友達に
「海の祠では、時は動かない。だから、君が彼らから去った直後だ。」
セリーヌは微笑む。
「さようなら、エラ。また会おうね。」
セリーヌはそう言ってから、私をロイ達のいる丘へ転移させた。
もう、セリーヌはいない。
ロイたちは、驚いた表情で、こちらを見る。
「え、ら?」
そう、口を開いたのは、レイラだった。
「ごめんなさいっ!心配かけて。それに、酷いことを言ってしまって。本当に、ごめんなさい。」
頭を下げる。
すると、ふわりと暖かい体温を感じた。
私が頭をあげると、ロイが私を抱き締めていた。
「エラ。良かった。戻ってきてくれて。」
肩が湿っていくのを感じる。きっと、とてもとても、心配をかけた。申し訳なさが募る。
「ごめんなさい。心配かけて。」
ロイを抱きしめ返す。ここに命があるロイを、抱き締められることが、今とても、嬉しい。
「エラ。ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。」
声のした方を向けば、レイラが泣いていた。
私はレイラの方に駆け寄る。
「どうしたの?レイラ。謝るのは私の方なのに。」
「私は、エラのことを考えずに、ただ自分のために貴方の人格を否定した。よく、知りもしないうちに。元がゲームだから。貴方はヒロインで、私は悪役令嬢だから。そうやって、許されると勘違いしてしまったの。」
レイラの謝罪に驚いた。そうか、私はそうやって生きてきたんだ。自分の人格を否定されて。でも、それを甘んじて受けてきたのは、私だ。
嗚呼、そうか。私は楽をしたかったんだ。
「レイラ、いいの。それを拒否しなかったのは、私。それにね、私気がついたの。人が望む通りの人でいるのは楽だったことに。そうすれば、私自身が否定されることは無い。誰かの望んだ私が否定されるだけ。きっと、傷つくのが怖かったから。」
『人が望む私』
そう言う名の殻に閉じこもって。1番安全なところにいた。
「でも、それももう辞めるわ。」
怖い。殻の中は安全で、傷つくことはほとんどなかった。
「それでも、私の友達でいてくれる?」
レイラを見つめる。
レイラは硬直して動かない。
やっぱり、駄目かな……
「良いにっ、決まってるじゃない。」
レイラは涙を流しながら私に抱きついた。
「宜しくね、エラ。」
「こちらこそ、レイラ。」
一先ず、本編を終了とさせて頂こうと思います。もしかしたら、続きを書くかもしれませんし、書かないかもしれません。それは、続きを待ってくださる方がいらっしゃるかどうかで決まると思います。
エラの恋の行方、レイラはどうなるのか。もし続きを書くとしたら、それらのことを書くつもりです。
拙さしかない文章でしたが、読んでくださった皆様には、感謝の気持ちしかありません。
ブックマークをして下さった方。評価して下さった方。感想を書いて下さった方。作者の心の支えとなりました。辛かった時、忙しかった時、それでも書こう、という気力を出させてくれました。本当に本当に、有難う御座いました。
最初は私も、エラたちのことを何も知りませんでした。でも、小説を書いていくうちに、「この子なら、こう言うんだろうな。」と思い、シーンを削ったり、作ったりするようになり、最後には考えるまでもなく、勝手に動いていくようになりました。とてもとても、不思議な気持ちでした。
エラは、自分を否定されることを恐れています。だから、殻の中に閉じこもることで自分を守るのです。でも、『私自身を愛して欲しい』そう思う気持ちも消えることは無い。いつまでも、恐怖と哀しみの繰り返し。
そんな悪循環を、打ち破りたい。怖いけれど、愛されるようになりたい。そう思い、行動し始めたエラを私は誇りに思います。
レイラは愛されない自分に慣れています。それでも、愛されることを諦めきれない気持ちが未練がましく残って、彼女を複雑にしていきます。諦めることもひとつの道ですし、諦めないで様々な方法を試すことも、またひとつの道です。この世界には『選ばない』という選択肢もある。大変な世界ですね。
人は強欲で、決して完璧になれない。いつまでも、ないものねだりをするばかりです。でも、だからこそ、藻掻いて藻掻いて、自分のなりたい自分になれるよう、探して考えて行動して。その繰り返しなのだと思います。
この初めての小説は、先にも書いた通り、拙さしかなくて、非常に恥ずかしいです。書いていくうちに様々な課題が見つかりました。でも、それでも、読んでくださった皆様がいる。それが、とても嬉しい。だから、私もまだ藻掻いてみようかな、と思います。
この小説を書いている間、様々なことがありました。でも、ここまで書いてこれたのは、読者の皆様のお陰です。
本当に本当に本当に本当に。
有難う御座いました!!!!!!




