表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンバランサー・ユウと世界の均衡  〜唯一無二の属性<アンバランサー>を持つ少年が世界を救う!  作者: かつエッグ
第一編 「エルフの禁呪」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/186

その人は、お米を食べた。


 ナハティガルさんと別れ、旅籠に帰る途中、ユウは言葉少なげだった。

 なにごとか考えながら歩く、ユウの横顔を見ながら、わたしの中でも考えがめぐっていた。


「…びっくりしたね、ライラ」


 ジーナが言う。


「あの人、アンバランサーの子孫だったなんてね…あれ? ということは、あの人、ユウの親戚?」

「違うよ、ジーナ。むかし昔に、この世界にきた、別のアンバランサーの子孫ってことだよ。だから、ユウさんとは、血の繋がりはないの」

「そっか…」


 ジーナは思いついたように


「でもさ、子孫がいるってことは、そのアンバランサーの人は、この世界のだれかと結婚して、子どもができたってことになるよね」

「うん、そうなんだよね…」


 わたしは、ナハティガルさんと話し合うユウの様子を、じっとみていたのだ。

 何を話しているかは、この土地の言葉で話していたから、そのときはよくわからなかったのだけど、話の途中で、おどろいたユウが思わずつぶやいた「この世界で生きたアンバランサーがいたんだ」という言葉だけは、わたしにもわかった。

 考えてみれば、この世界に使命をもって送り込まれたアンバランサーが、使命を終えたとき、どうなるのか、ということを、わたしたちは知らない。

 ユウの口からも、それは聞いていない。

 みんなでヴリトラ神様の意図について話をしたときに、わたしは、旅人のたとえを使ったのだけれど、ユウが旅人だというのならば、ユウはやがて、わたしたちを置いて、自分の故郷に帰っていくのだろうか?

 そのつもりだったから、ユウは、この世界で生きたアンバランサーがいるということに、おどろいたのではないか?


 ユウが、いつか、わたしたちのもとから去っていってしまう!


 そんな可能性を考えると、胸がきゅっと苦しくなってしまう。

 もし、そんなことになったら…わたし…どうしたら…。

 気づくとユウが、わたしの顔をじっとみている。

 まるで、わたしの考えがぜんぶ、わかっているかのように。


 ユウさん、あなたは…?


 聞けばいいのだろうけど、そうしたら、きっと、ユウは、いつものように答えてくれるのだろうけど…。


(心配するな、娘よ!)

「うゎっ!」


 またも、いきなり頭の中に響いた声に、わたしは飛び上がった。


 ヴ、ヴリトラ神さま?


(娘よ、お前の心配はもっともだ。だが…)


 と声は続く。


(われわれが、そうはさせないから安心するがよい)


 われわれ?


(わたしや、ガネーシャだ。ユウは面白いやつだから、この世界にずっといてほしい。その点では、わたしとガネーシャの意見は、完全に一致しているのだ)


 ヴリトラ神さまの、ふくみ笑いが頭にひびき、


(ま、われわれがどうこうしなくても、たぶん、だいじょうぶだろうがな…)


 そのとき、頭にルシア先生の顔がちらっと浮かんだのはどういうわけなのか。

 そのことばを最後に、ヴリトラ神さまは、またどこかに去っていった。

 まったく、驚かせてくれる人、いや人ではなくて、神様である。


「ねえ、ユウさん」


 ジーナが、屋台を見ながらユウに話しかける。


「なんだい?」

「あのめっちゃくちゃ甘いお菓子さあ、わたしたちのところでも作れないかなあ?」

「そうだなあ、小麦粉はあるし、砂糖もなんとかなりそうだな…あとは、あの甘いシロップと、スパイスか…」

「じゃあさあ、ここで、材料たくさん、買って帰ればいいんじゃない!」

「そうだね、みんなも喜ぶかな。甘くてびっくりするだろうなぁ、きっと」


 ジーナとユウは、わたしの気も知らず、そんな会話をつづけている。

 ユウのその様子をみていると、とても、この人がわたしたちのところからいなくなるとは思えない。

 思えないのだけど…。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「ああ、とうとうついに…」


 ユウが、感極まった声を出した。

 旅籠の夕食である。

 わたしたちの前には、いろとりどりのこの国の料理が並んでいる。

 何かの肉を、スパイスにひたして焼いた、真っ赤な料理。

 いい匂いのするスープ。

 以前、ユウが作ってくれた「かれえ」。「かれえ」は、種類を変えて、何皿もならんでいる。黄色いものから、緑色のものまである。

 焼きたての、平らなパンのようなもの。これはびっくりするほど大きく、バターと蜂蜜がたっぷり塗られている。

 素焼きの容器に入った、冷えた白い飲み物。

 前にユウが作ってくれた、ぷりんに似た何か。

 みんな、とても、とても美味しそうである。

 しかし、ユウがもっとも興奮しているのは、大きな緑の葉にもられた、黄色い粒々の山で。

 粒々は細長い形をしている。茹でてあるのか、温かい。

 これこそが、ユウのいうところの「おこめ」と言うものらしい。

 みたところ、そんな特別な雰囲気のあるものではなくて。

 ジーナも、なにこれ、という期待外れな顔をしている。

 しかし、ユウは目を輝かせているのだった。


「どれどれ?」


 ジーナが、いきなり、そのお米なるものを匙ですくって、口に入れた。


「ん? んん? んんん?」


 かなり、微妙な顔だ。


「どうなの、ジーナ?」

「うーん、それはさあ…まずくはないけど、なんというか…しょうじき、そんな特別な味はしないというか…ユウさん、ごめん!」


 ジーナは、ユウにあやまった。


「あやまらなくてもいいんだよ」


 ユウは、にこにこしている。


「これは、そういうものなんだから。これだけを食べるんじゃなくて、こんなふうにね」


 ユウは、そういって、右手で直接、お米をつまみとると、かれえにちょっとつけて、そして口に運んだ。

 もくもぐやっていたが


「ああ…やっぱり、お米はすばらしい…」


 それを見たジーナが


「よし、わたしも!」


 お米を手掴みにすると、カレーにつけるが、うまく口にできず、ぼろぼろとこぼれてしまう。

 それでもなんとか、口に運んで


「あ! なるほど! 確かにこうやると…このつぶつぶが口の中で、かれえとからまって…そしてほどけていき…まったりとして、それでいて…」

()()()()()()()()()()?」


 と、またユウがわけのわからないことを言いだす。

 わたしも、ユウのまねをして、食べてみた。


「うん、こうやって食べると、いくらでも食べられそうだね」

「そうだね、ぼくの国でも、これだけで食べるんじゃなくて、おかずと一緒にたべるんだよ」


 どんどん口に運びながら、ユウが説明してくれる。


「ぼくらの国のお米は、すこしこれとは種類がちがって、もっともちっとしているんだけどね」

「あっ、こっちのパンみたいなのも、美味しいねえ! 蜂蜜が甘いよ!」


 ジーナが声をあげた。ジーナはやはり、甘いのが好きなようだ。

 こうして、わたしたちはシンドゥーの国の夕食を堪能したのだった。



 そして、お休みする時間となって。


「ぼくは、こっちの長椅子で寝るからね」

「だめです! そんなことはさせられません、ライラもそう思うでしょ」

「まあ、ユウさんだけそんなところで寝てもらうわけには…」

「だから、三人で、このベッドで寝るのです!」


 異常にはりきって、場を仕切るジーナ。


「うーん…いいのかなあ」

「いいのです。あっ、ユウさん、なんでそんな隅っこにいくんですか?」

「えっ、それはそうなるでしょ」

「なにいってるんですか、ユウさんは、真ん中です!」

「まんなか? それはちょっと…」

「だめです! 真ん中でないと不公平です!」

「いや、不公平ってなにが?」

「ライラ、これはあんたも賛成するでしょ、ユウさんは真ん中!」

「…まあ、それはそうなんだけど…」

「いやいや」

「はい、ここ。さあ、ユウさん、どうぞ!」

「うーん…いいのかな」

「ジーナ、なんであんた服脱ぐの?」

「そうだよ、ちょっとまってジーナ」

「えっ、ふつう、寝るときは、脱ぐでしょ。あたしはいつもそうだよ」

「いや、やっぱり、それはまずいんじゃあ」

「そうかな、えーっ? そうかなあ?」

「まずいって」

「服着たままなんて、あたし、寝れるかなあ?」

「ねてもらわないと困るよ…」


 というような会話が交わされて、さて、わたしたちがけっきょくどんなふうに、シンドゥーの国の夜をすごしたのか、それは、ヴリトラ神さまだけがご存知なのです。


いつも読んでくださりありがとうございます。 シンドゥーの国の夜は更けていきます。


面白いぞ、続きを読みたいぞ、そう思われた方は応援をお願いします。ポチッとね。


ヴリトラ神さま:その夜、なにがあったかは、わたしだけが知っている…。ウフフ、教えてあげないよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ