁ止めはしないさ」
そう言うと少年は静かに去っていった。
「遂に明日だ」
ゲーム内時間で明日、である。
「そうだな」
「勝てるのか」
「勝てるさ」
「もう、何も言わない」
「そうだな。それがいい」
俺は手に持つ白金で出来た短剣に視線を落とす。
これは採掘に向かわせたコックローチが見つけた中で1番いい金属で出来たものだ。
勝てる——だろうか。
俺は採掘に出ていた眷属を亜空間に戻し、戦闘に備えるよう命令を出した。そして地謀虫には邪竜のいる場所の地形を調べてくるよう言ってある。
できることは全てした。
——死戦を前に、俺は覚悟を決めた。