第44話 無理じゃないかしら
ブクマ感謝ですー。
これからもよろしくお願いします。
今日は、クリスティーナさんからお弁当を渡されていたので、ルウは俺と一緒に昼食を摂ろうと思って近くに来たみたいだ。
でもなぁ、俺のこの臭い……。どうにかならないかなぁ。
こんな臭いの中で昼食とか、最悪だ!
それに、臭いの所為で食欲も無いし、クリスティーナさんには悪いけど食べれる状態じゃない。
とりあえず、ルウだけ昼食摂ってもらって、俺は昼飯抜きかなぁ。
クリスティーナさんには、後で事情を説明して謝っておこう。
「ルウ、……悪いん、だけどさ。俺、あんまり食欲無くて、お昼食べれそうにないんだ。だから、ルウだけお昼食べてもらっても良いかな?」
本当に悪いなぁって思うけど、良い感じの言い訳が見つからないまま言葉にしたら、少しだけ言い澱んでしまった。
「……ハルトが、食べないなら、いい」
ルウが少し落ち込んだ感じの返事をしたが、その様子が胸にチクリと突き刺さる。
「いいって……、食べないって事?」
「うん」
「いや、俺の事なら気にしなくて良いから、ルウは食べなよ。お腹空いてるでしょ?」
「ハルトが、食べないなら、食べない……」
これは、困ったぞ……。
ルウのこの様子だと、俺がどんなに説得しても、一人では昼食を摂らないだろう……。
ルウに食べさせようと思ったら、……やっぱり、俺も食べないといけないのか?
しかし、しかしなぁ。
俺の、今のこの状態で食べたら、かなり高い確率で吐いてしまうだろう……。
けど、そんな姿を見せたら、またルウに心配をかけてしまう。
食べるなら、絶対に吐くのはご法度だ。
耐えれるのか? 俺に?
いや、耐えるしか道は無い! ここが漢の見せ所だ!!
「……わかった。ルウ、一緒に食べよう!」
「……だいじょぶ? 無理、しなくても……、いい、よ?」
うッ。……逆に気を遣われてしまった。
しかし! 今更後には引けない!
「大丈夫だって、無理なんかしてないから」
ルウは逡巡した後、ゆっくりと昼食を広げていく。
クリスティーナさんが用意してくれた昼食はサンドウィッチのようだった。
サンドウィッチか……、これくらいなら何とか食べれそうだ。
クリスティーナさんに感謝だな。
「じゃあ、食べようか。いただきまーす」
「……いただきます」
と、手を合わせて言ってみた所で、自分の手も汚れている事に気付いた。
って、しまった……。こんな手じゃ食べれないぞ。
ちょっと汚れてるとかなら、まだ我慢して何とか食べれるかもしれないが……。
流石にこんな手で食べ物を触りたくないわ。
下手すると変な病気とかになる可能性もあるし……、あぁ、どうしよう……。
俺が手を見つめて固まっていると、ルウがサンドウィッチを一つ取り、俺の顔の前に差し出してくる。
くッ、何て試練だ! 天使みたいな顔してサンドウィッチを差し出してくるなんて……、何て拷問だ!
これ、やっぱ食べないとダメか? この汚れた手で食べて、俺、死んだりしないよな? な?
あぁ、ルウの無言の圧力がツライ!
くっそぉぉぉ、食べれば良いんだろ! 食べれば!!
俺は覚悟を決めて、ルウの差し出しているサンドウィッチを受け取ろうとし……。
スカッ……、あれ? 宙を掴む。
気を取り直して、もう一度。スカッ……。
…………アレッ?
俺がサンドウィッチを受け取ろうと手を伸ばすと、ルウが取られないように避けていた。
あれ? えっと、何で避けるの?
俺は疑問に思ってルウの顔を見つめていると、ルウが小さな口を少し開いて俺を見つめ返す。
ルウの唇って、何か凄く柔らかそうでプルプルしてるよな……。
じゃなくって! えっと、何か言いたいのかな?
ん? あぁ、俺に口を開けろって意味か。
ホント分かりにくいなぁ。
これで良いのかな?
あー、んぐッ!?
何にも考えずに口を開けたら、サンドウィッチが俺の口に押し込まれた!
突然の事に驚いたが、このサンドウィッチ美味いぞ!
じゃない! これって! ルウに食べさせられた?
もしかしてルウが食べさせてくれるって事か!
そう理解したら何か凄く恥ずかしくなってきて、今更ながらに顔が熱くなってくる。
「……おいしい?」
ルウの問いかけに、俺は恥ずかしさを誤魔化そうと首を激しく縦に降る。
いや、まって、ちょっと待って。
これ、嬉しいけど、恥ずかしい!
あぁ、もう、顔中熱くなってるから絶対顔真っ赤だろうに、汚れた手じゃ顔も隠せないから逃げ出したい気分だよ!
なのに、ルウがまたサンドウィッチ差し出してきてるしィィィー。
俺は心の中で悶え葛藤しながら、黙々と作業のようにサンドウィッチを食べさせてもらった。
その間、耳まで真っ赤にして女の子に食べさせてもらっている事実と、道行く人の視線に耐えながら昼食を終える。
あぁ、幸せだけど、恥ずかしくて死にたい!
むっちゃ見られてたし! 何て羞恥プレイだよ!
もう、恥ずかしくて外を歩けないよ!!
穴があったら入りたい気分ってこんな気持ちなんだなぁ……。
でも、ちょっとだけ恋人っぽい事が出来たのは、嬉しい、かな?
いや、ホント、ちょっとだけだよ。ちょっとだけ。
二ヘラっと頬が緩むが、慌てて引き締める。
また、2人きりの時になら、食べさせてもらいたいかもと、俺は心の中で少し願った。
その後は、ポワポワした気分のまま作業に戻り、気が付いたらいつのまにか終わっていた……。
あれ? 俺ちゃんと作業してた??
とは言っても、終わったのは今日の作業だけで、まだ数日かかりそうだから、俺さえ良ければ継続して来て欲しいといった感じではあった。
一応報酬は日当として出してくれるらしい。
まぁ、俺としては選り好み出来る立場でもないので、明日以降も継続する方針だ。
とりあえず、今日の依頼はこなしたので、俺とルウは並んで家路に着いた。
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「ただいまぁー、あー疲れたぁ」
「おかえ、うお! なんじゃこの臭い!」
いや、クリスティーナさん男みたいな口調になってますよ。
「ちょっと、ハルちゃん。何その臭い? 近寄らないでくれる!」
「ひ、ヒドイ……」
「ヒドイのはハルちゃんでしょ……。水浄は使えないの? それくらい基本でしょ、基本」
「いや、基本って言われても……。クリスティーナさんは使えるんですよね? 良かったらかけてもらえますか?」
「何言ってるの? 私に魔法なんか使える訳ないじゃない」
は? ……いや基本なんじゃ?
いったいどこから突っ込めば……。
魔法使えないエルフって……、オカシイよね?
いや、まぁ、クリスティーナさんは存在そのものがオカシイとは思うけど……。
「ハルちゃん、何か失礼な事考えてない?」
「えッ? いや、何にも考えてないですよ、なんにもー」
「……まぁいいわ。ルウちゃんなら使えるでしょ。ルウちゃん、ハルちゃんに水浄使ってみて」
「は? いや、いくらなんでもそんな簡単に……」
「……水浄」
ルウが呪文を唱えると、俺の全身が淡い青色の光を放つ。
服や身体に着いていたモノが乾燥し、パラパラと剥がれ落ちていき、染み付いた異臭も薄れ消えていく。
「ええぇぇぇェェーー! すっ、凄い凄い凄い!! 身体が一瞬で綺麗になった! なにコレ! まじスゲェー」
「あら、意外とあっさり使えたわねぇ」
ってオイ! とりあえずやらせてみただけかよ!
でも、こんな簡単に使えるなら俺でも出来るかも。
「俺も一回試してみたい!」
「……ハルちゃんには、無理じゃないかしら……」
なに、その対応の冷たさ……。
「くっそぉ。俺だって、水浄!」
……何も変化が起こらない。
「ほら、やっぱり」
むぐぐぐぐ、なんでだあぁー!
「ほらほら、いつまでもバカやってないで、夕飯にしましょ」
そう言ってクリスティーナさんは食堂に向かって歩き出し、ルウも後に続き、俺だけが残された。
くっそぉー、いつか、ぜったいぜったいぜーったい。魔法使える様になってやるからなぁ!!




