第43話 気にしない、よ
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あまり考えてても仕方ない、か。
考えてたってレベルが上がる訳じゃないしなぁ。
とりあえず今は、受けた依頼をこなすとするか。
「さてと、じゃあ行こっか?」
ルウは首を縦に振ると、俺の後に続いて冒険者組合から外に出た。
俺達は、その足で依頼先の用水路を管理している事務所に向かった。
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「おぉー、助かるよぉ。にぃちゃんみたいな若いのが来てくれてうれしいねぇ」
管理事務所の前に居たおじさんに依頼の話しをすると、すぐに事務所の中に通されテーブルについた。
「最近の若い奴は、夢ばっか見て汚れ仕事に見向きもしないが、にぃちゃんはなかなかは見所がありそうだ」
「いや、まぁ……、そんな事はないですよ」
「謙遜すんなって。それで、さっそくで悪いんだが仕事にかかってくれねぇか」
「わかりました。出来る限り頑張らせてもらいます」
「いい心意気だねぇ。んじゃ、チャチャっと行ってチャチャっと終わらせようか」
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事務所から、スコップを積んだ押し車を押して歩く事2分。
目的の場所に着いた。
くっっっさぁ!! 臭い! 臭い臭い臭いぃぃぃぃ!!
ちょっとまって、予想以上に臭いんだけど!
マジ鼻が曲がりそう!
侮ってたわ……、まさかここまで酷いとは思わなかった……。
しかも、クリスティーナさんの雑貨屋から結構近い。
これ、このままほっといたら家にまで臭い届きそうだ。
ここに着く少し前から、ちょっと臭くなってきたとは感じてたけど、現場に着いたらちょっとどころじゃねぇよ。
しかも、用水路って日本に居た時の感覚で、路の横にある排水溝みたいな小さいのをイメージしてたけど……。
これ、川だし! ちょっと小さめの川だし!!
それが詰まって、まったく水が流れてない状態になってるんだよ!
誰だよ! 川がこんなになるまで盛大に致した奴は!!
これ、掃除しなきゃダメなのか?
もう、ちょっと勘弁してもらいたい気分なんだけど……。
しかしなぁ、やるって言っちゃったしなぁ。
それに、このままにして家にまで臭い届くのも嫌だしなぁ……。
あぁ、もう。やれば良いんだろ! やれば!!
俺は、ひん曲がりそうな鼻で息をしないようにしながら作業へと取り掛かるが、……うぇぇぇ、口で息したって臭いものは臭い! こんな臭いの中で作業するとか、地獄だ!!
しかし、やらないといけないものは仕方ない。
作業内容としては簡単な話しだ。
スコップで川の中の異物を取り除き、押し車に積んで、それを用意された浄化槽まで運ぶだけだ。
浄化槽とは、浄化の魔法が込められた魔道具で、水を綺麗にしたり、土を綺麗にしたり出来る道具らしい。
各家にも設置されていて、飲み水やトイレなど浄化が必要な場所に使われる一般的な物だ。
元は、魔術師の使う水系統の『水浄』という魔法を応用した物となっているらしい。
俺には、魔法はあまり理解出来ないが、一般人でも生活に役立てるために習得していたりする、とても簡単な魔法らしい。
要は、その浄化槽で不純物を浄化し臭いを消して、用水路を綺麗にすれば任務完了って事だ。
いや、でも、流石に口で息してたって臭いものは臭い。
それに、あまりに臭いがキツすぎて頭痛や吐き気もしてきている。
服にだって色々と付いて欲しくない物体Xが付着したりしてゲンナリする。
俺……、この服しか持ってないのに臭い取れるかなぁ……。
俺は、黙々とスコップで不純物を取り除き、押し車へ積み込んでいく。
おじさんは、押し車を浄化槽まで運ぶ担当だ。
実質、用水路の中の掃除は俺一人でやっている。
ルウも一緒には来ているが、流石に手伝わせる訳にはいかないので、俺の位置から見える少し離れた場所に座らせて待ってもらっている。
けど、少し離れたからって、この臭いを我慢しないといけないし、ルウには悪いなぁって思う。
ここからならクリスティーナさんの雑貨屋も近いし、一度ルウには帰るように言ってはみたものの、頑として帰るのを拒否するし、あまつさえ手伝おうとするものだから、何とか説得して、離れた場所で待つ事を了承させて、今の現状になっていた。
まぁ、ルウが俺から離れたがらないから、仕方ないか……。
「おう、にぃちゃん。そろそろ昼飯にしようや」
戻って来たおじさんが声をかけてくる。
もう、そんな時間か……。
「そうですね。一旦あがります」
一旦作業を切り上げて、用水路から少し離れてみたものの……。くさい……。
ダメだ、完全に臭いが身体に染み付いてる……。
これじゃ、何処にもいけないぞ。
それに、昼飯って言われても、臭いにやられて吐き気が酷いから食欲も湧かないし、こんな身体じゃルウにだって近づけないよ。
とりあえず休憩だけしよう……。
頭もガンガンするし、新鮮な空気が吸いたい……。
そう思って用水路から少し離れた路の端に座り込み、空を見上げた。
空は〜こんなに青いのに〜、どうして〜、こん〜なに臭いのぉ〜。(by睡眠不足)
「ハルト、……お疲れ様」
「!?」
気を紛らわそうと、心の中で歌を歌いながら空を見上げていたら、突然目の前にルウの顔が現れて驚いた。
「ル、ルウ!? ごめん、今俺臭いから。あんまり近づいたら気分悪くなるよ」
「……だいじょぶ」
「いや、でも、俺、かなり臭いし……」
「気にしない、よ」
いや! 俺が気にするよ!!
ルウが俺の隣に座って来たけど、俺は自分の臭いが気になって、ルウから少し距離を取る。
ルウが少しだけ、不満そうな顔をする。
やっぱ、可愛いーなぁ。でへへ……。
おっと、いかんいかん。思わずヨダレ垂らすとこだった。
しかし、こんな臭いをさせた状態で、ルウの傍にいるのは凄く嫌だった。
自分でも嫌で嫌で我慢出来ないような臭いを発してて、出来るなら今直ぐにでもお風呂に入りたいのが本音だ。
ルウは、気にしないって近くに座ってるけど。
俺からすれば何て拷問だ! っ思う。
好きな女の子に、すっごい臭い身体で近くに居なくてはいけないなんて、どんな拷問よりもキツイわ! 精神的に!
というか、もう休憩とか良いからさっさっとやって終わらせて帰りたいわ……。
はやく風呂はいりてぇぇー。




